男性更年期(LOH症候群)とは?活力低下の原因と対策

男性更年期(LOH症候群)とは?活力低下の原因と対策

正直に申し上げますと、「疲れが取れない」を年齢のせいだと片づけてしまう方は、想像以上に多いのだと思います。

週末に一日中寝ても、月曜の朝がだるい。やる気が出ない。なんとなく気持ちも沈みがちで、性欲も落ちた気がする。

こうした変化が重なるとき、その背景に「男性更年期(LOH症候群)」が隠れていることがあります。

この記事では、男性更年期の症状・原因・診断基準・治療・生活習慣での対策までを、学会や公的機関の情報をもとに一通り整理しました。読み終えるころには、「これは受診したほうがいい状態なのか」を判断する手がかりが持てるはずです。

まず、はっきりお伝えしておきたいことがあります。

本記事は一般的な健康情報であり、診断や治療の代わりにはなりません。気力低下や性欲減退、慢性的な疲労が続く場合は、自己判断で抱え込まず、泌尿器科やメンズヘルス外来など専門医への相談をおすすめします。

男性更年期(LOH症候群)の3領域の症状(精神・身体・性機能)を整理した図解

男性更年期(LOH症候群)とは何か

LOH症候群は、正式には「Late-Onset Hypogonadism(加齢男性性腺機能低下症)」といいます。一般に「男性更年期障害」とも呼ばれる病態です。

日本内分泌学会や健康長寿ネット(長寿科学振興財団)の解説によれば、その定義は「加齢に伴うテストステロン値の低下と、それに伴う臨床症状を併せもった病態」とされています。本質は精巣(睾丸)の機能低下にあります。

女性の更年期がホルモンの急激な低下で起こるのに対し、男性ホルモンは中年以降、加齢とともに”穏やかに”減っていくのが特徴です。だから気づきにくいんですね。

しかも個人差が非常に大きい。加齢だけでなく、ストレス・睡眠不足・肥満といった日常の積み重ねが影響し、30代後半から表面化することもあります。

「やる気が出ない・疲れが取れない」——これが男性更年期のサイン

LOH症候群の症状は、大きく3つの領域に分かれます。(日本メンズヘルス医学会/日本内分泌学会/健康長寿ネット)

  • 精神・心理症状:気力・意欲の低下、抑うつ、苛立ち・不安、集中力や記憶力の低下、全身の倦怠感・疲労感、不眠
  • 身体症状:筋力低下、体脂肪・内臓脂肪の増加、関節や筋肉の痛み、骨量の減少、発汗・ほてり、睡眠障害
  • 性機能症状:性欲(リビドー)の低下、勃起障害(ED)、朝立ちの減少、射精感の減退

冒頭の「週末に寝ても疲れが取れない/やる気が出ない/性欲が落ちた」というパターンは、まさに精神症状と性機能症状が重なった典型例です。

日本メンズヘルス医学会も、代表的な訴えとして「全身の倦怠感や性欲の低下、やる気の不足、勃起障害(ED)、集中力の散漫、不眠、イライラ」を挙げています。心当たりが複数あるなら、一度立ち止まって考えてみる価値はあります。

放置するとどうなるか

気になるのは、放置したときのリスクです。

LOH症候群は、うつや認知機能の低下、骨粗鬆症だけでなく、メタボリックシンドロームや心血管疾患のリスク因子にもなり得るとされています。内臓脂肪の増加やインスリン抵抗性の悪化など、代謝への影響が指摘されているためです。(日本泌尿器科学会「診療の手引き」の記載に基づく解説)

「ただの疲れ」で済まないこともある、ということです。

休日に一日中寝ても疲れが残る——活力低下のイメージ
Photo: Thanh Luu / Pexels

原因はテストステロンの低下 —— 30代から減っていく

活力低下の中心にあるのは、テストステロン(男性ホルモン)の低下です。

テストステロンの分泌は20〜30代でピークを迎え、その後は加齢とともに緩やかに減っていきます。加齢によって、テストステロンを産生する精巣の「ライディッヒ細胞」が減少し、分泌を促す上位ホルモンのはたらきも低下するためです。(第一三共ヘルスケア「くすりと健康の情報局」/日本内分泌学会)

低下の程度には、よく引用される目安があります。

  • 40歳で2〜5%、70歳では30〜70%の人にテストステロン低下がみられるとされる
  • 米国のデータでは、60歳代で約20%、70歳代で約30%、80歳代で約50%が低値との報告もある(健康長寿ネット)

ただし、これらは母集団や定義が異なるため、あくまで「目安」として受け取ってください。一つの数字を断定的に当てはめるのは適切ではありません。

年代別テストステロンの推移イメージ——20〜30代でピークから緩やかに下降

そして重要なのは、加齢だけが原因ではないという点です。慢性的なストレス、睡眠不足、肥満、過度の飲酒、運動不足——こうした要因がテストステロン低下を加速させます。30〜40代でも活力低下として現れるのは、このためなんですね。

診断 —— AMSスコアと血液検査

では、どう診断するのか。柱は2つ、「AMSスコア」と「血液検査」です。

AMSスコア(自己評価質問票)でセルフチェック

AMS(Aging Males’ Symptoms)スコアは、男性更年期障害の評価に世界的に広く使われている17項目の質問票です。各項目を5段階(1〜5点)で回答し、合計点で重症度を評価します。

判定区分は以下の通りです。(健康長寿ネット/日本メンズヘルス医学会)

合計点 判定
26点以下 正常(症状なし)
27〜36点 軽度
37〜49点 中等度
50点以上 重度

ただし、AMSはあくまで気づきのための「スクリーニング」です。これだけで確定診断はできません。血液検査と合わせて、医師が総合的に判断します。

血液検査とテストステロンの診断基準(2022年改訂)

診断や治療介入の基準は、日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会の「LOH症候群診療の手引き(2022年改訂版)」に基づきます。

  • 総テストステロン値 250 ng/dL 未満 → 主診断(治療介入の基準)
  • 遊離テストステロン値 7.5 pg/mL 未満 → 補助診断

ここで、一点補足しておきます。

旧版(2007年版)の手引きや一部のクリニックの解説では、遊離テストステロン 8.5 pg/mL 未満を治療介入の目安としていました。2022年の改訂では、遊離テストステロン測定の信頼性の問題などから、補助診断値を 7.5 pg/mL 未満に変更し、総テストステロン250 ng/dL未満を主診断に据えています。

つまり「7.5か8.5か」で数字が食い違う情報を見かけたら、7.5が新基準・8.5が旧基準だと理解しておくと混乱しません。ただし数値の解釈は必ず主治医に確認してください。

もう一つ、採血には条件があります。テストステロンは日内変動があり朝に高いため、午前7〜11時・空腹での採血が推奨されます。肥満や甲状腺機能異常、糖尿病などSHBGに影響する因子や、LH・FSHによる原因評価も踏まえ、測定値だけでなく症状と合わせて総合判断されます。(CareNet/日本泌尿器科学会)

午前・空腹で行うテストステロンの血液検査——採血のイメージ
Photo: www.kaboompics.com / Pexels

受診の流れ

まとめると、こうなります。

  1. 気力低下・性欲減退・疲労などの症状に気づく
  2. AMS質問票でセルフチェック
  3. 泌尿器科・メンズヘルス外来を受診
  4. 午前の血液検査でテストステロンを測定
  5. うつ病・甲状腺・糖尿病・メタボなど他疾患の除外も含め、医師が診断

受診の流れ——セルフチェックから診断までの5ステップ

治療 —— 生活習慣が第一選択、必要ならTRT

治療と聞くと、いきなりホルモン注射を思い浮かべる方もいるかもしれません。でも、順番があります。

第一選択は生活習慣の改善です。ストレス軽減、睡眠改善、運動、食事の見直し。ここが土台になります。(日本内分泌学会)

補助的に、漢方薬・ED治療薬・抗うつ薬などが使われることもあります。

そして、著しい低値かつ症状が強い場合に検討されるのが、テストステロン補充療法(TRT)です。

テストステロン補充療法(TRT)とは

日本で保険適用される主な方法は、テストステロンの筋肉注射(エナント酸テストステロン=エナルモンデポ)です。通常は2〜4週間ごとに125〜250mgを投与し、約3か月ごとに効果を評価します。(日本内分泌学会/日本メンズヘルス医学会)

期待される効果としては、筋力・筋肉量の向上、骨密度の改善、代謝の改善、抑うつ症状の軽減、性機能・性欲の改善などが挙げられます。

ただ、良い面だけを並べるわけにはいきません。

主な副作用・注意点として、多血症(赤血球の増加)、心血管系への影響、睡眠時無呼吸症候群の悪化、にきび、肝障害、そして造精機能の低下による不妊などがあります。前立腺がんなどが疑われる場合は禁忌または慎重投与とされます。(日本メンズヘルス医学会)

だからこそ、挙児希望の有無を含め、TRTの適応は必ず専門医が判断します。市販サプリでの「テストステロン補充」や、ホルモン剤の自己使用は行わないでください。

生活習慣でできる活力低下対策

ここからは、自分でできる実践パートです。ただし前提として、これらは「治療の代替」ではなく、テストステロンを減らさない・整えるための補助策だとご理解ください。

運動 —— 特に下半身の筋トレ

レジスタンス運動(筋力トレーニング)と適度な有酸素運動の組み合わせが、テストステロンや成長ホルモンの分泌を促すことが知られています。目安は週3〜4回、心地よいと感じる程度の量です。(厚生労働省 e-ヘルスネット関連の解説)

なかでも注目されるのが下半身です。全身の筋肉の約70%は下半身に集中していて、大腿四頭筋などの大きな筋肉群を使うトレーニングほど、成長ホルモンの分泌が増えるとされています。スクワットが効率的と言われるのは、このためです。

ただし正確に言えば、これは「テストステロンそのものを直接大きく増やす」というより、「大きな筋肉を鍛えてホルモン分泌や筋量を維持し、活力につなげる」という文脈で捉えるのが妥当です。過度なオーバートレーニングは、かえってストレスホルモン(コルチゾール)を上げて逆効果になり得る点にも注意してください。

下半身の大きな筋肉群を使うスクワット——バーベルスクワットのイメージ
Photo: RDNE Stock project / Pexels

栄養 —— 亜鉛とアルギニンの正しい位置づけ

食事の面でよく話題になるのが、亜鉛とアルギニンです。ここは誇張されやすいので、慎重に書きます。

亜鉛は、精巣のライディッヒ細胞でテストステロンが合成される酵素反応の補因子(補酵素)として働く必須ミネラルです。ただし大事な但し書きがあります。「亜鉛が不足している人が補えば改善が期待できるが、すでに足りている人が飲んでも効果は期待しにくい」ということです。サプリでの過剰摂取は避け、まずは牡蠣・赤身肉・レバーなど食事から摂るのが基本です。(クリニックTEN 医師解説ほか)

アルギニンはアミノ酸の一種で、一酸化窒素(NO)を介した血流や成長ホルモン分泌との関連で語られます。ただし「テストステロンを直接上げる」明確な公的根拠は限定的です。本記事では、あくまで補助的な栄養素という位置づけにとどめておきます。

睡眠 —— 見落とされがちな柱

意外と軽視されがちですが、睡眠は運動・栄養と並ぶ柱です。

テストステロンは睡眠中に分泌が高まり、起床時に最も高くなります。逆に睡眠不足はテストステロンを低下させます。「7時間睡眠に比べ4.5時間睡眠では有意に低下」「慢性的な睡眠不足(7時間以下)で15〜30%ほど低下」といった報告もあります。(厚生労働省 e-ヘルスネット/睡眠関連解説)

十分な睡眠時間の確保は、地味ですが効きます。

その他の生活習慣

ここまでに加えて、共通して推奨されるのは次の点です。

  • ストレスをためない
  • 規則正しい生活リズムを保つ
  • 肥満を改善する
  • 過度の飲酒を控える

どれも当たり前に聞こえますが、当たり前を続けることが、いちばん難しいのかもしれません。

よくある質問(FAQ)

Q. 男性更年期は何歳から起こりますか?
A. テストステロンは20〜30代でピークを迎えたあと緩やかに減っていきますが、ストレスや睡眠不足、肥満などが重なると30代後半から症状が表面化することもあります。年齢だけでは決まりません。

Q. どの科を受診すればいいですか?
A. 泌尿器科やメンズヘルス外来が窓口になります。うつ病や甲状腺の病気など、他の疾患との見分けも大切なので、症状が続くなら早めの相談をおすすめします。

Q. サプリだけで改善できますか?
A. サプリはあくまで補助的です。特に亜鉛は不足している人にのみ効果が期待でき、足りている人が飲んでも大きな効果は見込みにくいとされています。治療の判断は医師が行います。

まとめ

最後に、ひとつだけ付け加えておきます。

「疲れが取れない」「やる気が出ない」を、年齢や気の持ちようだけで片づけないでほしいのです。その背景に、テストステロンの低下——男性更年期(LOH症候群)が隠れていることがあります。

できることは、実はシンプルです。まずAMSでセルフチェックし、気になれば泌尿器科・メンズヘルス外来で午前中の血液検査を受ける。そして睡眠・運動・食事という土台を整える。治療が必要かどうかは、専門医が判断してくれます。

活力は、ある日突然戻るものではないのかもしれません。それでも、正しく知って、正しく整えることから始まるのだと思います。

[内部リンク: 関連記事 – テストステロンを上げる生活習慣]
[内部リンク: 関連記事 – 中高年男性の睡眠改善ガイド]


参考資料

  • 日本内分泌学会「男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)」
  • 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会「LOH症候群 診療の手引き(2022年改訂版)」
  • 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「男性の性腺機能低下症(LOH症候群)」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
  • 第一三共ヘルスケア「くすりと健康の情報局」/CareNet 医療ニュース ほか

※本記事は一般的な健康情報であり、診断・治療の代替ではありません。症状が続く場合は専門医にご相談ください。

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