痛風の発作を防ぐ|尿酸値を下げる食事・水分・薬の話

痛風の発作を防ぐ|尿酸値を下げる食事・水分・薬の話

正直に申し上げますと、私はずっと「痛風はお酒とぜいたくの病気」だと思い込んでいました。

ビールと唐揚げをやめれば、それで済む話だろう、と。

ですが、調べてみると、その理解はずいぶん粗かったようです。痛風は、体のなかで過剰になった尿酸が関節で結晶になり、激しい炎症を起こす病気です。そして、尿酸値を下げるためにできることは、食事だけではありません。

この記事では、「風が当たっただけでも痛い」と言われる痛風発作を防ぐために、何がわかっていて、何が誤解なのかを、日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインなどをもとに整理してみます。

はじめに(お読みください):本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。痛風発作の治療や尿酸降下薬の使用は、必ず内科・リウマチ科などの医師の判断で行ってください。繰り返す関節の痛みや尿酸値の異常がある方は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

Photo: Yan Krukau / Pexels


そもそも痛風とは? — 尿酸が「結晶」になる病気

痛風と聞くと、足の親指が腫れて歩けない、というイメージがあると思います。実際、その通りなんですね。

血液に溶けきれなくなった尿酸が、尿酸ナトリウムの結晶として関節にたまります。その結晶を体の免疫(白血球)が処理しようとして、急激な炎症=痛風発作が起こります。好発部位は足の親指の付け根です。

痛みの表現は生々しいものが多く、「風が吹いても痛い」が語源とも言われ、しばしば出産の痛みにたとえられます。ある日突然、赤く腫れて熱をもち、数日から1〜2週間ほどで自然に引くことも多いのですが——放置すれば再発を繰り返すのが、この病気のやっかいなところです。

日本の痛風患者は、2016年時点で約110万人と推計されています。食生活の欧米化とともに、増える一方なのだそうです。そして、圧倒的に中年男性に多い。

血中で過剰になった尿酸が関節で結晶化し、白血球が反応して痛風発作が起こる3ステップの図解


尿酸値「7.0」と「6.0」— 数字の意味

健診でおなじみの尿酸値ですが、目安を知っておくと行動につなげやすいと思います。

  • 高尿酸血症の定義:血清尿酸値 7.0mg/dL 超(性別・年齢を問わず)。
  • 治療で目指す値:6.0mg/dL 以下

このラインは、日本痛風・尿酸核酸学会『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版〔2022年追補版〕』によるものです。

薬物療法を始めるかどうかの考え方は、ざっくりこうです。

  • すでに痛風発作を起こした人・痛風結節がある人は、尿酸を下げる治療の対象になります。
  • 症状のない無症候性高尿酸血症では、8.0mg/dL以上で腎障害・尿路結石・高血圧・脂質異常・糖尿病などの合併症があれば薬物療法を考慮、9.0mg/dL以上なら合併症がなくても考慮、とされています。

ただし、これはあくまで枠組みです。最終的な判断は、腎機能や合併症を見ながら医師が個別に決めます。

尿酸値の目安。7.0超で高尿酸血症、6.0以下が治療目標、8.0以上+合併症で薬物療法を考慮


いちばん大事な誤解 — 「食事だけで防げる」わけではない ⭐

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

ネットには「この食べ物で尿酸値を下げる」「食事だけで痛風は治る」といった情報があふれています。ですが、反復する痛風発作や高尿酸血症の管理は、尿酸降下薬による治療が中心です。食事・水分・節酒・運動は、その効果を支える補助という位置づけなんですね。

尿酸降下薬には、大きく2タイプあります。

  • 尿酸の生成を抑える薬:アロプリノール、フェブキソスタットなど(キサンチンオキシダーゼ阻害薬)。
  • 尿酸の排泄を促す薬:ベンズブロマロン、ドチヌラドなど。

そして、発作予防でとても重要な注意点があります。尿酸値が急に変動すると、それ自体が発作の引き金になるのです。ですから、

  • 急性発作の最中には、新しく尿酸降下薬を始めない(発作が落ち着くまで待つ)。すでに飲んでいる場合は、自己判断で中断しない。
  • 発作そのものの治療は、NSAIDs(消炎鎮痛薬)やコルヒチン、ステロイドなどで、できるだけ早く炎症を抑える。これは医師の判断によります。

つまり、「食べ物を工夫すれば薬はいらない」と考えるのは、少し危ういのです。繰り返す発作や高い尿酸値は、まず受診。そのうえで、以下の生活の工夫を薬の相棒として続ける——これが現実的な道だと思います。


食事 — 「ビール+唐揚げ」だけが敵ではない

では、生活面で何ができるか。まず食事です。

プリン体の多い食品を控える

プリン体は体内で分解されて尿酸になります。痛風・高尿酸血症の人は、1日400mgまでを目安に控えるのがよいとされています。

特に多いのは、次のような食品です(100gあたり300mg以上の「極めて多い」グループ)。

食品 プリン体の目安
レバー類(鶏・豚・牛) 約210〜320mg
白子(フグ・タラなど) 約300mg
干物・煮干し・かつお節・あん肝 多い
イワシ・カツオ・エビ 約210〜270mg

とはいえ、極端なプリン体制限より、食べ過ぎ・肥満・お酒の見直しの方が実効性が高いとする見方もあります。神経質になりすぎず、「高プリン食を毎日は続けない」くらいの距離感がよいと思います。

見落とされがちな「果糖」

もうひとつ、意外な伏兵が果糖(フルクトース)です。

清涼飲料水や果汁飲料に多い液状果糖(異性化糖)は、体内で代謝される過程で尿酸の産生を増やします。ガイドラインでも果糖の過剰摂取制限が挙げられています。

つまり、ビールと揚げ物だけでなく、肉類の食べ過ぎや、ジュース・エナジードリンクも尿酸を押し上げる。ここは、私自身がいちばん見落としていた点でした。

氷を入れたグラスに入った炭酸飲料。清涼飲料に多い果糖は尿酸値を上げやすい
Photo: Srattha Nualsate / Pexels

お酒との付き合い方

アルコールは種類を問わず尿酸値を上げますが、ビールはプリン体も多いので特に注意です。

ガイドラインが示す1日の目安は、日本酒1合/ビール500mL/ウイスキーダブル1杯程度まで。そして週に2日以上の休肝日をすすめています。


水分 — 1日2リットルで尿酸を「洗い流す」

尿酸の多くは腎臓から尿へ排泄されます。ですから、尿の量を増やすことが、尿酸の排出を助けます。

目安は、1日あたり約2,000mL(2L)の水分をとり、1日2L以上の尿量を確保すること。飲むのは水やお茶などのノンカロリー飲料で。ここで加糖飲料を選んでしまうと逆効果になります。

汗をかく夏や、運動後、飲酒のあとは、脱水で尿酸が濃くなりやすく、発作のリスクが上がります。こまめな水分補給を習慣にしておきたいところです。

明るいテーブルで水をグラスに注ぐ様子。水分補給は尿酸の排出を助ける
Photo: Annushka Ahuja / Pexels


運動 — 「良い運動」と「かえって悪い運動」がある

運動と聞くと、とにかく頑張ればよさそうに思えます。ですが、痛風に関しては少し事情が違います。

  • 有酸素運動(ウォーキング・軽いジョギングなど)は、肥満やインスリン抵抗性を改善し、尿酸値の低下に役立ちます。
  • 一方、急に激しい無酸素運動(全力ダッシュ・高強度の筋トレなど)は、かえって尿酸値を上げることがあります。筋細胞が一時的に壊れてプリン体が増えること、発汗で脱水になることが理由です。

ですから、「運動する=良い」ではなく、中等度の有酸素運動を、水分をとりながら続けるのが、痛風予防には合っています。

有酸素運動は尿酸値を下げ、急な激しい運動は脱水などでかえって上げやすいことを対比した図


今日からできること(まとめ)

情報を並べただけでは動けないので、最後に実践に落とし込みます。

  1. 繰り返す発作・高い尿酸値は、まず受診(内科・リウマチ科)。治療の主役は尿酸降下薬。
  2. 発作中は自己判断で薬を始めない・やめない。痛みの治療は医師に。
  3. 加糖飲料・果糖を減らす。ジュースやエナジードリンクを、水やお茶に。
  4. 高プリン食(レバー・白子・干物など)を毎日は続けない。食べ過ぎ・肥満の是正を土台に。
  5. お酒は適量+週2日以上の休肝日。ビールは特に注意。
  6. 1日2Lの水分で尿量を確保。運動・飲酒後の脱水に注意。
  7. 運動は中等度の有酸素中心。急な激しい運動は逆効果になりうる。

痛風発作を防ぐ7つの習慣をまとめたチェックリストのインフォグラフィック


最後に、ひとつだけ付け加えさせてください。

痛風は、痛みが引くと、つい「治った」と思ってしまう病気です。私も、たぶんそう考えていた側の人間でした。

ですが、痛みが消えても、血のなかの尿酸はそのまま残っているのですよね。関節でまた結晶をつくる機会を、静かに待っている。

だからこそ、痛みがないときにこそ、数値と向き合っておく意味があるのだと思います。次の「風」が吹く前に、できることが、まだいくつも残っているのですから。


参考にした情報源

  • 日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版〔2022年追補版〕」(ダイジェスト版/Mindsガイドラインライブラリ)
  • 公益財団法人 痛風・尿酸財団「食品・飲料中のプリン体含有量」
  • 日本内科学会雑誌「痛風・高尿酸血症」(患者数の推計)
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット(アルコールと健康)
  • 日本動脈硬化学会「痛風・高尿酸血症治療のフローチャート2025」

※本記事は一般的な情報であり、診断ではありません。気になる症状や数値がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。

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