夜の間食の選び方|1日200kcalの枠と翌朝のむくみ

夜の間食の選び方|1日200kcalの枠と翌朝のむくみ

正直に申し上げます。私はある時期、検索窓に「夜の間食 罪悪感」と打ち込んでいました。

夕食は済ませてある。お腹が空いているわけでもない。それなのに、二十三時をまわったあたりで、台所の戸棚のことを考えているんですね。

そして何かをつまんだあと、翌朝の鏡の前で「顔が腫れぼったい気がする」と思う。あの一連の流れが、どうにも嫌でした。

結論から申し上げます。夜の間食で見るべきものは、①1日の総エネルギー量、②食べる時間帯、③食品の選び方、という順番です。

そしてもう一つ。「罪悪感のないおやつ」を探すという方法自体を、いったん降りたほうがうまくいきます。

この記事では、その理由と、実際に何をどれだけ選べばいいのかを、厚生労働省・文部科学省の一次資料と査読論文だけをたどって整理しました。ネット上でよく見かける説明のうち、根拠が確認できなかったものは、はっきりそう書いています。

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⚠ 本記事は一般的な栄養情報であり、個々の症状に対する医学的助言ではありません。持病のある方、服薬中の方、妊娠・授乳中の方は、食事を変える前に医師・管理栄養士にご相談ください。糖尿病で治療中の方は、間食の可否・量・タイミングを主治医または管理栄養士の指示に従ってください。


「罪悪感のないおやつ」を探すのを、いったんやめます

先に、いちばん大事な話をします。

食べ物を「良いもの/悪いもの」「セーフ/アウト」と道徳的に仕分けする考え方は、食のモラル化(food moralization) と呼ばれます。これは恥の感情や食べ物への没頭を強め、かえって不適応的な食行動につながりうると指摘されています(Appetite 2024、米国 National Alliance for Eating Disorders、University of Rochester Medical Center)。

「罪悪感なく食べられるおやつ」という言い方は、裏返すと 「それ以外を食べたら罪悪感を持つべきだ」 というメッセージになってしまうんですね。

私が検索窓に打ち込んでいたのは、まさにその言葉でした。

ですからこの記事では、言葉を置き換えます。

❌ 使わない言い方 ✅ 置き換える言い方
罪悪感のないおやつ/ギルトフリー 夜の自分のために、あらかじめ用意しておく選択肢
食べてはいけないもの/NG食品 量とタイミングを決めておくと扱いやすいもの
太らないおやつ 1回量あたり◯kcalのおやつ
我慢できないのは意志が弱いから 夜に何か食べたくなるのは、珍しいことではありません
悪いおやつを良いおやつに置き換える いま食べたいのが「甘い」なのか「しょっぱい・噛みたい」なのかを分ける

そしてこれは、私が思いついた精神論ではありません。

厚生労働省 e-ヘルスネットの「お菓子や間食の取り入れ方」(2025年2月17日更新)には、こう書かれています。

「ある日にお菓子を多く食べすぎた時には、次の日のお菓子は少なめにするなど、ある程度の期間の中で調節すると良いでしょう。」

1日単位で合否を出すのではなく、期間で調整する。公的な資料が採っているのは、この考え方です。

「今日食べたから台無し」という判定の仕方を、そもそも公的資料はしていない。 ここが出発点になります。


「我慢するとコルチゾールが増えて夜に過食する」は、根拠がありません

夜の間食を扱う記事で、いちばんよく見かける説明がこれだと思います。

「口さみしいのを我慢する → ストレスホルモンのコルチゾールが増える → 脳が夜の過食を引き起こす」。

流れとしてはよくできています。でも、この連鎖を通しで検証した研究は、今回の調査では見つかりませんでした。

それどころか、質の高い実験2件が、方向すら逆のことを報告しています。

研究 対象 結果
Tryon MS ら(Physiology & Behavior 2013) 女性41人、Trier Social Stress Test 慢性ストレスが高く、コルチゾール反応性が低い女性のほうがチョコレートケーキを多く食べた
Herhaus B ら(Translational Psychiatry 2020) 肥満のある人/標準体重の人 コルチゾール反応性が高い群のほうが多く食べた。ただし肥満群でのみ成立し、標準体重群では予測しなかった

反応が小さい人ほど食べたという報告と、大きい人ほど食べたという報告が、並んで存在しているわけです。

もう一つ、決定的な資料があります。系統的レビュー・メタ分析によると、絶食(fasting)では血漿コルチゾールが急性に上昇したものの、それより軽い程度のカロリー制限では上昇しませんでした(Stress 2016)。

つまり、「夜に何かつまむのを我慢する」程度の行為でコルチゾールが押し上げられる、という前提そのものに根拠がないんですね。

⚠ ただし、逆方向に言い過ぎるのも間違いです。ストレスがかかると甘いもの・脂っこいものに手が伸びやすくなる傾向自体は報告されています(Epel E ら, Psychoneuroendocrinology 2001)。

正確に言えるのは、「関わってはいるが、単純な一方向の因果ではない」 というところまでです。

分かれ目は「我慢するか」ではなく「我慢のしかた」

では、何が結果を分けるのか。

現在いちばん支持されている整理は、認知的な抑制(restraint)を 硬直的(rigid) と 柔軟(flexible) に分けて見る考え方です。Westenhoefer J らが提唱した枠組みで、後続の研究が繰り返し検証しています。

硬直的コントロール 柔軟なコントロール
考え方 「全か無か」。禁止食品を作って完全に排除する 段階的。「太る食べ物」も量を決めて許容する
少し逸脱したとき スイッチが切れて歯止めがきかなくなりやすい 逸脱を織り込んで続けられる
関連する結果 脱抑制(過食)スコアが高い/BMIが高い/過食エピソードがより頻繁・重度/減量成績が悪い 脱抑制が低い/BMIが低い/過食エピソードが少なく軽度/1年間の減量プログラムでの成功確率が高い

数字で見ると、こうです。

1,341人を対象にした研究(Linardon J ら, Int J Eat Disord 2020;53(4):533-540)では、直観的な食べ方が乏しく「全か無か」思考が高い群のうち、反復性の過食に該当したのは84%。一方、二分法的思考と硬直的な抑制がともに低い群では33%にとどまりました。

同じ方向の報告は他にもあります。Sairanen E ら(Eating Behaviors 2014)は柔軟な抑制がより持続可能な体重維持と関連したとし、Berg AC ら(2018)は高齢女性で柔軟な食行動がより大きな減量を予測したとしています。

⚠ ただし、「抑制すること自体が悪い」という結論にはなりません。 行動的減量介入を受けた肥満のある退役軍人を対象とした研究では、食事の抑制が増えたことが、脱抑制的な摂食の減少および減量と関連したと報告されています(PMID 31078701, 2019)。※こちらは抄録タイトルまでの確認で、詳細数値は未確認です。

ですからこの記事のメッセージは「我慢するな」ではありません。

「禁止リストを作るのではなく、量とタイミングを決めた許容にする」。 これだけです。

だからこの記事には、NG食品リストが出てきません。それは書き忘れではなく、設計です。

硬直的コントロールと柔軟なコントロールを2列で並べた比較カード。二分法的思考が高い群の反復性過食該当率84%、ともに低い群では33%


夜遅く食べると太るのか — 厚労省の資料は、両論を併記しています

ここは日本語で書けるいちばん強い部分だと思います。

厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」別紙3の標準的な質問票 質問15は、こうなっています。

「就寝前の2時間以内に夕食をとることが週に3回以上ある。」①はい ②いいえ

つまり、寝る前の食事習慣は、日本の特定健診の質問票に正式に入っている項目なんですね。

さらに、同プログラムの解説(p.100)には、保健指導での対処法としてこう明記されています。

「対処法として、就寝時間を遅らせるのではなく、例えば早めの時間に食事をとる工夫をしたり、間食等を工夫して就寝前のエネルギー、糖質等の摂取を控える等の方法がある。」

留意事項にはこうもあります。

「早めの時間に夕食を終えていても、夕食後に間食をしている場合がある。この場合も、寝る前の食事習慣が健康に与える影響を理解してもらい、改善点を探る。」

「夜の間食を工夫する」というこの記事のテーマは、公的な保健指導がそのまま推奨している方向と一致しています。

⚠ ただし、同じ資料が「一貫していない」ことも書いています

ここを飛ばすと誠実さを欠くと思うので、そのまま書きます。

質問15の「エビデンス」欄には、肯定側4件と否定側4件が併記されています。

肯定側:
– 特定保健指導を受けた2,239人:1年後に該当習慣が改善した人は、改善しなかった人に比べ腹囲が有意に減少しHDLコレステロールが有意に増加。
– 40〜74歳女性19,687人の横断研究:該当習慣と肥満の関連あり。
– 男女1,906人の横断研究:肥満・中心性肥満との関連あり。
– 30〜79歳766人:就寝前3時間以内に夕食をとる群は、3時間以上前の群よりBMI・腹囲が有意に高値。

否定側:
– 20〜49歳男性45,524人の横断研究:該当習慣と肥満の関連なし(Kito K ら, J Hum Nutr Diet 2019)。
– 40〜64歳47,172人の横断研究:メタボリックシンドロームとの関連なし(Kikuchi A ら, Prev Med 2021)。
– 糖尿病未発症の40〜74歳197,825人の後ろ向きコホート:糖尿病発症との関連なし(Kudo A ら, Sci Rep 2019)。
– 40〜55歳8,153人:該当習慣の有無でメタボリックシンドロームのオッズ比に有意差なし(Yoshida J ら, BMC Public Health 2018)。

否定側の研究の対象人数を見ていただくと、4万5千人・4万7千人・19万7千人と、決して小さくありません。

日本の追跡調査では、こういう数字もあります。『日本公衆衛生雑誌』64巻5号(2017年)の5年追跡調査(メタボ解析4,720人)では、男性で「就寝前2時間以内に夕食をとることが週3回以上」はメタボリックシンドローム発症のハザード比1.43(95%信頼区間 1.09–1.88) と有意に高い結果でした。女性ではこの項目ではなく、体重変化のほうがリスク上昇と関連しています。

もっとも厳密なデザインの研究も見ておきます。ハーバードのグループによるランダム化クロスオーバー試験(Vujović N ら, Cell Metabolism 2022)は、過体重・肥満の成人16人を対象に、総摂取カロリー・食事組成・活動量・睡眠・光曝露まで統制したうえで、同じ食事を4時間遅らせて比較しました。

遅い食事の条件では、空腹感が増し、グレリン:レプチン比が上昇し、覚醒時のエネルギー消費が低下しました。

⚠ ただしこれは16人の短期試験であり、「だから体重が増える」ところまでは示していません。

結局、優先順位はこうなります

以上をまとめると、こうです。

  1. 1日の総エネルギー量が主。 ここが動かないと、他は誤差の範囲です。
  2. 食べる時間帯は、それに次ぐ要素。 無関係ではないが、単独の決め手でもありません。
  3. 食品の選び方は3番目。 ただし、実際に手を動かせるのはここなので、この記事の後半はここに使います。

「夜に食べたから太る」ではなく、「夜に食べると1日の総量が増えやすい」。 この順序で考えると、対処がずいぶん現実的になります。


なぜ「血糖」ではなく「たんぱく質と食物繊維」で説明するのか

食品の話に入る前に、一つ断っておきます。

この記事では 「血糖値スパイク」という言葉を使いません。

理由は単純で、健常な方の食後の血糖変動と、体重や健康アウトカムとの因果関係について、今回の調査で確認できたのはクリニックの解説記事レベルの情報だけだったからです。根拠として弱すぎます。

代わりにこの記事が使う説明は、たんぱく質・食物繊維・総エネルギー量の3つです。これらは日本食品標準成分表とヒト試験の実測値で語れます。

地味ですが、地に足がついています。


甘いものが食べたい夜に — プレーンヨーグルトとブルーベリー

まず、「甘い」欲求のほうから。

日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉増補2023年の実数を並べます。

100gあたり ヨーグルト全脂無糖(13025) ヨーグルト無脂肪無糖(13054) ブルーベリー生(07124)
エネルギー 56 kcal 37 kcal 48 kcal
たんぱく質 3.6 g 4.0 g 0.5 g
脂質 3.0 g 0.3 g 0.1 g
利用可能炭水化物(単糖当量) 3.9 g 4.3 g 9.8 g
食物繊維総量 (0) g — 3.3 g
食塩相当量 0.1 g 0.1 g —
カルシウム 120 mg 140 mg —

組み合わせの計算例: プレーンヨーグルト(全脂無糖)100g + ブルーベリー50g = 約80kcal/たんぱく質約3.9g/食物繊維約1.7g。※成分表の値からの単純計算です。

80kcalであれば、後述する「1日の間食200kcal」の枠に、余裕をもって収まります。

⚠ ここで「腹もち」を約束しないための、大事な数字

たんぱく質を含む間食が食べ始めを遅らせる、という研究はあります。ただし用量の閾値があります。

Ortinau LC・Douglas SM・Leidy HJ ら(Nutrition Journal 2013;12:71)は、健康な女性15人に、午後の間食として160kcalのヨーグルト(たんぱく質 低5g/中14g/高24g)または間食なしを、3日間ランダムに摂取させました。

条件 夕食を要求するまでの時間
間食なし 124 ± 7 分
低たんぱく(5g) 152 ± 7 分
中たんぱく(14g) 158 ± 7 分
高たんぱく(24g) 178 ± 7 分

きれいな用量反応です。だからこそ、ここは正確に書かなければなりません。

プレーンヨーグルト100gのたんぱく質は3.6g(全脂無糖)/4.0g(無脂肪無糖)。この実験の「低たんぱく(5g)」にすら届きません。

いわゆるギリシャヨーグルト・水切りヨーグルトは日本食品標準成分表に収載がないため、正確な値は商品ごとの栄養成分表示を見るしかないのですが、市販の砂糖不使用タイプで110gあたり10g台前半という表示例を確認しました。それでも24gには届きません。

ですから、「ヨーグルトを食べれば178分もちます」とは書けません。 用量が違うからです。

役に立つのは、こういう視点だと思います。

同じヨーグルトでも、たんぱく質量には商品ごとにはっきり差がある。だから栄養成分表示のたんぱく質のグラム数を見て選ぶ。

⚠ なお、この研究は健康な女性15人の短期試験です。個人差があり、そのまま一般化はできません。

「無糖ヨーグルト」という言い方について

もう一つ、表示の話を挟みます。

日本の食品表示基準(別表第13)では、「無糖」は糖類0.5g未満/100gを指す言葉です。「ノンシュガー」「シュガーレス」も同じ基準が適用されます。

一方、ヨーグルトには牛乳由来の乳糖が含まれます。乳糖は二糖類なので「糖類」に入ります。成分表の利用可能炭水化物(単糖当量)は全脂無糖で3.9g/100gです。

つまり、砂糖を加えていなくても、糖類がゼロというわけではないんですね。

⚠ これは特定の商品の表示が不適切だという話ではまったくありません。制度上どうなっているかを断定するにも、私が確認できた一次資料では足りませんでした。ここでお伝えしたいのは、「無糖」という言葉は本来これくらい厳密な意味を持っている、という一点だけです。

なので、この記事では「無糖ヨーグルト」ではなく 「砂糖を加えていないプレーンヨーグルト」 と書いています。

生成りの布の上に置かれた、ベリーを添えたヨーグルトの器と金色のスプーン、亜麻仁の小皿

Photo: Ruken Kobatan / Pexels


しょっぱい・噛みたい夜に — 見るのは「食塩相当量」です

甘いものではなく、しょっぱいもの、噛みごたえのあるものが欲しい夜もあります。

そしてここが、いちばん実用的な話になります。

市販のローストひよこ豆は「フライ・味付け」に近いものです

日本食品標準成分表には、「ロースト(焙煎)ひよこ豆」という区分がありません。収載されているのは「ゆで」と「フライ・味付け」です。市販のローストひよこ豆スナックの多くは、後者に近い、油で揚げて味付けした加工品です。

100gあたり ゆで(04066) フライ・味付け(04067)
エネルギー 149 kcal 366 kcal
たんぱく質 9.5 g 18.8 g
脂質 2.5 g 10.4 g
食物繊維総量 11.6 g 21.0 g
ナトリウム 5 mg 700 mg
食塩相当量 0 g 1.8 g
カリウム 350 mg —

フライ・味付けを30g食べると、食塩相当量は0.54g(計算値)。これは女性の1日の目標量6.5g未満の約8%、男性7.5g未満の約7%にあたります。同じ30gで110kcal・脂質3.1g・食物繊維6.3gです。

一方、ゆでひよこ豆は食塩相当量0g。

「しょっぱいものが食べたい」という欲求に応える食品こそ、パッケージの食塩相当量の欄を見る価値がある、ということなんですね。

具体的には、水煮やゆでのひよこ豆をフライパンで乾煎りする、あるいは食塩相当量の表示が低いものを選ぶ。これだけで、同じ「噛みたい」欲求を、食塩の上乗せなしで満たせます。

豆類は満腹感を高めますが、次の食事は減りません

ここも両方書きます。

Li SS ら(Obesity 2014;22(8):1773-1780)の9試験・126人のメタ分析では、豆類の摂取により満腹感の増分曲線下面積が31%増加しました。

ただし、次の食事での摂取量には有意な影響がありませんでした。

著者らは、満腹感の増加が次の食事の減少として検出されなくても、減量食の続けやすさ(アドヒアランス)を支えることで長期の効果の一部を説明しうる、と解釈しています。

ですから「豆を食べれば次の食事が減ります」とは書けません。続けやすさを支える、という位置づけです。

アーモンド — 「表示よりカロリーが低い」には、形の但し書きがつきます

アーモンド(いり・無塩、05040)は100gあたり608kcal、たんぱく質20.3g、食物繊維11.0g、食塩相当量0g、カリウム740mg、マグネシウム310mg、ビタミンE 29.0mg。

1回量25gなら152kcal/たんぱく質5.1g/食物繊維2.8g/脂質13.5g/カリウム185mg(計算値)。※粒数は商品の粒サイズで変わるため、「◯粒」とは書きません。

さて、有名な話をします。

Novotny JA・Gebauer SK・Baer DJ(Am J Clin Nutr 2012)は、アーモンドから実際に取り込まれるエネルギーを実測し、4.6 ± 0.8 kcal/g、28g(1サービング)で129kcalという値を得ました。Atwater係数による計算値は28gで168〜170kcalです。

⚠ この差は「◯%低い」という割合で語られがちなのですが、割合の出し方で数字が変わるので、実数で書くのがいちばん安全です。

そして、ここからが本題です。

Gebauer SK ら(Food & Function 2016;7(10):4231-4238)は、この「割引」が加工すると消えることを示しました。 健康な成人18人による5期クロスオーバー・ランダム化試験で、各形状のアーモンド42g/日を管理食の一部として摂取し、9日間の順応期間のあとさらに9日間、尿と便をすべて採取して代謝可能エネルギーを測定した研究です。

アーモンドの形状 実測エネルギー Atwater予測との比較
全粒・生 4.42 kcal/g 有意に低い(P<0.001)
全粒・ロースト 4.86 kcal/g 有意に低い(P<0.001)。ただし全粒・生より高い
刻み 5.04 kcal/g 有意に低い(P<0.001)
アーモンドバター 6.53 kcal/g 予測と同等(P=0.08)=割引なし

細かくするほど吸収されるエネルギーが増え、ペースト状にすると差はなくなります。

日本食品標準成分表の05040「いり」は、この表の全粒・ロースト(4.86 kcal/g) に対応します。ローストでも計算値より低いのですが、全粒・生ほどの差ではありません。

⚠ ですから、アーモンドバター・アーモンドパウダー・アーモンドミルクに、この話を当てはめることはできません。

そして、成分表の608kcal/100gが間違っているわけでもありません。カロリー計算は成分表の値で行うのが日本の標準で、この研究はあくまで参考情報です。

もう一つ、期待値の調整を。習慣的に間食する非肥満者136人をアーモンド群とビスケット群に無作為割付し、1年間追跡した試験(Am J Clin Nutr 2023)では、体重変化に統計的有意差はありませんでした(アーモンド群67.1→69.5kg、ビスケット群66.3→66.3kg、P=0.275)。

複数のメタ分析が示しているのは「ナッツを食事に加えても体重は増えなかった」ところまでで、「アーモンドに替えれば体重が減る」ではありません。この線は引いておきます。

噛むこと自体にも、限定つきの根拠があります

「噛みごたえのあるものを選ぶ」という提案の根拠も見ておきます。

Miquel-Kergoat S ら(Physiology & Behavior 2015;151:88-96)の系統的レビュー・メタ分析では、16実験中10実験で咀嚼が食物摂取量を減らしました。若年女性では、一口あたりの咀嚼回数を20回から40回に増やすと、満腹に達するまでの摂取エネルギーが849kcalから757kcalに減少しています。自己申告の空腹感も有意に低下しました(−2.31 VASポイント, 95%CI −4.67〜−1.38, p<0.001)。

⚠ ただし、満腹感については16実験中5実験でのみ有意で、効果は一貫していません。 出版バイアスと研究間の異質性も確認されています。

ですので「よく噛めば痩せます」とは言えません。「噛みごたえのあるものを選ぶと、量が落ち着きやすい傾向がある」くらいが、根拠に見合った書き方だと思います。

夜のおやつ4種の1回量比較表。ヨーグルト100g+ブルーベリー50g 約80kcal、アーモンド25g 152kcal、ゆでひよこ豆100g 149kcal、フライ・味付けひよこ豆30g 110kcal・食塩0.54g


量の目安は「1日200kcal」の枠から使います

ここまでの食品を、どれだけ食べるか。

厚生労働省 e-ヘルスネット「お菓子や間食の取り入れ方」(2025年2月17日更新/執筆:野末みほ 常葉大学教授・管理栄養士)には、こう書かれています。

「『食事バランスガイド』では、1日のお菓子や嗜好飲料の目安の量を200kcalとしています。」

⚠ ここで正直に申し上げます。「夜の間食は何kcalまで」という、夜間に限定した公的な目安は、今回の調査では見つかりませんでした。

ですから、こう組み立てます。

1日200kcalという枠を1日全体のものとして持っておき、夜に食べるならその枠の中から使う。

先ほどの数字を当てはめると、こうなります。

  • プレーンヨーグルト100g + ブルーベリー50g = 約80kcal
  • アーモンド25g = 152kcal
  • ローストひよこ豆(フライ・味付け)30g = 110kcal・食塩0.54g

昼間に何も食べていない日なら、どれか一つを選んでもまだ枠が残ります。逆に、昼にすでに使っているなら、夜は少なめにする。

そして忘れてはいけないのが、先ほどのe-ヘルスネットの言葉です。「ある程度の期間の中で調節する」。 今日オーバーしたら明日と明後日で調整する、という考え方が、公的資料に書かれているんですね。

1日単位の判定をやめること。それが、この記事でいちばん実用的な部分かもしれません。

関連記事:ダイエット中の外食・飲み会での選び方


翌朝、顔が腫れぼったいのはなぜか

さて、最初に書いた「翌朝の顔」の話です。

ここは、私自身の思い込みがいちばん大きく崩れたところでした。

⚠ 公的資料は「塩分=むくみ」と書いていません

厚生労働省 e-ヘルスネットの「ナトリウム」ページ(2026年5月15日更新)を直接確認しました。過剰摂取の影響として挙げられているのは高血圧・循環器疾患・胃がんのリスクであり、「むくみ」の記載はありません。

研究のほうも一致していません。代謝病棟で行われた無作為化対照研究(健康男性32人、NaCl摂取50〜550 mEq/日、Am J Physiol Renal Physiol 2000;278:F585)では、血漿量は増加したものの、細胞外液量の増加は認められず、総体水分も体重も増えませんでした。

ですから「塩分をとると翌朝必ず顔がむくみます」「塩分◯gで◯kg増えます」といった断定は、現時点ではできません。

より裏づけが強いのは「横になっていたこと」のほうです

では何なのか。

日中は重力によって組織間液が下肢側に貯まります。夜、仰向けになると、その体液が頭側へ移動します。これを rostral fluid shift(夜間頭側体液移動) と呼びます。

これは睡眠時無呼吸の研究領域で実際に測定されている現象です。トロント大学 Yadollahi らのグループの2019年の研究では、仰臥位30分および下肢からの体液移動の増加によって、液体が主として首の「血管外スペース」に貯留したと報告されています。関連研究に Nocturnal Rostral Fluid Shift(Circulation)、Influence of Rostral Fluid Shift on Upper Airway Size and Mucosal Water Content(J Clin Sleep Med)があります。

⚠ ただし、ここには限界をはっきり書かなければなりません。

これらの研究が測定したのは、首まわりと上気道であって、「顔の見た目のむくみ」ではありません。 顔の見た目を直接測定した査読研究は、今回の調査では見つかりませんでした。

ですので、言えるのはここまでです。

「首から顔にかけての体液の移動が関係していると考えられています」。 推論であり、数値も断定も付けられません。

それでも減塩の話が無駄にならない理由

むくみを断定できないからといって、夜のスナックの食塩量を見なくていい、という話にはなりません。

項目 数値
日本人の食塩摂取量(令和5年度、20歳以上) 男性 10.7g/日、女性 9.1g/日
目標量(日本人の食事摂取基準2025年版、18歳以上) 男性 7.5g/日未満、女性 6.5g/日未満
高血圧・慢性腎臓病の重症化予防のための量 6.0g/日未満
推定平均必要量(18歳以上男女共通) 食塩相当量 1.5g

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「ナトリウム」(2026年5月15日更新)。摂取源の約50%は醤油・食塩などの調味料由来です。

日本人はすでに目標量を大きく超えて食塩をとっている。そこに夜のスナックが上乗せされやすい。 これは公的資料だけで完全に支持できる書き方です。

日本人の食塩摂取量(男性10.7g/日・女性9.1g/日)と目標量(男性7.5g未満・女性6.5g未満)、重症化予防6.0g未満を並べた横棒グラフ

むくみを持ち出すまでもなく、食塩相当量の欄を見る理由は十分にある、ということですね。


表示の言葉を、正しく読む

最後に、買うときに効く知識を。

食品表示基準(別表第13)の基準値は、こうなっています。カッコ内は一般に飲用に供する液状食品100mlあたりです。

成分 含まない旨(無・ゼロ・ノン)=基準値未満 低い旨(低・ひかえめ・少・ライト)=基準値以下
熱量 5 kcal(5 kcal) 40 kcal(20 kcal)
脂質 0.5 g(0.5 g) 3 g(1.5 g)
糖類 0.5 g(0.5 g) 5 g(2.5 g)
ナトリウム 5 mg(5 mg) 120 mg(120 mg)

「30%カット」「ハーフ」などの低減された旨は、比較対象品との相対差25%以上が要件です。

ここから分かることが、二つあります。

一つ目。「低カロリー」は100gあたり40kcal以下でないと表示できない言葉です。 アーモンドもひよこ豆も、この基準には当てはまりません。だからこの記事では「低カロリーのおやつ」ではなく「1回量で152kcal」と書いています。

二つ目。「低糖質」には、日本にも定量的な基準がありません。

ここは混同されやすいので、丁寧に書きます。

  • 「低糖」 — 基準あり。糖類5g以下/100g(飲料2.5g以下/100ml)。
  • 「低糖質」 — 基準なし。

理由は、「含まない旨」「低い旨」の対象成分が熱量・脂質・飽和脂肪酸・コレステロール・糖類・ナトリウムの6つで、「糖質」が入っていないからです。

なお、栄養成分表示で「0」と書ける量(別表第9)は、糖質・糖類とも0.5g未満/100gです。よく見る「糖質ゼロ」はこの規定によるものです。

ですから、「低糖質だから安心」ではなく、「栄養成分表示の実数を見る」。 これが正確な読み方になります。

白い六角タイルのキッチンに並ぶ、ナッツ・オーツ・米を入れた透明な保存瓶

Photo: RDNE Stock project / Pexels


この記事で書けなかったこと

正直に添えておきます。書けないことを明示するのが、この分野では誠実さだと思っていますので。

  • 「夜の間食は何kcalまで」という夜間限定の公的目安 — 存在を確認できませんでした。1日200kcalの枠から考える、という組み立てにしたのはこのためです。
  • ギリシャヨーグルト・水切りヨーグルトの成分値 — 日本食品標準成分表に収載がありません。商品ごとの栄養成分表示を見るしかありません。
  • 「顔の見た目のむくみ」を直接測定した査読研究 — 見つかりませんでした。首・上気道の測定からの推論にとどめています。
  • 健常な方の食後血糖変動と、体重・健康アウトカムの因果関係 — 確認できませんでした。だからこの記事は血糖の話で押しません。
  • 抑制と減量に関する2019年の研究(PMID 31078701)の詳細数値 — 抄録タイトルまでの確認です。

書かない、というのも一つの結論だと思っています。


相談の目安と、連絡先

からだ(むくみ)について — 内科を受診する目安

  • 顔や手足のむくみが朝だけでなく日中も続く
  • 急に強いむくみが出た/片側だけむくむ
  • 息切れ、尿量の減少、短期間での急な体重増加を伴う
  • 妊娠中のむくみ

食行動について — 心療内科・精神科・小児科に相談する目安(国立精神・神経医療研究センター「摂食障害のサイン」より)

  • 食べだすと止まらない/自分でコントロールできない過食を繰り返す
  • 食後に自己誘発性嘔吐や下剤の使用がある/食事の後にしょっちゅうトイレに行く
  • 1日に何度も体重計に乗る、体重・体型のことが頭から離れない
  • 人と食事するのを避ける、食べ物を隠す
  • 生理が止まった・不順になった、急激に体重が減った
  • 体調不良や悪天候でも運動をやめられない

電話相談

  • 摂食障害全国支援センター 相談ほっとライン 047-710-8869(火〜金 9:00〜15:00。休止日があるため公式サイトでご確認ください。摂食障害支援拠点病院が設置されている9都県以外にお住まいの方に向けた窓口です)
  • こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(受付曜日・時間は都道府県により異なります。厚生労働省「まもろうよ こころ」に掲載)

調べ終えて、いちばん残ったのは、食べ物の話ではありませんでした。

「罪悪感のないおやつ」を探していたあいだ、私は自分に判定を下し続けていた、ということでした。

セーフかアウトか。今日は守れたか、崩れたか。毎晩、小さな裁判をひらいていたようなものです。

けれど一次資料をたどっていくと、そこにあったのは判定ではありませんでした。1日200kcalという枠と、「ある程度の期間の中で調節する」という一行と、パッケージの裏の食塩相当量の欄。それだけです。

夜に何か食べたくなること自体は、たぶんこれからも変わりません。それでいいのだと思います。

必要だったのは、罪悪感のない食べ物ではなく、あらかじめ決めておいた量のほうだったのですから。

参考資料:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」別紙3 標準的な質問票、厚生労働省 e-ヘルスネット「お菓子や間食の取り入れ方」、厚生労働省 e-ヘルスネット「ナトリウム」、文部科学省 食品成分データベース(日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉増補2023年 13025・13054・07124・05040・04066・04067)、消費者庁「栄養成分表示について」(食品表示基準 別表第13)、国立精神・神経医療研究センター 摂食障害情報ポータルサイト、厚生労働省「まもろうよ こころ」、日本公衆衛生雑誌 2017;64(5)、Tryon MS ら(Physiology & Behavior 2013)、Herhaus B ら(Translational Psychiatry 2020)、Stress 2016(絶食とカロリー制限のメタ分析)、Linardon J ら(Int J Eat Disord 2020;53(4):533-540)、Westenhoefer J ら、Sairanen E ら(Eating Behaviors 2014)、Berg AC ら(2018)、Vujović N ら(Cell Metabolism 2022)、Ortinau LC ら(Nutrition Journal 2013;12:71)、Li SS ら(Obesity 2014;22(8):1773-1780)、Novotny JA ら(Am J Clin Nutr 2012)、Gebauer SK ら(Food & Function 2016;7(10):4231-4238)、Am J Clin Nutr 2023(1年間RCT)、Miquel-Kergoat S ら(Physiology & Behavior 2015;151:88-96)、Am J Physiol Renal Physiol 2000;278:F585、Yadollahi A ら(2019)。2026年8月時点の整理です。

※本記事は一般的な栄養情報であり、個々の症状に対する医学的助言ではありません。持病のある方、服薬中の方、妊娠・授乳中の方は、食事の変更前に医師・管理栄養士にご相談ください。糖尿病で治療中の方は、間食の可否・量・タイミングを主治医または管理栄養士の指示に従ってください。腎機能が低下している方・カリウム制限を受けている方はご注意ください。アーモンドはカリウム740mg/100g、ゆでひよこ豆は350mg/100g(日本食品標準成分表)と、カリウムを多く含みます。高血圧の方・減塩指導を受けている方は、味付けされたスナックの食塩相当量を必ずご確認ください。アレルギーにご注意ください。 ヨーグルトは乳、アーモンドはナッツ類を含みます。アレルギー表示の区分は消費者庁のアレルゲン表示情報でご確認ください。紹介した食品はいずれも一般的な食品であり、特定の商品を推奨するものではありません。掲載した成分値は日本食品標準成分表2020年版〈八訂〉増補2023年に基づく標準値で、実際の商品では異なります。購入時は必ずパッケージの栄養成分表示をご確認ください。

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