痛風の発作を防ぐ|尿酸値を下げる食事・水分・薬の話
正直に申し上げますと、私はずっと「痛風はお酒とぜいたくの病気」だと思い込んでいました。
ビールと唐揚げをやめれば、それで済む話だろう、と。
ですが、調べてみると、その理解はずいぶん粗かったようです。痛風は、体のなかで過剰になった尿酸が関節で結晶になり、激しい炎症を起こす病気です。そして、尿酸値を下げるためにできることは、食事だけではありません。
この記事では、「風が当たっただけでも痛い」と言われる痛風発作を防ぐために、何がわかっていて、何が誤解なのかを、日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインなどをもとに整理してみます。
はじめに(お読みください):本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたもので、診断や治療を行うものではありません。痛風発作の治療や尿酸降下薬の使用は、必ず内科・リウマチ科などの医師の判断で行ってください。繰り返す関節の痛みや尿酸値の異常がある方は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
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そもそも痛風とは? — 尿酸が「結晶」になる病気
痛風と聞くと、足の親指が腫れて歩けない、というイメージがあると思います。実際、その通りなんですね。
血液に溶けきれなくなった尿酸が、尿酸ナトリウムの結晶として関節にたまります。その結晶を体の免疫(白血球)が処理しようとして、急激な炎症=痛風発作が起こります。好発部位は足の親指の付け根です。
痛みの表現は生々しいものが多く、「風が吹いても痛い」が語源とも言われ、しばしば出産の痛みにたとえられます。ある日突然、赤く腫れて熱をもち、数日から1〜2週間ほどで自然に引くことも多いのですが——放置すれば再発を繰り返すのが、この病気のやっかいなところです。
日本の痛風患者は、2016年時点で約110万人と推計されています。食生活の欧米化とともに、増える一方なのだそうです。そして、圧倒的に中年男性に多い。

尿酸値「7.0」と「6.0」— 数字の意味
健診でおなじみの尿酸値ですが、目安を知っておくと行動につなげやすいと思います。
- 高尿酸血症の定義:血清尿酸値 7.0mg/dL 超(性別・年齢を問わず)。
- 治療で目指す値:6.0mg/dL 以下。
このラインは、日本痛風・尿酸核酸学会『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版〔2022年追補版〕』によるものです。
薬物療法を始めるかどうかの考え方は、ざっくりこうです。
- すでに痛風発作を起こした人・痛風結節がある人は、尿酸を下げる治療の対象になります。
- 症状のない無症候性高尿酸血症では、8.0mg/dL以上で腎障害・尿路結石・高血圧・脂質異常・糖尿病などの合併症があれば薬物療法を考慮、9.0mg/dL以上なら合併症がなくても考慮、とされています。
ただし、これはあくまで枠組みです。最終的な判断は、腎機能や合併症を見ながら医師が個別に決めます。

いちばん大事な誤解 — 「食事だけで防げる」わけではない ⭐
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
ネットには「この食べ物で尿酸値を下げる」「食事だけで痛風は治る」といった情報があふれています。ですが、反復する痛風発作や高尿酸血症の管理は、尿酸降下薬による治療が中心です。食事・水分・節酒・運動は、その効果を支える補助という位置づけなんですね。
尿酸降下薬には、大きく2タイプあります。
- 尿酸の生成を抑える薬:アロプリノール、フェブキソスタットなど(キサンチンオキシダーゼ阻害薬)。
- 尿酸の排泄を促す薬:ベンズブロマロン、ドチヌラドなど。
そして、発作予防でとても重要な注意点があります。尿酸値が急に変動すると、それ自体が発作の引き金になるのです。ですから、
- 急性発作の最中には、新しく尿酸降下薬を始めない(発作が落ち着くまで待つ)。すでに飲んでいる場合は、自己判断で中断しない。
- 発作そのものの治療は、NSAIDs(消炎鎮痛薬)やコルヒチン、ステロイドなどで、できるだけ早く炎症を抑える。これは医師の判断によります。
つまり、「食べ物を工夫すれば薬はいらない」と考えるのは、少し危ういのです。繰り返す発作や高い尿酸値は、まず受診。そのうえで、以下の生活の工夫を薬の相棒として続ける——これが現実的な道だと思います。
食事 — 「ビール+唐揚げ」だけが敵ではない
では、生活面で何ができるか。まず食事です。
プリン体の多い食品を控える
プリン体は体内で分解されて尿酸になります。痛風・高尿酸血症の人は、1日400mgまでを目安に控えるのがよいとされています。
特に多いのは、次のような食品です(100gあたり300mg以上の「極めて多い」グループ)。
| 食品 | プリン体の目安 |
|---|---|
| レバー類(鶏・豚・牛) | 約210〜320mg |
| 白子(フグ・タラなど) | 約300mg |
| 干物・煮干し・かつお節・あん肝 | 多い |
| イワシ・カツオ・エビ | 約210〜270mg |
とはいえ、極端なプリン体制限より、食べ過ぎ・肥満・お酒の見直しの方が実効性が高いとする見方もあります。神経質になりすぎず、「高プリン食を毎日は続けない」くらいの距離感がよいと思います。
見落とされがちな「果糖」
もうひとつ、意外な伏兵が果糖(フルクトース)です。
清涼飲料水や果汁飲料に多い液状果糖(異性化糖)は、体内で代謝される過程で尿酸の産生を増やします。ガイドラインでも果糖の過剰摂取制限が挙げられています。
つまり、ビールと揚げ物だけでなく、肉類の食べ過ぎや、ジュース・エナジードリンクも尿酸を押し上げる。ここは、私自身がいちばん見落としていた点でした。

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お酒との付き合い方
アルコールは種類を問わず尿酸値を上げますが、ビールはプリン体も多いので特に注意です。
ガイドラインが示す1日の目安は、日本酒1合/ビール500mL/ウイスキーダブル1杯程度まで。そして週に2日以上の休肝日をすすめています。
水分 — 1日2リットルで尿酸を「洗い流す」
尿酸の多くは腎臓から尿へ排泄されます。ですから、尿の量を増やすことが、尿酸の排出を助けます。
目安は、1日あたり約2,000mL(2L)の水分をとり、1日2L以上の尿量を確保すること。飲むのは水やお茶などのノンカロリー飲料で。ここで加糖飲料を選んでしまうと逆効果になります。
汗をかく夏や、運動後、飲酒のあとは、脱水で尿酸が濃くなりやすく、発作のリスクが上がります。こまめな水分補給を習慣にしておきたいところです。

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運動 — 「良い運動」と「かえって悪い運動」がある
運動と聞くと、とにかく頑張ればよさそうに思えます。ですが、痛風に関しては少し事情が違います。
- 有酸素運動(ウォーキング・軽いジョギングなど)は、肥満やインスリン抵抗性を改善し、尿酸値の低下に役立ちます。
- 一方、急に激しい無酸素運動(全力ダッシュ・高強度の筋トレなど)は、かえって尿酸値を上げることがあります。筋細胞が一時的に壊れてプリン体が増えること、発汗で脱水になることが理由です。
ですから、「運動する=良い」ではなく、中等度の有酸素運動を、水分をとりながら続けるのが、痛風予防には合っています。

今日からできること(まとめ)
情報を並べただけでは動けないので、最後に実践に落とし込みます。
- 繰り返す発作・高い尿酸値は、まず受診(内科・リウマチ科)。治療の主役は尿酸降下薬。
- 発作中は自己判断で薬を始めない・やめない。痛みの治療は医師に。
- 加糖飲料・果糖を減らす。ジュースやエナジードリンクを、水やお茶に。
- 高プリン食(レバー・白子・干物など)を毎日は続けない。食べ過ぎ・肥満の是正を土台に。
- お酒は適量+週2日以上の休肝日。ビールは特に注意。
- 1日2Lの水分で尿量を確保。運動・飲酒後の脱水に注意。
- 運動は中等度の有酸素中心。急な激しい運動は逆効果になりうる。

最後に、ひとつだけ付け加えさせてください。
痛風は、痛みが引くと、つい「治った」と思ってしまう病気です。私も、たぶんそう考えていた側の人間でした。
ですが、痛みが消えても、血のなかの尿酸はそのまま残っているのですよね。関節でまた結晶をつくる機会を、静かに待っている。
だからこそ、痛みがないときにこそ、数値と向き合っておく意味があるのだと思います。次の「風」が吹く前に、できることが、まだいくつも残っているのですから。
参考にした情報源
- 日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版〔2022年追補版〕」(ダイジェスト版/Mindsガイドラインライブラリ)
- 公益財団法人 痛風・尿酸財団「食品・飲料中のプリン体含有量」
- 日本内科学会雑誌「痛風・高尿酸血症」(患者数の推計)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(アルコールと健康)
- 日本動脈硬化学会「痛風・高尿酸血症治療のフローチャート2025」
※本記事は一般的な情報であり、診断ではありません。気になる症状や数値がある場合は、必ず医療機関にご相談ください。
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