ショート動画がやめられない|午前3時をつくる設計と減らす工夫

ショート動画がやめられない|午前3時をつくる設計と減らす工夫

正直に申し上げますと、私はこの記事を書くまで、深夜にショート動画を止められない自分のことを「脳が快楽ホルモンに中毒になっている」と説明する文章を、疑わずに読んでいました。

気づいたら午前3時。指だけが動いていて、何が面白かったのかも思い出せない。あの時間の感触には、たしかに説明が必要です。

ただ、一次資料を順番に当たっていくと、崩れたのは私のほうではなく、その説明のほうでした。「快楽ホルモン」も「中毒」も、一次文献や公的な診断分類の記述とは一致しないんですね。

結論から申し上げます。夜に止まらなくなることは、意志の弱さの証明でも、依存症の診断でもありません。厚生労働省の公式ガイドが「就寝時刻の先延ばし」と呼ぶ行動であり、その一部は、見ている側ではなくサービス側の設計で説明がつきます。そして設計のほうは、実験で変えられることが分かっています。

この記事では、煽りの言葉をひとつずつ一次出典と突き合わせながら、実際に対照実験で効いたことだけを並べていきます。


まず言葉から——正式な診断名は「ゲーム行動症」だけです

いちばん最初に、言葉の整理をさせてください。ここが曖昧なままだと、あとの話がすべて歪んでしまうからです。

WHOの国際疾病分類ICD-11に収載されている行動の依存症は、6C51 ゲーム行動症(Gaming disorder)です。WHO公式Q&A(最終更新 2020年10月22日)の記述では、ゲームに対する制御の障害、他の関心や日常活動よりもゲームの優先順位が高まること、そして否定的な結果が生じても継続・拡大することが特徴とされています。

さらに要件が続きます。個人・家族・社会・教育・職業その他の重要な機能領域に著しい障害をもたらすほどの重症度であり、通常は少なくとも12か月は明らかであった必要がある。WHOは有病率についても「ゲームに関与する人々のごく一部にしか影響しない」と述べています。

では、米国精神医学会のDSM-5-TRはどうか。インターネットゲーム障害(IGD)は正式な診断ではなく、「さらなる研究を推奨する病態」のセクションに収載されています。そしてAPAの公式ページには、決定的な一文があります。

この提案された病態はゲームに限定され、インターネットの一般的使用、オンライン賭博、ソーシャルメディアやスマートフォンの使用の問題は含まない。

日本の公的調査も同じ立場です。厚生労働省の補助事業として久里浜医療センターが実施した全国調査の報告書は、脚注でこう断っています。「ゲーム依存」「ネット依存」「SNS依存」という用語は正式な診断名として認められていないものの、一般用語として広く普及しているため、対象者が理解しやすいよう調査名や説明では使用している——と。

つまり、「スマホ依存」も「ショート動画の中毒」も、俗称なんです。

これは揚げ足取りの話ではありません。自分に病名を貼ってしまうと、自責が強まり、かえって受診が遅れることがあります。言葉を正確にしておくことは、それ自体が安全策なんですね。

「スマホ依存」「ショート動画の中毒」「ネット依存」という日常の言い方と、公的分類での扱いを左右2列で並べた図解。右列はICD-11に収載された行動の依存症が6C51ゲーム行動症のみで通常12か月以上の持続が要件であること、DSM-5-TRのインターネットゲーム障害が正式な診断ではなくソーシャルメディアやスマートフォンの使用の問題を含まないことを示し、下部に「これは診断を判定するための図ではありません。診断は医療機関が行います」と注記


「次に何が出るか分からない」が効く、その根拠はどこまでか

では、あの止まらなさはまったくの気のせいかというと、そうでもありません。ここは正直に、根拠の強さごとに分けてお話しします。

まず、よく見かける「ドーパミン=快楽ホルモン」という説明ですが、これは一次文献の記述と一致していません。Berridge と Robinson の論文(American Psychologist 2017)は、「欲しがる(wanting)」を媒介する脳回路と「好む(liking)」を媒介する回路は分離可能であり、liking はドーパミンに依存しないと述べています。Berridge(Psychopharmacology 2007)はさらに踏み込んで、ドーパミンは快楽的なlikingの変化を媒介するのに「必要でも十分でもない」と書いています。

ドーパミンが担っているとされるのは、誘因顕著性としての “wanting” と、報酬予測誤差です。Schultz(2016)によれば、中脳のドーパミンニューロンの大半は、予測より多い報酬で活性化し、完全に予測された報酬ではベースライン活動に留まり、予測より少ない報酬では活動が低下する。つまり「ずっと出っぱなし」ではなく、予測とのズレに応じた反応なんです。

そのうえで、「次に何が出るか分からない」という構造には、たしかに一次的な裏づけがあります。Fiorillo・Tobler・Schultz の研究(Science 2003)は、サルのドーパミンニューロンを単一細胞記録し、不確実性は確率Pによって決まり、P=0.5で最大になること、そして報酬が生じうる時点まで活動が漸増する応答があることを示しました。

ただし、ここに太い線を引かせてください。

これはサルの単一ニューロン記録です。ヒトのショート動画フィードで強化スケジュールを操作した実験は、今回の調査では確認できませんでした。ですから「ショート動画はスロットマシンと同じ変動比率強化であることが証明されている」とは書けません。書けるのは、「不確実な報酬が報酬系の反応を高めることは動物実験で確かめられており、ショート動画の“次に何が来るか分からない”構造はこれと同じ性質を持つと説明されている」までです。

ドーパミンそのものの役割については、朝は元気なのに夕方は憂うつ?気分の浮き沈みとドーパミン・デトックスで基礎から整理していますので、そちらに譲ります。


ドーパミン受容体の話は、どこまで確かめられているのか

次に出てくるのが、「刺激に浸りすぎると受容体が鈍って、日常の地味な喜びを感じられなくなる」という説明です。これも出所をたどると、かなり景色が変わります。

この説明の元になっているのは、薬物依存の画像研究です。Volkow らのレビュー(Arch Neurol 2007)は、長期の薬物使用がドーパミン機能の低下と関連するようであり、依存者の線条体におけるD2受容体およびドーパミン放出の減少として示される、と要約しています。

問題は、それが行動の依存症でも同じかどうかです。

行動嗜癖の代表である病的賭博を調べたBoileauらのPET研究(Addiction 2014)では、DSM-IVの病的賭博の男性13名と対照12名(うち11名がPETを完遂)を比較して、線条体・黒質のいずれにおいても両群で結合に差はありませんでした(すべて P>0.1)。著者は「低い受容体利用能が嗜癖の必須の特徴ではない可能性」を示唆する、と結論しています。

もうひとつ。コカイン依存者を対象にしたVolkowら(Synapse 2010)の研究は7名(健常対照なし)で、著者自身が「より大きなサンプルでの再現と健常対照での検証が必要な予備的結果」と明記しています。

そして最後に、いちばん大事な一行です。

ショート動画やSNSの利用者を対象にした同種の受容体画像研究は、今回の調査では確認できませんでした。

ですから、この記事で言えるのはここまでです。薬物依存で報告された受容体の低下という所見は、行動の依存症では一貫して再現されていない。ショート動画については、そもそも同じ検査をした研究が見当たらない。「見すぎると受容体が壊れる」という言い方は、根拠を先回りしています。


夜更かしの正体は「就寝時刻の先延ばし」という行動です

では、午前3時の自分に貼るべき言葉は何なのか。厚生労働省の『健康づくりのための睡眠ガイド2023』(令和6年9月18日一部修正)が、正面から名前をつけています。

特段の理由がないにもかかわらず、本来の就寝時刻をこえて夜ふかしをしている状態を、就寝時刻の先延ばしと呼びます。就寝時刻の先延ばし行動としては、テレビを延々と見続けてしまったり、ゲームが止められなかったり、あるいはSNSで交流したり等、本来の就寝時刻を過ぎても、様々な余暇活動を行うことが多いようです。

同ガイドは帰結も具体的に書いています。睡眠時間が短くなることで翌日の眠気や疲労感が強くなるだけでなく、寝つきの悪さを生じ、翌朝の登校時刻に目覚められなくなる概日リズム睡眠・覚醒障害を生じる素地となる。だから「できるだけ避けるべきです」と。予防策としては、睡眠スケジュールの目標を決めて日々モニタリングする工夫や、家庭での電子機器使用に関するルールづくりが有効な場合がある、とされています。

ここで、同じコラムの但し書きを必ず一緒にお伝えしなければなりません。

他方で、就寝時刻の先延ばしをやめることは余暇時間の減少をもたらす場合があります。適切な余暇活動が減ることは、ストレスの増加や抑うつにつながる可能性があるため、注意が必要です。

つまり、公式ガイド自身が「夜の楽しみをゼロにする」ことの副作用に注意を促しているんです。同ガイドは、就寝時刻付近の余暇時間を日中に十分補えるよう工夫するとよい、と続けます。

睡眠時間の目安も確認しておきます。同ガイドの推奨事項は、成人が「6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する」、こどもは「小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に」。日本の現状はというと、令和元年の国民健康・栄養調査で1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は男性37.5%・女性40.6%、令和3年のOECD調査では日本人の平均睡眠時間は調査対象33カ国中で最短でした。

学術面の現在地も、正直に書いておきます。就寝時刻の先延ばしを扱った43研究のメタ分析(Sleep Medicine Reviews 2022、GRADE評価は low)では、睡眠時間と z=−0.31、睡眠の質と z=−0.35、日中の疲労と z=0.32、自己制御と z=−0.39、夜型クロノタイプと z=0.43 という中程度の相関が報告されています。ただし著者は「先延ばしと睡眠との因果関係を同定するには、さらに質の高い研究が必要である」と明記しています。

強い相関はある。けれど「夜更かしが睡眠を削っている」と断定できるところまでは、まだ来ていない。そういう段階です。

なお、寝室の環境づくりや寝る前のブルーライト、CBT-I(不眠の認知行動療法)については、横になると考えが押し寄せて眠れない|不眠と睡眠衛生・脳のスイッチの切り方で詳しく扱っていますので、この記事では繰り返しません。

大きな窓から日差しが入る明るい店内の窓際席。観葉植物のそばに布張りの椅子が置かれ、人は写っていない

Photo: Pramod Tiwari / Pexels


日本では、どれくらい見られているのか(分母つきで)

「みんなもやっている」で片づける前に、実際の数字を分母ごと置いておきます。

総務省情報通信政策研究所「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(13歳〜79歳の男女1,800人、訪問留置、調査対象期間は令和7年12月1日〜7日、公表は令和8年6月26日。平日はN=3,600人日、休日はN=1,800人日)では、インターネット利用項目のうち「動画投稿・共有サービスを見る」が平日・休日とも最長でした。

「動画投稿・共有サービスを見る」平均利用時間 全年代 10代 20代
平日 54.5分 127.2分 107.1分
休日 73.1分 166.1分 151.0分

こども家庭庁「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」(満10歳〜満17歳、有効回収3,060人=61.2%、調査期間は令和7年11月1日〜12月18日)では、インターネット利用者の平日1日あたり平均利用時間が326.6分(約5時間27分、n=3,030)。前年度302.3分、前々年度296.9分からの増加です。内訳では「5時間以上」が47.6%、「3時間以上」が76.0%を占めました。

そして厚生労働省補助事業/久里浜医療センターの全国調査(2024年実施、10〜80歳から層化二段階抽出で9,000名、有効回答4,650票=51.7%)。年齢調整後のスクリーニングで「疑い」とされた割合は、インターネットの病的使用(DQ 5点以上)が全体6.2%、10〜29歳では14.5%。SNSの病的使用(SMDS 5点以上)が全体1.7%でした。

ここで、いちばん注意していただきたい点があります。同じ「ゲーム行動症疑い」でも、使う尺度によって値が大きく変わります。同一の調査内で、GAMES-Testでは3.8%(10〜29歳では10.3%)、IGDT-10では0.7%(10〜29歳では2.4%)。5倍以上の開きです。

ですから「日本人の◯%が依存」という一行は、どの尺度の数字かを言わないかぎり成立しないんですね。数字は、分母と尺度とセットでしか意味を持ちません。

日本の平均利用時間を横棒グラフで示した図解。上段は総務省 令和7年度調査(13〜79歳の男女1,800人、平日N=3,600人日・休日N=1,800人日)の「動画投稿・共有サービスを見る」平均利用時間で、平日 全年代54.5分・10代127.2分、休日 全年代73.1分・10代166.1分。下段はこども家庭庁 令和7年度調査(満10〜17歳、有効回収3,060人)の青少年の平日1日あたり平均326.6分。横軸は上下共通で最大350分、下部に「測っているものも対象年齢も違うため直接くらべられない」と注記


自動再生をオフにすると、視聴時間は減りました

ここからが、この記事のいちばん実用的な部分です。「意志を強くする」ではなく、「設計を変える」とどうなるかを調べた実験があります。

Schaffnerらの研究(Proc. ACM Hum.-Comput. Interact. CSCW 2025、シカゴ大学)は、米国のNetflix利用者76名を対照群と処置群に割り付け、処置群の38名が10日以上にわたり自動再生をオフにしました。視聴履歴は参加者自身のデータ開示請求で取得し、研究前6か月をベースラインとして比較しています。

結果はこうでした。

  • 1日あたり平均視聴時間:−21.0分(p=0.003)
  • 平均セッション長:−17.6分(p=0.013)
  • セッション内の視聴間インターバル:+24.4秒(p=0.0009)
  • セッション間の間隔:有意差なし(p=0.697)

著者の解釈は、「ユーザーがコンテンツを再生する能動的な役割を高めることで、エピソード間により多くの時間がとられ、視聴総量が減り、セッションがより早く終わる」というものです。次の一本が勝手に始まらない。それだけで、1日20分ぶんの行動が変わった。

ただし、ここも限定を落とさずに書きます。

減ったのは「Netflixの視聴時間」であって、この研究は睡眠時間が増えたかどうかを測ったものではありません。「自動再生を切れば1日21分よく眠れる」とは言えないんです。また対象は長尺のSVODであり、ショート動画アプリでの再現ではありません。著者自身も、両群とも研究中に視聴が増えていたことからホーソン効果を指摘しています。ちなみに、研究終了後も自動再生をオフのままにすると答えたのは32%でした。

開いた窓から見える夜の街並み。通りの街灯と、集合住宅のいくつかの窓に灯りがともっている

Photo: Sami Aksu / Pexels

もうひとつ、画面そのものに摩擦をつくる実験があります。N=112の事前登録フィールド実験(Cyberpsychology, Behavior and Social Networking 2023、客観計測のスクリーンタイムが主要指標)では、グレースケールモードの有効化が対照条件(自己モニタリングのみ)と比較して即時かつ有意にスクリーンタイムを減少させました。時間制限の自己コミットメントは、より小さく緩やかな減少にとどまっています。

そして、この実験でいちばん引用されるべき一文は、結果ではなく但し書きのほうです。

スクリーンタイムの削減が広範な便益をもたらすという一般的な信念に反して、使用の削減が主観的ウェルビーイングおよび学業成績に与える即時の因果効果は見出されなかった。

見る時間は確実に減った。けれど、気分や成績がすぐ良くなるかは、この実験では確認されませんでした。ここを飛ばして「グレースケールにすれば楽になる」と書いてしまうと、期待を裏切る分だけ余計につらくなります。

文脈の話もひとつ。無限スクロール中の介入を調べた7日間・N=72の研究(CHI 2025)では、「低い感情価と在宅が組み合わさると介入への反応が遅くなり、眠気は介入へのリアクタンスを下げて受容を高める」と報告されています。夜・自宅・気分が落ちているという条件は、介入が届きにくい時間帯であると同時に、眠いぶん受け入れられやすい時間帯でもある。なお、無限スクロールそのものを取り除いたら使用が減るかどうかを示した対照実験は、今回の調査では確認できませんでした。

自動再生をオフにした実験の結果を4枚のカードで示した図解。米国の長尺動画配信サービスの利用者76名のうち処置群38名が10日以上オフにし、1日あたり平均視聴時間は21.0分減少、平均セッション長は17.6分減少、セッション内の視聴と視聴のあいだの時間は24.4秒増加、セッション間の間隔は有意差なし。下部に「減ったのは視聴時間であり、睡眠時間が増えたかどうかを測った研究ではない」と注記


「完全に断つ」より「量を決めて減らす」ほうが、成績は良かった

もうひとつ、よく勧められる方法があります。週末の半日でも電子機器を全部切る、いわゆる「デジタル安息日」です。

先に結論を書きます。週1日または週末半日の全面的な電子機器断ちを、対照群を置いて検証した試験は、今回の調査では確認できませんでした。これは「効果がないと証明された」という意味ではありません。「効果を裏づける対照実験を、今回の調査では見つけられなかった」という意味です。ここは混同されやすいので、そのままの言い方で残しておきます。

一方で、「減らす」ほうには対照付きの根拠があります。

Hunt らの研究(J Soc Clin Psychol 2018、N=143、米国の学部生、無作為割付、ベースライン1週+3週間)では、Facebook・Instagram・Snapchatを1プラットフォームあたり1日10分(計約30分)に制限した群が、対照群と比較して3週間で孤独感と抑うつの有意な減少を示しました。興味深いのは、両群ともベースラインより不安とFOMOが有意に減っていたことです。著者はこれを、自己モニタリングの増加自体に利益がある可能性として述べています。

Brailovskaia らの研究(J Exp Psychol Appl 2023、総N=619、ドイツ、4か月追跡)は、1日1時間の使用削減(n=226)7日間の完全断ち(n=200)と対照(n=193)を比べました。両介入とも、スマートフォン使用強度・問題使用傾向・抑うつ症状・不安症状が減少し、生活満足度と身体活動が増加しています。そして、ほとんどの効果は断ち群よりも削減群のほうが強く、4か月にわたってより安定していました。著者の結論は明快です。「完全なスマートフォン断ちは必要ではない」。

Plackett らのシステマティックレビュー(J Med Internet Res 2023、成人対象の23研究)も同じ方向を向いています。改善9/23(39%)、混在7/23(30%)、効果なし7/23(30%)。内訳では療法ベース(CBT等)が5/6(83%)、使用の制限が1/5(20%)、完全断ちは3/12(25%)でした。ただしこのレビューは、23研究中22研究が質評価で “weak” と厳しく評価されている点も併せて読む必要があります。

まとめると、「断食」型より「量を決める」型のほうが、対照実験では成績が良かった。そして夜の楽しみをゼロにする提案は、睡眠ガイド2023の但し書きに照らしても勧められません。減らした分は、日中に移す。それが今の根拠に一番忠実なやり方です。

今夜から試せることを、根拠のあるものだけ並べます。

  • 自動再生をオフにする(Netflix利用者76名の対照付き実験で、1日あたり平均視聴 −21.0分。ただし減ったのは視聴時間です)
  • 画面をグレースケールにする(N=112の事前登録実験で、実測スクリーンタイムが有意に減少。気分の即時改善は確認されていません)
  • 時間の上限を決めて減らす(完全に断つより削減のほうが効果が強く4か月後まで安定:総N=619)
  • デジタル機器を寝室に持ち込まず、電源を切って別の部屋に置く(睡眠ガイド2023)
  • 睡眠スケジュールの目標を決めて、実践できたかを日々モニタリングする(同ガイド)
  • 家庭でのルールは、取り上げるのではなく本人と一緒に決める(同ガイド。一律の制限や監視の強化は関係を損なうことがあります)
  • 減らした夜の余暇は、日中に補う(同ガイドの但し書き)

夜の机。真鍮色のデスクランプの明かりの下に、開いたままの紙の本と鉛筆が置かれている

Photo: Yury Rymko / Pexels


夜のスクロールは、原因ではなく症状かもしれません

ここまで「減らす工夫」の話をしてきましたが、順番として最後に置きたい話があります。実は、こちらのほうが大事な場合があるからです。

夜にスマホから離れられないことを、私たちはつい「だから依存なのだ」と原因の側に置いてしまいます。けれど、向きは逆かもしれないんです。

縦断研究13件のメタ分析(Sleep Medicine Reviews 2019、12か月以上の追跡)では、ベースラインの不眠がうつ病の発症を予測しました(OR 2.83[1.55–5.17]、10研究)。不安の発症も予測しています(OR 3.23[1.52–6.85]、6研究)。つまり、眠れない状態が先にあって、そこから気分の不調が育つ経路が確かめられている。

眠れないから手が伸びる。落ち込んでいるから画面に逃げる。その可能性を消してしまうと、本当に手当てすべきものを見落とします。

関連の強さについても、相関どまりであることは押さえておきます。電子メディア使用と睡眠の関連を調べたメタ分析(J Med Internet Res 2024、55論文・参加者41,716名・20か国以上)は有意な関連を報告していますが、相関研究の統合であり因果を示すものではありません。

もうひとつ、スティグマを避けるために必要な区別があります。中国の青少年1,346名(平均年齢14.97歳)を対象にした横断研究(Psychiatry Research 2023)は、非利用者199名・中程度686名・嗜癖的461名を比較しました。嗜癖的利用者は抑うつ・不安・ストレス・孤独感が高く、睡眠の質が低かった一方で、「中程度の利用者は、非利用者とメンタルヘルスや学業成績で差がなかった」。著者は、中程度使用と嗜癖的使用は別個の現象として考えるべきだと結論しています。

見ていること自体が問題なのではない。この区別は、自分を責めはじめる前に思い出しておきたい一行です。


この記事のまとめ

限定をつけたまま、要点だけ並べます。

  • 「ドーパミン中毒」という診断名は存在しません。ICD-11に収載されているのはゲーム行動症(6C51)のみで、DSM-5-TRのインターネットゲーム障害は正式診断ではなく、SNS・スマートフォンの使用は明示的に含まれません。
  • ドーパミンは「快楽」そのものを担う物質ではありません。一次文献では、liking はドーパミンに依存せず、ドーパミンが担うのは wanting と報酬予測誤差だとされています。
  • 不確実な報酬が報酬系を動かすことは、サルの単一ニューロン記録(Fiorillo 2003、不確実性は P=0.5 で最大)まで確かめられています。ヒトのショート動画フィードで強化スケジュールを操作した実験は、今回の調査では確認できませんでした。
  • 受容体の低下は薬物依存での所見です。病的賭博では男性13名 vs 対照12名の比較で差がなく(すべて P>0.1)、ショート動画やSNSの利用者を対象にした同種の受容体画像研究は、今回の調査では確認できませんでした。
  • 自動再生オフで減ったのは1日あたり平均21.0分の「Netflixの視聴時間」です(利用者76名の対照付き実験)。睡眠時間の増加を測った研究ではありません。
  • グレースケール化は実測スクリーンタイムを有意に減らしましたが、使用の削減が主観的ウェルビーイングおよび学業成績に与える即時の因果効果は見出されませんでした(N=112)。
  • 完全に断つより、量を決めて減らすほうが対照実験の成績は良好でした(総N=619、効果は削減群で強く4か月後まで安定)。一方、「デジタル安息日」を対照群付きで検証した試験は、今回の調査では確認できませんでした。
  • ゲーム行動症疑いの割合は尺度によって大きく異なります(久里浜 2024年調査、年齢調整後:GAMES-Test 3.8%/IGDT-10 0.7%、10〜29歳では10.3%/2.4%)。ひとつの数字で断定できません。
  • 夜更かしは行動であって疾患の証拠ではありません。公式ガイドの用語は「就寝時刻の先延ばし」で、同ガイドはそれをやめること自体が余暇時間の減少を通じてストレスや抑うつにつながる可能性にも注意を促しています。
  • 夜のスクロールは原因であると同時に症状でもありえます(不眠はうつ病発症を予測:OR 2.83)。

受診の目安(3段階)

以下はセルフチェックであって診断ではありません。診断は医療機関が行います。この記事は、受診のときに話す材料を整理するためのものです。

【すぐに119/救急】

  • 自殺・自傷の計画や準備がある、または「死にたい」という考えが頭から離れない。
  • 他人を傷つけてしまいそうな衝動が抑えられない。
  • 意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない、呼吸がおかしい。
  • けいれん、激しい頭痛・胸痛、呂律が回らない、片側の麻痺などの身体の急変。
  • 極度の断眠(数日ほとんど眠れていない)に、幻覚・妄想・強い興奮をともなう。

#7119(救急安心センター事業)は全国共通ではありません。総務省消防庁の現行ページには「現在、全国41地域で実施しています」と記載されています。お住まいの地域で実施されていれば「救急車を呼ぶか迷ったとき」の相談先として使えますが、未実施の地域もあります。緊急時は119を使ってください。

【当日〜数日以内に受診】(精神科・心療内科・睡眠外来/かかりつけ医)

  • 眠れない・眠りが浅い状態が週の半分以上の頻度で続き、日中の仕事・学業・家事に支障が出ている。
  • 抑うつ気分、興味や喜びの消失、食欲・体重の変化が2週間以上続いている。
  • 朝どうしても起きられず、遅刻・欠勤・欠席が増えている(概日リズム睡眠・覚醒障害の可能性。睡眠ガイド2023は、睡眠・覚醒相後退障害の6割近くに起立性調節障害の合併が報告されるとし、「できるだけ早く医師に相談することが重要」としています)。
  • 使用時間を自分で減らそうとして繰り返し失敗し、そのために仕事・学業・人間関係・睡眠に実害が出ている。
  • 強い不安・動悸・パニック発作がある、またはアルコールや他の物質の使用が増えている。
  • 子ども・思春期では、不登校・ひきこもり・家庭内の暴言暴力が併存しているとき(久里浜調査で、病的使用疑い群はこれらの経験者割合が非該当群より高いと報告されています)。

【経過観察でよい/まず生活の工夫から】

  • 夜に動画を見すぎた日が時々ある程度で、翌日の生活に支障が出ていない。
  • 自分で「今日は遅くなった」と気づき、翌日には戻せている。
  • 使用時間は長めだが、睡眠時間(成人は6時間以上が目安、中学・高校生は8〜10時間が参考値)が確保でき、日中の眠気や気分の落ち込みがない。

この段階でできることは、前の章に並べた工夫がそのまま当てはまります。そして2〜4週間試しても睡眠・気分・日中の機能が改善しないときは、自己対処を続けるより【当日〜数日以内】に進んでください。背景に治療できる状態が隠れていることがありますから。


つらいときの相談窓口

夜が長く感じられて、ひとりで抱えきれないとき。公的な窓口を載せておきます。(番号・受付時間は変わることがあるため、厚生労働省「まもろうよ こころ」で最新をご確認ください)

  • #いのちSOS:0120-061-338(24時間365日・無料)
  • よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・無料)
  • こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(受付時間は都道府県により異なります)
  • いのちの電話(フリーダイヤル):0120-783-556(毎日16〜21時、毎月10日は8時〜翌8時)

生命の危険があるときは、迷わず119番です。


調べ終えてから、私は自分のスマホの自動再生を切りました。劇的なことは何も起きません。ただ、次の一本が勝手に始まらなくなっただけです。

それでも、画面が一度暗くなる数秒のあいだに、「もう寝るか」と思えることが、何度かありました。変わったのは私の意志ではなく、手の中の設計のほうだった。そういうことだと思うんです。

午前3時の自分を責める必要はありません。責めたところで、明日の夜また同じ時間にいるだけですから。


参考にした情報源

  • 厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』(令和6年9月18日一部修正)
  • 総務省情報通信政策研究所「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(公表 令和8年6月26日)
  • こども家庭庁「令和7年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 報告書」
  • 厚生労働省補助事業/国立病院機構久里浜医療センター「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関する実態調査(2024)」
  • WHO「Addictive behaviours: Gaming disorder」Q&A(最終更新 2020年10月22日)/American Psychiatric Association「Internet Gaming」
  • Berridge & Robinson, Am Psychol 2017/Berridge, Psychopharmacology 2007/Schultz, Dialogues Clin Neurosci 2016/Fiorillo, Tobler & Schultz, Science 2003
  • Volkow et al., Arch Neurol 2007/Synapse 2010/Boileau et al., Addiction 2014
  • Schaffner et al., Proc. ACM Hum.-Comput. Interact. (CSCW) 2025/Cyberpsychol Behav Soc Netw 2023/CHI 2025(arXiv:2501.11814)
  • Kroese et al., Front Psychol 2014/Sleep Med Rev 2022(43研究)/Correa-Iriarte et al., Behav Sci 2023
  • Hunt et al., J Soc Clin Psychol 2018/Brailovskaia et al., J Exp Psychol Appl 2023/Plackett et al., J Med Internet Res 2023
  • Hertenstein et al., Sleep Med Rev 2019/J Med Internet Res 2024(55論文)/Sha & Dong, Psychiatry Res 2023
  • 総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)ってナニ?」/厚生労働省「まもろうよ こころ」

※本記事は一般的な健康情報であり、医学的な診断・治療・助言に代わるものではありません。症状や対処については医師・専門機関にご相談ください。セルフチェックは診断ではなく、ICD-11のゲーム行動症は通常12か月以上の持続と著しい機能障害を要件とし、診断は医療機関が行います。「スマホ依存」「ショート動画の中毒」は俗称です。夜にスマホから離れられない状態は、不眠障害・うつ病・不安症などの症状であることがあり、生活の工夫で改善しないときは受診が近道です。また、使用時間を減らす介入で時間が減っても、気分や成績が即座に改善するとは限りません。

類似投稿