40代・50代男性の無気力|バーンアウトと受診・相談の目安
正直に申し上げますと、私は長いあいだ「ただ疲れているだけだ」と思っていました。
朝、目は覚めているのに、体を起こす理由が見つからない。会議で自分が何を話したのか、帰り道には思い出せない。それでも週末に寝だめすれば戻ると信じていたんですが、その状態は何か月も続きました。
40代・50代男性の無気力を、この記事では感情論ではなく、公的な統計と診療ガイドラインの記述に沿って整理します。結論を先に申し上げると、大事な点は三つです。
- バーンアウト(燃え尽き症候群)は、WHOの定義では「職場」の問題であって、性格や気合いの問題ではありません
- 「男性ホルモンが減ったせい」という説明は、日本の診療ガイドライン自身が否定的です
- 40代・50代の働く男性は、統計上いちばん重い層です。だから、後回しにしないでください
そして、順番を変えて、いちばん先にこれを置きます。

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いま、つらい方へ — 先に相談窓口をお伝えします
無料で、匿名で使えます。ここだけ読んで閉じていただいても構いません。
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間・年中無休・フリーダイヤル)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・フリーダイヤル。外国語対応のガイダンスあり)
- いのちの電話(フリーダイヤル):0120-783-556(毎日16:00〜21:00/毎月10日は8:00〜翌8:00)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(受付時間は都道府県により異なります)
- 働く人の「こころの耳電話相談」:0120-565-455(月〜金 17:00〜22:00/土日 10:00〜16:00。祝日・振替休日・年末年始は休み)
ここで、知らないとつながらない注意点をひとつ。
こころの耳電話相談は、2026年1月から非通知での着信を受け付けていません。
発信者番号を通知しない設定にしている方は、頭に「186」を付けて「186-0120-565-455」とダイヤルしてください。
番号や受付時間は変わることがあります。最新の情報は厚生労働省「まもろうよ こころ」でご確認ください。働く方向けには厚生労働省「こころの耳」がSNS相談・メール相談も用意しています。
そして、いちばん大事なことを。「死にたい」という気持ちがあるとき、特に具体的な方法や準備が頭に浮かんでいるときは、緊急です。 上の窓口か医療機関へ。迷ったら救急(119)で構いません。
その無気力は「燃え尽き」なのでしょうか — WHOの定義から
まず、言葉の定義からです。回り道に見えるかもしれませんが、ここを外すと、自分を責める方向にしか進まないんですね。
WHO(世界保健機関)は2019年、バーンアウト(燃え尽き症候群)をICD-11にこう位置づけました。
「うまく対処されなかった慢性的な職場ストレスから生じると概念化された症候群」
収載されている章は「健康状態や保健サービスの利用に影響を与える要因」です。疾患の章ではありません。
WHOが挙げる3つの次元は次のとおりです。
- エネルギーの枯渇・消耗感
- 仕事への心理的距離の増大、仕事に対する否定的・シニカルな感情
- 職業的効力感の低下
「病名ではない」というのは、「軽い」「放っておいてよい」という意味ではありません。ただ、扱う相手が『自分の弱さ』ではなく『働き方』のほうだ、という意味ではあります。
「家族を背負う責任感で燃え尽きた」は、定義の外です
ここが、いちばん誤解されている点だと思います。
WHOは同じリリースで、はっきりと限定条項を置いています。
バーンアウトは職業上の文脈における現象を特に指すものであり、生活の他の領域における経験を表すために用いるべきではない
日常語としては「育児で燃え尽きた」「人生に燃え尽きた」という使い方が広くあります。それを否定したいわけではありません。ただ、ICD-11の定義としては、バーンアウトの原因は職場に限定されているということです。「家長としての責任感で燃え尽きる」という言い方は、定義の外側にあります。
そしてもう一点。定義上の原因は「うまく対処されなかった慢性的な職場ストレス」です。
つまり、ある日突然スイッチが切れるのではなく、対処されないまま積み上がった結果である、と書かれているんです。
「ある日突然、感情がマヒした」——そう感じる方は多いと思います。私もそうでした。ただ、それは実感としての比喩であって、医学的に「突然マヒする」という現象が確認されているわけではありません。振り返れば、その前に長い蓄積があったはずなんですね。
バーンアウトとうつ病の線引きは、専門家でないと難しいです
倦怠感、意欲の低下、睡眠の乱れ、集中力の低下。バーンアウトとうつ病は、症状が大きく重なります。
「放置するとうつ病になる」という説明をよく見かけますが、この記事では断定しません。査読を経た研究で因果と速度が裏づけられているわけではないからです。
代わりに、これだけを申し上げます。
「これはバーンアウトだから病院に行かなくていい」という自己判断だけは、しないでください。
なお、日本うつ病学会『うつ病診療ガイドライン2025』は、うつ病の発症に過重労働・経済的困難・社会的孤立といった社会的・環境的なストレス因子が関与することが多い、と明記しています。「働きすぎと抑うつのあいだに関係がある」——ここまでは、根拠のある話です。
[内部リンク: 関連記事 – 働く人のバーンアウト|燃え尽き症候群のセルフチェックと回復法]
40代・50代の働く男性に、いま何が起きているのか
ここからは数字の話です。読むのがつらい方は、次の見出しまで飛ばしてください。
厚生労働省・警察庁『令和7年中における自殺の状況』(令和8年3月公表)によると、令和7年(2025年)の自殺者数は19,188人。うち男性が13,176人で、女性(6,012人)の約2.19倍でした。人口10万人あたりの自殺死亡率は、総数15.6に対し、男性は22.0です。
年齢階級別に見ると、こうなります。
| 年齢 | 男性の自殺者数 | うち有職者男性 |
|---|---|---|
| 30〜39歳 | 1,618人 | 1,060人 |
| 40〜49歳 | 2,193人 | 1,452人 |
| 50〜59歳 | 2,702人 | 1,626人 |
| 60〜69歳 | 1,703人 | 752人 |
男性の最多は50代、次いで40代。働いている男性に絞っても、同じ順番です。
原因・動機のうち「勤務問題」を挙げられた件数は、男性で1,987件。そのうち40代・50代が約53%を占めます。経済・生活問題も、男性では40代910件・50代1,312件と、中年層に極端に偏っています。
ひとつ、原典が置いている注意書きを添えます。「自殺の多くは多様かつ複合的な原因及び背景を有しており、様々な要因が連鎖する中で起きていることに留意が必要」。単一の原因として読まないでください。

学会が挙げる自殺リスク因子に「孤立」「男性であること」があります
『うつ病診療ガイドライン2025』は、自殺リスク因子として、自傷や自殺企図歴、他の精神疾患の併存、家族歴、孤立や失業、逆境体験、そして男性であることを挙げています。
さらに、評価の観点として次の三つを示しています。
- 所属感の減弱 — 頼れる友人や親戚がいない、死別や離婚などの喪失体験
- 負担感の知覚 — 「自分の存在が他人の重荷になっている」という考え、失業などによる自己有能感の喪失
- 現在の状態 — 自殺念慮の有無、準備や具体的な計画の有無
「弱音を吐けない中年男性」という話は、感傷ではないんですね。学会のガイドラインが、名指しでリスクとして挙げている構造です。
「男性ホルモンが減ったせい」ではないのでしょうか
40代を過ぎて疲れが抜けなくなると、「男性更年期ではないか」と考える方は多いと思います。私も検索しました。
ただ、ここは慎重にお伝えしなければなりません。
日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会『LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き』2022年12月版は、世間で語られているのとは逆のことを書いています。
実は多くのコホート研究において、中高年男性におけるテストステロン値とうつ状態の間には関連が認められないという報告がなされており、近年の大規模研究でも、総テストステロン低値が1〜4年後のうつ病発症のリスクを高める可能性を否定した報告が複数ある
同じ手引きは、章の要旨でこうも述べています。「LOH症候群と大うつ病性障害には明らかな関連はない」。
つまり「男性ホルモンが減ったから、うつになる」という説明は、日本の診療の手引き自身が支持していないんです。
もちろん手引きは、血中テストステロン値と抑うつ症状に一定の関連があることも書いています。ただ続けて、すべての抑うつ症状がテストステロンのみで説明できるわけではなく、精神疾患との併存も念頭に置いて診断・治療にあたるべきだと明記しています。加えて、精神症状はテストステロン低下による直接の影響だけでなく、体力低下に伴う仕事量の変化や他者との関係性の変化といった社会的な要因が二次的・三次的に影響して現れることもある、と。
疲労、イライラ、気分の落ち込み、集中力と記憶力の低下、睡眠障害。手引きはこれらを「非特異的な不定愁訴」と呼んでいます。原因はひとつではありません。
ホルモンのせいだと決めつけることの本当の危険は、うつ病や身体疾患を見落とすことにあります。
「遊離テストステロン 8.5 pg/mL」は、もう現行の基準ではありません
数値の話を、一点だけ。
日本語のウェブ記事の多くが、いまも「遊離テストステロン 8.5 pg/mL」を基準として挙げています。これは2007年版の手引きに基づく古い記述です。
2022年12月の改訂版は、診断基準をこう改めました。
- 総テストステロン(TT):250 ng/dL 以下
- フリーテストステロン(FT):7.5 pg/mL(TTをまず測定し、FTは補助診断基準)
しかも手引きは、この閾値の限界を自ら認めています。「TT値が249ng/dLまたは251ng/dLの場合、LOH症候群か否かが変わるか? といえばそうではない」と。測定値に関わらず臨床症状と併せて総合的に判断することが重要である、というのが基本姿勢です。
さらにテストステロンは日内変動・季節変動・個人内変動が大きいため、多くのガイドラインが午前の空腹時に2回測定(4週間隔が望ましい)を採用しているとも書かれています。
一度の採血で決まる話ではありません。ましてや、記事に載った数字と自分を照らし合わせて決める話でもないんです。

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セルフチェック(AMSスコア)は、スクリーニングには推奨されていません
「男性更年期セルフチェック」を試した方も多いと思います。私も試しました。そして、当てはまりました。
でも、手引きの記述はこうです。
スクリーニング目的には症状調査票の使用は推奨されない。
広く使われているAMS(Aging Males’ Symptoms)スコアも同じです。理由は性能にあります。この種の質問紙は感度は80%以上と高いものの、特異度は50%未満と報告されている。だからこそ欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドラインは、系統的なスクリーニングにおいて質問紙を使用しないことを強く推奨しています。
特異度が低いというのは、平たく言えば「当てはまっても、その多くは該当しない」ということなんですね。
AMSは、医師がホルモン補充療法の効果を治療前後で確認するときに有用な道具です。自己判断の道具ではありません。
そもそもLOH症候群は、ICD-11に収載されていません
制度上の位置づけも、正確に書いておきます。
手引きの「刊行にあたって」には、こう明記されています。「LOH症候群はICD-11には収載されておらず、本邦でも保険収載されていない」。
男性ホルモン補充という医療行為は存在します。ただし適応と禁忌の判断は専門医が行うものです。この記事では薬剤名も用量も書きません。書けるのは、ここまでです。
そして、日本うつ病学会のガイドラインは軽度うつ病について「サプリメントや保健機能食品などは、積極的には使用しない」と明記しています。「男性ホルモンを補うサプリ」に手が伸びる前に、この一行を思い出していただきたいんです。
[内部リンク: 関連記事 – 男性更年期(LOH症候群)と活力低下]
自分でできること、職場に求めてよいこと、医療に任せること
「一人で抱えず相談を」。よく言われますし、正しいと思います。孤立は、学会のガイドラインが挙げる自殺リスク因子ですから。
ただ、家族に打ち明けるだけでは足りません。
バーンアウトは定義上「職場ストレス」の問題です。ですから、職場側の対処を抜きにして個人の努力だけを求めるのは、そもそも筋が通らないんですね。研究の世界でも組織側の介入の重要性が指摘されています(ただし効果は文脈により幅があり、良好な効果は短期に限られるという指摘もあります)。
だから、三つに分けて考えます。

自分でできること — 「軽い趣味」より、もう一段
BMJ 2024に掲載されたネットワークメタ解析(218のランダム化比較試験・14,170人)は、抑うつ症状への効果量をこう報告しています。
| 介入 | 効果量(Hedges’ g) |
|---|---|
| ウォーキング/ジョギング | −0.63 |
| ヨガ | −0.55 |
| 筋力トレーニング | −0.49 |
| 混合有酸素運動 | −0.43 |
| 太極拳/気功 | −0.42 |
しかも効果は、処方された運動強度に比例していました。
ここで、限界も正直に書きます。この研究はエビデンスの確実性を、ウォーキング/ジョギングで「低い」、他のモダリティは「非常に低い」と自ら評価しています。参加者やスタッフの盲検化がほとんど行われていないためです。ですから「運動は薬より効く」とは書きません。治療を受けている方は、必ず主治医と相談のうえで取り入れてください。
そのうえで、ひとつ言えることがあります。
この研究が支持しているのは「軽い屋外活動」ではなく、やや速いペースのウォーキング以上の強度です。
日本うつ病学会のガイドライン2025も、軽度うつ病の治療選択肢として「集団あるいは指導下での運動療法」を挙げています。一人で気ままに、ではなく、誰かと一緒か、指導のもとで。意外と大事な条件だと思います。
ただ、煽るつもりはありません。強度が上がるほど脱落も増えますし、筋トレとヨガのほうが受容性は高かったと報告されています。それに安全の問題があります。心疾患や脳血管障害、整形外科的な既往・合併症がある方は、始める前に必ず主治医に確認してください。
生活習慣についても、ガイドラインが挙げている点を並べます。
- 喫煙はうつ病の発症リスクを高め、改善を阻害します
- アルコール使用症とうつ病の併存率は高く、併存は双方の重症度の高さや予後の悪さと関連します
- 朝は一定の時間に起き、外光に当たる
- 肥満も発症の危険因子で、体重適正化を含む生活習慣改善プログラムは症状を軽減します
「晩酌で流す」。中年男性のいちばん典型的な対処だと思います。私もそうでした。ただ、ガイドラインが名指しでリスクとしている以上、ここは書かないわけにいかないところです。

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職場に求めてよいこと — 制度はあるのに、つながっていません
令和6年の労働安全衛生調査によると、仕事や職業生活に関することで強い不安・悩み・ストレスがあるとする労働者の割合は68.3%。相談先がある労働者は81.5%です。
一方で、こういう数字もあります。
過去1年間に1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があった労働者は1.5%。そのうち、超えた全ての月で医師の面接指導を受けた労働者は12.6%でした。
制度はある。相談先もある。それでも、つながっていない。
使える出口を並べます。
- 産業医への面接指導 — ストレスチェックの高ストレス者、および長時間労働者が対象です
- 地域産業保健センター(地さんぽ) — 50人未満の小規模事業場向け。産業医がいない職場の、現実的な入口になります
- 産業保健総合支援センター(さんぽセンター) — 事業者・産業保健スタッフ向けの相談窓口
- こころの耳 — 電話・メール・SNS相談。「5分でできる職場のストレスセルフチェック」もありますが、これは診断ではなく気づきの目安です
ストレスチェック制度については、正確に書いておきたい点があります。
2015年から労働安全衛生法で事業者に義務づけられていますが、労働者数50人未満の事業場は、現時点(2026年8月)ではまだ努力義務です。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により50人未満にも義務化されますが、施行は令和10年=2028年4月1日から。実際、50人未満の事業場でのストレスチェック実施率は33.5%にとどまっています。
いわゆる「過労死ライン」も、厚生労働省リーフレット(脳・心臓疾患の労災認定基準)の原文どおりに。
発症前1か月におおむね100時間、または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる
令和3年の改正では、この時間に至らなくても近い水準の時間外労働があれば、休日のない連続勤務・勤務間インターバルが短い勤務・心理的負荷を伴う業務といった労働時間以外の負荷要因も合わせて総合評価できることが明確化されました。

令和7年度の労災補償状況では、精神障害の請求件数が4,958件、支給決定は1,082件(うち自殺・未遂を含むもの76件)。認定における出来事の最多は上司等からのパワーハラスメント(222件)でした。
ここで、通俗イメージをひとつ訂正しておきます。過労死等防止対策白書は、精神障害事案(自殺以外)の労災請求件数について、近年「女性」が「男性」を上回る水準にあると記しています。「働きすぎで壊れるのは男性だ」という話ではありません。 自殺統計で男性が多いことと、労災請求で近年女性が多いことは、別の話です。

Photo: Felicity Tai / Pexels
医療に任せること — 「とにかく休め」も乱暴です
受診先の目安は、精神科・心療内科です。職場に産業医がいれば産業医面接。50人未満の職場なら地域産業保健センター。何科か迷う段階なら、こころの耳電話相談が入口になります。
原因不明の倦怠感、体重の変化、動悸といった身体症状が続いているなら、まず内科・かかりつけ医で身体疾患の除外を。
休職については、ガイドライン2025が両面を挙げています。
メリット:職業上のストレスや葛藤から離れ、保護的な環境で回復できる。治療・リハビリ・関係の修復に時間を割ける。職場での事故リスクを減らせる。
デメリット:日中の活動性が低下し、職場での日常的な対人接触を失うことで孤立した生活となり、症状悪化につながりうる。離職期間が長くなると復職への不安が高まり、「職場恐怖」ともいうべき状態が生じうる。
ですから「とにかく休め」も「休むな」も乱暴なんですね。休職の可否は、主治医・産業医と個別に判断するものです。傷病休職は業務外の傷病による長期欠勤が一定期間(3〜6か月が普通)に及んだときに行われるもので、期間は勤続年数や傷病の性質に応じて職場ごとに異なります。

復職には厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」があり、5つのステップが示されています。①休業開始及び休業中のケア ②主治医による職場復帰可能の判断 ③職場復帰の可否判断及び支援プランの作成 ④最終的な職場復帰の決定 ⑤職場復帰後のフォローアップ。
リワークプログラムについて、ガイドライン2025は復職継続割合が有意に高かったという報告を紹介する一方で、厳密な比較研究はなく後方視的コホート研究のデータであること、抑うつ症状への効果には十分なエビデンスがないことも明記しています。過大に見積もらないほうがいいと思います。
助けを求めるべきサイン — 先送りしないでください
これは診断基準ではありません。「気づきの目安」です。
- 抑うつ気分や、興味・喜びの喪失が2週間以上続き、仕事や日常生活に支障が出ている
- 眠れない/早朝に目が覚める状態が続く。あるいは、休んでも回復しない
- 飲酒量が増えている
- 「自分がいないほうが家族のためだ」という考えが浮かぶ
- 頼れる人がいない。人と会わなくなった
- 原因不明の倦怠感、体重変化、動悸などの身体症状が続いている
- 死にたい気持ちがある。特に、具体的な方法や準備を考えている
最後のひとつに心当たりがあるなら、この記事を読み終える必要はありません。いますぐ、下の窓口か医療機関へ。

Photo: Annushka Ahuja / Pexels
もう一度、相談窓口を
- #いのちSOS:0120-061-338(24時間・年中無休・フリーダイヤル)
- よりそいホットライン:0120-279-338(24時間・フリーダイヤル)
- いのちの電話(フリーダイヤル):0120-783-556(毎日16:00〜21:00/毎月10日は8:00〜翌8:00)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(受付時間は都道府県により異なります)
- 働く人の「こころの耳電話相談」:0120-565-455 → 非通知設定の方は「186-0120-565-455」(2026年1月から非通知不可)
- SNS・チャット相談:生きづらびっと(LINE)、こころのほっとチャット、あなたのいばしょチャット相談(24時間・匿名)
番号・受付時間は変更されることがあります。最新は厚生労働省「まもろうよ こころ」でご確認ください。
[内部リンク: 関連記事 – 不眠と睡眠衛生|眠れない夜の脳の切り替え]
この記事を書きながら、何度も手が止まりました。並べた数字のひとつひとつが、誰かの生活だったからです。
40代・50代の男性が全部投げ出したくなるとき、そこにあるのはたいてい「気合いの不足」ではありません。対処されないまま積み上がった職場の負荷と、誰にも言えずに過ぎた時間です。WHOの定義も、学会のガイドラインも、警察庁の統計も、結局は同じ方向を指していました。
だから、必要なのは頑張り直すことではないと思うんです。
いま起きていることに名前をつけること。自分でできること・職場に求めてよいこと・医療に任せることを分けること。そして、番号をひとつ押すこと。
それは弱さではありません。手を挙げるという行為は、そこにまだ続けたい生活が残っている人にしか、できないことですから。
参考にした情報源
- 世界保健機関(WHO)「Burn-out an “occupational phenomenon”: International Classification of Diseases」(2019年5月28日)
- 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会『LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き』2022年12月
- 日本うつ病学会『うつ病診療ガイドライン2025』
- 厚生労働省自殺対策推進室・警察庁生活安全局『令和7年中における自殺の状況』(令和8年3月27日公表)
- 厚生労働省『令和7年版 過労死等防止対策白書』/「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」/「令和7年度 過労死等の労災補償状況」
- 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」/リーフレット「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」/「こころの耳」
- Noetel M, et al. Effect of exercise for depression: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ 2024;384:e075847
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療・投薬の判断に代わるものではありません。症状が続く場合、日常生活に支障が出ている場合、また「死にたい」という気持ちがある場合は、自己判断で対処せず、精神科・心療内科の医師、職場の産業医、または本文中の相談窓口にご相談ください。緊急を要する場合は迷わず救急(119)または最寄りの医療機関へ。
