会社員の脂肪肝|飲まなくてもなる原因と二日酔い対策

会社員の脂肪肝|飲まなくてもなる原因と二日酔い対策

会社員の脂肪肝と二日酔い対策|「飲まなくてもなる」肝臓のはなし

正直に申し上げますと、私も長いあいだ「脂肪肝はお酒を飲む人の病気」だと思い込んでいました。

健康診断の結果票で ALT の欄に小さな矢印がついていても、「まあ飲み会が続いたからだろう」と受け流していたのです。

ですが、調べてみると事情はかなり違っていました。

日本人の脂肪肝の多くは、お酒ではなく 食べ過ぎ・糖質のとりすぎ・肥満 が原因の「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」だというのです。つまり、ほとんど飲まない会社員でも、痩せ気味の人でも起こりうる。

この記事では、会社員の脂肪肝二日酔いの関係を、公的機関や学会の情報をもとに整理してみます。慢性的なだるさの正体が、実は肝臓のサインかもしれない——そんな話です。

はじめに(お読みください):本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。肝機能の数値に異常がある方、体調不良が続く方は、自己判断せず消化器内科(肝臓専門医)などの医療機関にご相談ください。医薬品やサプリメントの使用は、用法・用量を守り、医師・薬剤師に相談のうえ行ってください。

脂肪肝の進行段階:正常な肝臓→単純性脂肪肝→NASH(炎症・線維化)→肝硬変・肝がんの4段階を示す図解


そもそも脂肪肝とは? — 「お酒を飲まなくても脂肪肝」の正体

脂肪肝と聞くと、どうしてもお酒を連想してしまいます。ですが、いま日本で増えているのはそちらではないのです。

NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患) とは、多量の飲酒やウイルス感染によらない脂肪肝や、それに伴う肝臓の病気の総称です。「多量飲酒でない」の目安は、エタノール量で1日あたり男性30g未満・女性20g未満とされています(日本消化器病学会/日本肝臓学会のガイドなど)。

そして、その多くが 肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧 をともなう、いわゆる メタボリックシンドローム と関連しています。

つまり、脂肪肝の正体は多くの場合、こういうことなんですね。

食べ過ぎ。糖質のとりすぎ。運動不足。内臓脂肪。

お酒をほとんど飲まない会社員にも、普通に起こる。ここが「飲まなくても脂肪肝?」という問いの核心です。

名前が変わりました(NAFLD → MASLD)

少しややこしい話も添えておきます。

2024年8月に国際的な呼称が変わり、NAFLD は MASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患) へ、進行した NASH は MASH へと改称されました。MASLD は「脂肪肝に加えて、肥満・高血糖・脂質異常などの代謝異常を一つ以上もつ」ことを積極的に定義する考え方です。

2026年現在、日本語の解説記事では NAFLD/NASH と MASLD/MASH が併記・混在している段階です。本記事では、なじみのある NAFLD の表記を中心に使います。

進行するとどうなるか

脂肪肝は一枚岩ではありません。

単純性脂肪肝 → 一部が炎症や線維化をともなう NASH(MASH) → 肝硬変・肝がん、と進むことがあります。NASH は肝がんへ進展しうる点で、「ただの脂肪肝」と侮れないのです。


どれくらい身近なのか — 日本の数字で見る

「自分には関係ない」と思いたくなりますが、数字を見ると少し背筋が伸びます。

  • NAFLD の有病率は、日本で 9〜30%。患者は全国で 1,000万人以上 と推計されています(日本生活習慣病予防協会などの統計)。
  • NASH の有病率(成人)は 3〜5% とされますが、実態は明らかでないとされています。

「9〜30%」と幅が広いのは、診断方法(画像・生検・健診)や対象集団の違いによるものです。あくまで概算・推計として受け止めるのがよいと思います。

それでも、1,000万人以上。飲む・飲まないにかかわらず、これはもう身近な話なんですね。


放置するとどうなる — 肝数値の上昇と、あの慢性的なだるさ

私が一番気になったのは、ここでした。

なぜ脂肪肝が「疲れ」につながるのか、という点です。

AST・ALT・γ-GTP の目安

まず、健診でおなじみの数値の目安を挙げておきます。検査機関によって多少異なるため、あくまで「目安」 としてご覧ください。

項目 目安の基準値
AST(GOT) おおむね 7〜38 IU/L 程度
ALT(GPT) おおむね 4〜44 IU/L 程度
γ-GTP 男性 80 IU/L 以下、女性 30 IU/L 以下が目安

脂肪肝では、じわじわと継続的に肝細胞が壊れていく状態になりやすく、AST よりも ALT が高くなりやすい(ALT優位)という傾向があります。γ-GTP は飲酒だけでなく、脂肪肝や薬剤でも上がります。

なぜ疲労につながるのか

肝臓は、代謝・解毒・エネルギー貯蔵(グリコーゲン)の中枢です。

脂肪肝でその機能が落ちると、糖や脂質、毒素の処理効率が下がり、だるさや慢性疲労として自覚されやすくなる——これは機序に基づく一般的な説明です。

ただし、「脂肪肝なら必ず疲れる」と断定はできません。そこは正直に書いておきたいところです。

そして肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれます。肝硬変や肝がんまで進んで、はじめて見つかる人も少なくないのです。

血液検査の結果票をグローブをした手で確認する様子。用紙にはALT・ASTなど肝機能の検査項目が並ぶ
Photo: Pavel Danilyuk / Pexels

「奈良宣言2023」— 受診の目安は ALT 30 ⭐

ここで、具体的な行動基準になる話をひとつ。

2023年6月、日本肝臓学会が総会(奈良)で 「奈良宣言2023」(正式には奈良30・40宣言)を提唱しました。要点はシンプルです。

健診で ALT が 30 U/L を超えていたら、まずかかりつけ医を受診して原因を調べる。

ALT は肝臓以外の臓器には少ないため、血中の ALT 高値は肝障害を比較的よく反映します。流れとしては、健診で ALT>30 → かかりつけ医で原因検索 → 必要なら消化器内科などで精密検査、というものです。

注意したいのは、この「30」は従来の基準値の上限(44 など)よりも厳しめの受診ラインだということ。「基準値内だから大丈夫」ではなく、ALT 30超は要注意 と覚えておくと、行動につなげやすいと思います。


二日酔いと脂肪肝はつながっているのか

さて、もうひとつのテーマ、二日酔いです。

「アセトアルデヒドが犯人」とよく言われますが、実はこの説明、そのままだと正確ではないんですね。

アルコールが分解される流れ

体内に入ったアルコールは、まず肝臓で アセトアルデヒド に、さらに アセテート(酢酸) へと分解されます。酢酸は血流にのって全身をめぐり、筋肉や脂肪組織で水と二酸化炭素に分解され、呼気・汗・尿として排出されます(厚労省 e-ヘルスネット)。

分解に関わる酵素のうち、アセトアルデヒドを酢酸に変えるのが ALDH2 です。この 非活性型 ALDH2 をもつ人——お酒で顔が赤くなるフラッシング反応が出る人——は、二日酔いになりやすいとされています。そして日本人は、この非活性型をもつ割合が高いのです。

二日酔いのメカニズムは「ほとんど解明されていない」

意外に思われるかもしれません。

厚労省の e-ヘルスネットは、「二日酔いがなぜ起きるかは、ほとんど解明されていない」と明言しています。

有力な要因として挙げられているのは、軽度の離脱症状、ホルモン異常による脱水や低血糖、酸塩基平衡の乱れ、炎症反応、アセトアルデヒドの影響、酒に含まれるメタノールや不純物 など。複数の要因が複合していると考えられているのです。

さらに、二日酔いの状態でも血中にアセトアルデヒドが検出されることは稀だ、とも指摘されています。つまり「アセトアルデヒドだけが犯人」ではない、というわけですね。

対策の一つとして消炎鎮痛薬がある程度効くとの記載もあり、これは炎症反応の関与を示唆しています。

アルコール代謝の流れ図:アルコール→アセトアルデヒド→酢酸→水と二酸化炭素。酢酸へ変える酵素ALDH2の位置を示す

では、脂肪肝との関係は?

ここが記事のフックとつながる部分です。

脂肪肝で肝機能(AST・ALT・γ-GTP)が落ちていると、アルコールやアセトアルデヒドの分解処理が滞りやすく、酔いやだるさ、二日酔いが長引きやすいと考えられます。

ただし、これは機序に基づく 推定 です。厳密な因果を断定できる一次データを、今回の調査では確認できませんでした。ですから「二日酔いがひどくなった、抜けにくくなった」と感じるなら、それは肝機能・脂肪肝のサインかもしれない——という橋渡しにとどめ、心配なら専門医で肝機能検査を、とお伝えするのが誠実だと思います。


対策 — エビデンスの強い順に

ここからが本題です。何をすればいいのか。エビデンスの強い順に並べます。

(A) 減量・食事・運動(最も根拠が強い)⭐

まず、これが土台です。

  • まず3%減量:日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」では、現体重の 3% を3〜6か月で減量 するのが第一目標とされています。この小さな減量でも、血圧・血糖・中性脂肪・肝機能(AST・ALT・γ-GTP)の改善がみられた研究報告があります。
  • さらに減らせれば:NAFLD/NASH診療ガイドライン2020では、体重7%以上減で肝脂肪と炎症が改善10%以上減で線維化の改善も期待できるとされています。
  • 運動療法:運動単独でも肝機能・肝脂肪化は改善します。目安は 中等度の有酸素運動30〜60分を週3〜4回、4〜12週間 の継続。体重が減らなくても肝脂肪が改善することがあります。週250分以上 の中〜高強度で効果的との報告もあり、厚労省の身体活動指針でも週150分前後が一つの目安です。

そして、会社員にとって現実的な最初の一歩がこれです。

加糖飲料・果糖の見直し。

清涼飲料水や果汁飲料に多い 果糖(フルクトース)は、肝臓で直接代謝されて中性脂肪に変わりやすい 性質があります。国際的な診療指針でも加糖飲料の回避が推奨されています。

よく聞く「1週間の糖質オフ」も、まずは 加糖飲料・お菓子・過剰な精製糖質のカット として位置づけると根拠がしっかりします。ジュースやエナジードリンクを、水やお茶に。

ただし、「1週間で数値が劇的改善」といった短期の断定は避けたいところです。あくまで 継続的な食事改善・運動・減量の入り口 として。極端な糖質制限の是非は、個人差や持病によるため、専門家への相談が前提です。

氷を入れたグラスに注がれた鮮やかな黄色い加糖炭酸飲料。清涼飲料に多い果糖は肝臓で中性脂肪に変わりやすい
Photo: Srattha Nualsate / Pexels

(B) 医薬品:UDCA(ウルソデオキシコール酸)

UDCA(ウルソ) は、1962年発売の肝・胆・消化機能改善薬です。肝細胞機能を改善し、胆汁分泌を促し(利胆作用)、細胞保護的に働くとされています。

ただし、脂肪肝(NAFLD)への有益性は議論の余地がある(controversial) というのが正直なところです。一部の研究では UDCA で ALT や miR-122 が低下し、ビタミンE との併用が選択肢になりうるとの報告もありますが、確立した第一選択の治療ではなく、あくまで補助的 な位置づけです。

市販の「ウルソ」系の製品もありますが、用法・用量を守り、肝機能異常が疑われる場合は自己判断で常用せず、医師・薬剤師に相談 することが前提です。

(C) サプリ:ミルクシスル(シリマリン)

ミルクシスル(シリマリン/マリアアザミ) は、抗酸化・肝細胞保護・肝細胞の再生促進・胆汁分泌促進などが提唱されるハーブです。肝内グルタチオン値を上昇させることが試験管内(in vitro)で確認され、ドイツでは慢性肝炎・肝硬変への使用が承認されているとの記載もあります。

一方で、こちらも両論あります。C型肝炎に対するマリアアザミの RCT(ランダム化比較試験)のメタアナリシスでは、忍容性は良好だが、全体的な有益性は得られなかった と報告されています。

つまり「肝臓に良い」とされる一方で、質の高い臨床試験では明確な有効性が示されていない領域もある、ということ。過大評価は禁物です。あくまで補助であって、医薬品の代替にはなりません。「サプリを飲めば脂肪肝が治る」——そう考えるのは、少し危ういのです。


会社員が今日からできること(まとめ)

情報を並べただけでは動けないので、最後に実践アクションへ落とし込みます。

  1. 健診結果を見る:ALT>30、γ-GTP高値、脂肪肝の指摘があれば要注意(奈良宣言2023)。
  2. まず加糖飲料・間食の糖質をカット。果糖の多いジュース・エナジードリンクを、水やお茶に。
  3. 有酸素運動を週150分〜(できれば250分)+筋トレ。まずは3%減量を3〜6か月で。
  4. 飲酒は適量・休肝日を。二日酔い対策は、水分・電解質の補給(脱水対策)が基本です。
  5. UDCA・ミルクシスルは“補助”。使うなら医師・薬剤師に相談し、治療を自己判断で代替しない。
  6. 数値が高い・疲労が続くなら、消化器内科(肝臓専門医)を受診

会社員が今日からできる脂肪肝対策チェックリスト(6項目)のインフォグラフィック


最後に、ひとつだけ付け加えさせてください。

脂肪肝は「沈黙の臓器」の話です。痛みも出さず、静かに進みます。だからこそ、年に一度の健診票の小さな矢印が、体からの数少ない便りなのだと思います。

私はもう、あの矢印を「飲み会のせい」で片づけないことにしました。

数値は嘘をつきませんし、肝臓は、こちらが気づいてあげるまで、ただ静かに待っているだけですから。


参考にした情報源

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「二日酔いのメカニズム」
  • 日本消化器病学会・日本肝臓学会「NAFLD/NASHガイド2023」
  • 日本肝臓学会「奈良宣言2023(奈良30・40宣言)」/肝臓リハビリテーション指針
  • 日本生活習慣病予防協会「脂肪肝/NAFLD/NASH」統計・疾患ガイド
  • MSDマニュアル プロフェッショナル版「マリアアザミ(ミルクシスル)」
  • 日本メディカルハーブ協会「シリマリンの効果について(RCTメタ解析)」
  • 田辺三菱製薬「ウルソ(UDCA)」製品情報・Q&A

※本記事は一般的な情報であり、診断ではありません。気になる症状や数値がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。

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