家庭用血糖測定 穿刺式とCGMの違い・使い分け・選び方

家庭用血糖測定 穿刺式とCGMの違い・使い分け・選び方

家庭用の血糖測定 ― 穿刺式(SMBG)とCGM、正直どちらがいいのか

正直に申し上げると、血糖を家で測る話は「どちらか一方を選ぶ」ものだと、私も長いあいだ思っていました。

針で指を刺すか、腕にセンサーを貼るか。二択だと。

でも、調べていくうちに考えが変わったのです。結論から言えば、家庭用の血糖測定は「穿刺式(SMBG)」と「CGM/FGM」のどちらかではなく、役割で使い分けるのが今の標準でした。この記事では、両者の仕組み・精度・費用の目安・保険適用までを、公的機関や糖尿病専門クリニックの情報をもとに、できるだけ正直に整理してみます。

はじめにお願いです(医療の話なので)
この記事は一般的な情報整理であって、診断や治療の指示ではありません。低血糖の判断・対処、インスリンなど薬の調整、機器の選択や測定回数は、必ず主治医の指導のもとで行ってください。とくに低血糖が疑わしいときは、CGM/FGMの数値をうのみにせず、必ず指先の穿刺(SMBG)で確認することが、各機関で共通して勧められています。

木目のテーブルに置かれた血糖測定器と穿刺器具(ランセット)のクローズアップ。指先穿刺で血糖を測る家庭用の測定キット

Photo: Towfiqu barbhuiya / Pexels


まず仕組みが違います ― 「血」を測るか「間質液」を測るか

同じ「血糖測定」という言葉でも、測っている場所が実は違うのです。ここが分からないと、後の精度の話がつながりません。

穿刺式(SMBG)― その瞬間の血を測る

SMBG(自己血糖測定、Self Monitoring of Blood Glucose)は、穿刺器具で指先などをランセット(針)で刺し、出た血液の一滴を測定器のセンサー(試験紙)に吸わせて測る方法です。

測れるのは、まさにその瞬間の血中グルコース値。1日数回の測定が主流です。

CGM/FGM ― 腕のセンサーで「動き」を見る

CGM(持続血糖モニタリング)/FGM(フラッシュグルコースモニタリング)は、腕(上腕後部など)に貼った小型センサーが、皮下の間質液中のグルコース濃度を連続的に推定・記録します。

針を刺さずに、スキャンや自動送信で数値と変動グラフを確認できるのが大きな特徴なのですが、ここで一つ覚えておきたいことがあります。測っているのは血液そのものではなく、間質液だという点です。

代表的な機種にも違いがあります。

  • FreeStyleリブレ(FGMタイプ):もともとはリーダーやスマホを「かざしてスキャン」して読む方式でした。リブレ2では約1分おきに自動でスマホへデータ送信され、かざす必要がなくなり、簡易的なアラート機能も付きました。装着は上腕後部のみ(腹部はNG)です。
  • Dexcom G7(リアルタイムCGM)5分ごとにリアルタイム測定し、スマホなどへ即時通知・アラートを出せます。アラートを最も細かく設定でき、装着は腹部・上腕後部が認められています。

なお「無穿刺」といっても、センサー装着時にはフィラメントの挿入を伴います。痛みは軽微ですが、完全な無侵襲ではない、というのが正確なところなのです。

穿刺式SMBGは指先の血液を、CGM/FGMは上腕センサーで間質液を測る——測る場所の違いを対比した解説図


では、精度はどうなのか ― MARDとISO 15197、そして「ラグ」

いちばん気になるのは、やはり「どっちが正確なのか」だと思います。ここは数字が出てくるので、一つずつ見ていきます。

穿刺式の基準 ― ISO 15197

市販の指先測定器は、国際基準 ISO 15197 を満たすことが求められます。ざっくり言うと、こういう精度です。

  • 血糖値 100 mg/dL 未満のとき ±15 mg/dL 以内
  • 血糖値 100 mg/dL 以上のとき ±15% 以内
  • 測定値の 95%以上がこの範囲に入ること

MARDという目安(※あくまで目安です)

MARD(平均絶対的相対差)は、数値が小さいほど正確とされる指標です。ある糖尿病専門クリニックの解説では、おおよそ次のような目安が示されています。

測定方式 MARDの目安
SMBG(指先・穿刺) おおよそ 5〜10%程度
CGM(連続) おおよそ 8〜10%程度(リブレ2 ≒ 9%、Dexcom G7 ≒ 8% と記載)

ただし、ここは正直に書いておきたいのですが、MARDは製品や試験条件によって報告値が変わります。上の数字はあくまで目安であって、厳密な機器間比較は最新の添付文書や査読研究で確認する必要があります。

「5〜10分の遅れ」というCGMの弱点

CGM/FGMは血液そのものではなく間質液のグルコースを測るため、血糖が急激に変化しているときは、反映までに5〜10分程度の遅れ(タイムラグ)が生じ得ます。

血中グルコースは間質液より一足早く動くので、急上昇・急降下の局面では、CGMの値が実際の血糖より遅れて見えるのです。

だからこそ、こう整理されています。

日常の連続モニタリングとトレンド観察はCGM/FGM、低血糖の確認や「症状と数値が食い違うとき」の検証はSMBG。

これが、現在推奨されている使い分けの形なのです。

食後の急上昇では、CGM値が実際の血糖より5〜10分遅れて追従する様子を示したイメージグラフ


ここは譲れません ― 低血糖は必ず穿刺で確認

精度の話の中でも、いちばん大事なところをもう一度だけ強調させてください。

低血糖を疑ったときは、従来の指先穿刺(SMBG)で確認する。

低血糖はすばやい対処が必要で、CGM/FGMのラグによって危険を見落とす可能性があるからです。

もう一つ、覚えておきたい場面があります。低血糖でブドウ糖を摂取しても、FreeStyleリブレでは(間質液ラグのため)すぐには数値が上がりません。回復したかどうかの判断を、CGMの値だけで行わないことが大切なのです。

一方で、穿刺式にも誤差の要因はあります。たとえば手洗いが不十分だと ― 果物を食べた後に手を洗わず測ると、果汁が混ざって異常な高値が出ることがあります。ほかにも、絞り出す圧が強すぎたり、末梢の血流が悪かったりすると値がぶれます。

裏を返せば、正しい手順を守れば非常に正確だということです。良い面だけでなく、こういう注意点も含めて知っておきたいところです。


使い方・装着期間・費用の目安・保険適用

実際に使うとなると、期間やお金の話も避けて通れません。ここは変動が大きい部分なので、「目安」として読んでいただければと思います。

センサーの装着期間(FreeStyleリブレ)

センサーは最長14日間連続で装着できます。スマホ(リブレ2)でスキャン、または自動でデータを記録し、常時血糖の変動を追えます。

保険適用 ― 近年広がっています

保険の対象は、改定のたびに更新されています。執筆時点(2024〜2025年時点)の主な流れは次のとおりです。

  • 2022年、「FreeStyleリブレ」の保険適用が、インスリン療法を行っているすべての糖尿病患者に拡大されました。1型糖尿病、およびインスリン製剤の自己注射を1日1回以上行っている2型糖尿病の方などが対象です。
  • 公的医療保険(SMBG/CGM関連の指導管理料)の対象は、インスリン製剤・GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1受容体作動薬などの注射薬を使用中の方、および妊娠中の糖尿病患者の一部とされています。
  • 2024年4月の診療報酬改定で拡充された「選定療養制度」により、インスリン注射をしていない糖尿病患者でも、医療機関でリブレを自費購入できるようになりました。

費用の目安(※要確認)

保険適用時(3割負担)で、センサー2枚(原則 月2個・28日分まで処方)で約8,500円ほどという記載があります。従来の指先測定(SMBG)のみと比べると、月々の自己負担は数千円程度アップし得ます。

ただし、この金額はあくまで一例です。負担割合・処方内容・診療報酬の改定で変わるので、実際の費用は必ず医療機関に確認してください。

FreeStyleリブレのセンサー装着サイクル(最長14日間)と、保険3割負担で月約8,500円という費用の目安をまとめた図解


誰が対象で、どう選べばいいのか

主な対象

血糖の変動管理がとくに重要な人 ― つまり1型糖尿病、インスリンなどの注射薬を使っている2型糖尿病、妊娠中の糖尿病の一部などが主な対象です。

CGM/FGMは、無自覚低血糖や夜間低血糖のリスクが高い人で、アラートの利点が大きくなります。一方でSMBGは、瞬間値の確認や低血糖の確認に欠かせません。どちらか一方ではなく、病状に応じて併用するのが実際の運用なのです。

タイプ別の選び方

迷ったときの目安を、簡単に並べておきます。

  • 正確なその瞬間の値・低血糖確認・費用を重視SMBG(穿刺)。ISO 15197基準の高精度で、瞬間値が確実です。
  • 針の痛みを避けたい・血糖の動き(トレンド)を連続で見たいFGM/CGM(FreeStyleリブレ等)。装着14日、無穿刺。ただし急変動時のラグには注意が要ります。
  • 夜間・無自覚低血糖のリスクが高く、アラートで即時に気づきたいリアルタイムCGM(Dexcom G7、リブレ2のアラート)の利点が大きいです。

専門医の比較では、リアルタイム測定の精度ではリブレ2、MARD(正確性)やApple Watch連携ではG7が優れる、という見方もあります。

そして、どのタイプを選んでも共通して言えるのが、CGM/FGMを使う人は、低血糖確認用にSMBGを手元に持っておくと安全だ、ということです。

補足:リブレ1・リブレProは2025年3月に販売終了し、リブレ2への移行が進みました。装着部位も機種で異なり(リブレは上腕後部のみ/G7は腹部・上腕後部)、取り違えないように注意してください。

SMBG(穿刺)・FGM(リブレ等)・リアルタイムCGMの3タイプを重視ポイント別に振り分けた選び方チャート


穿刺の正しい手順 ― せっかくなので、ここも丁寧に

CGMが広がっても、穿刺は「確認の要」として残ります。正しく測れてこその精度なので、手順も置いておきます。

明るい白い背景で、穿刺ペンを指先に当てて血糖を測る手元。手洗い後に指先穿刺する家庭用血糖測定の一場面

Photo: Artem Podrez / Pexels

  1. 準備:穿刺器具、血糖測定器、センサー(試験紙)、穿刺針、針捨てボックス、自己管理ノートを揃えます。
  2. 手洗い(重要):石けんでよく手を洗い、しっかり乾かします。果汁など糖分が指に残ると異常な高値になります。アルコール消毒をした場合は、乾いてから測ります。
  3. 穿刺の深さ調整:皮膚の硬さで調整します。皮が柔らかい人は目盛り1〜2、普通で3〜4、硬い人は5〜6が目安です。
  4. 穿刺:指先を机などにしっかり固定し、穿刺ペンを押し当てて穿刺、2〜3秒後に離します。指の付け根から穿刺部位へ向けてゆっくり揉むように血液を出します(強く絞りすぎない ― 組織液が混ざって誤差の原因になります)。
  5. 測定:出た血液の一滴にセンサー先端を接触させると吸引され、「ピッ」で成功。数秒で血糖値が表示されます。
  6. 記録:数値だけでなく、測定タイミング・食事・運動・薬・症状の有無も記録すると管理に役立ちます。
  7. 廃棄:使用済みのセンサー(試験紙)は一般ごみ(可燃)でよいのですが、使用済みの穿刺針は医療廃棄物です。専用の針箱に入れ、かかりつけの医療機関に廃棄を依頼します。

最後に、ひとつだけ付け加えさせてください。

穿刺式とCGM/FGMは、どちらが上でどちらが下、という関係ではありませんでした。動きを見るのはセンサー、いざという時の確かめは穿刺 ― この二つが手を組んで、はじめて日々の血糖管理が成り立つのだと思います。

そして、測定回数もタイミングも機器の選び方も、画一的な正解はありません。最終的にどう組み合わせるかは、あなたの病状を一番よく知っている主治医と相談して決めるのがいちばんです。

数字は、あくまで判断を助ける道具にすぎませんから。


参考にした情報源

本記事は、以下の公的機関・専門クリニック等の情報をもとに整理しました(2024〜2026年の資料を優先)。数値・費用・保険適用は改定で変わり得るため、最新の情報は主治医・医療機関でご確認ください。

  • 糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター系/公的)― 血糖自己測定について
  • アボット公式 ― FreeStyleリブレ 製品情報/保険適用(費用とカバレッジ)
  • Abbott Japan プレスリリース(2022年 保険適用拡大)
  • Dexcom 公式 ― SMBG値とCGM値の違い
  • 中央林間駅前いしだ内科、むさしこやま駅前内科・糖尿病クリニック、船橋しもやま内科、加木屋たけうち内科、大阪糖尿病専門医、屋島おおはら内科(各 糖尿病専門クリニック)
  • テルモ糖尿病ケアサイト、糖尿病リソースガイド

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