犬・猫のフィラリア予防と費用|現実的なワクチンガイド
正直に申し上げますと、はじめて犬を迎えた年、動物病院で渡された予防のパンフレットを前に、私は少しだけ固まってしまいました。
フィラリア、混合ワクチン、狂犬病、ノミダニ。名前は聞いたことがあるけれど、何を、いつ、いくらで続ければいいのか。まるで見当がつかなかったんです。
「まあ、言われるままでいいか」。そう思いかけて、でも踏みとどまりました。
家族の健康にかかわることなのに、仕組みも費用も知らないままなのは、少し無責任な気がしたからです。
この記事では、犬・猫のフィラリア予防と、毎年のワクチン・抗体価検査の費用を、現実的な目安とあわせてまとめました。数字はあくまで相場です。実際の投薬や接種は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
フィラリア予防薬は「予防」ではなく「駆虫」なんです
まず、いちばん誤解しやすいところからお話しします。
フィラリア予防薬は、その名前とは裏腹に、蚊を寄せつけない薬ではありません。
すでに体内に入ってしまった幼虫を、駆除する薬なんですね。
犬の体内で1か月ほど成長したフィラリアの幼虫に効くタイプで、いわば「蚊に刺された後」の後始末をしてくれる仕組みです。だから、投薬は蚊に刺される可能性のある時期を追いかけるように続けます。
この幼虫は、感染から約半年後には肺動脈や心臓に寄生して成虫になります。成虫が心臓に住みつくと、心不全や肺高血圧など、命にかかわる状態を招くことがあります。
「予防」という言葉の裏に、そんな仕組みが隠れているんですね。

薬のタイプは、飲み薬だけではありません
予防薬にはいくつかの形があります。
- 内服薬(もっとも一般的)… 錠剤・顆粒・チュアブル・経口ゼリータイプ。月に1回。
- スポットタイプ … 皮膚に垂らす塗布薬。ノミ・ダニ予防を兼ねる製品もあります。
- 注射薬 … 1回で長期間をカバーするタイプ。
どのタイプでも、大切なのは「月1回、決まった時期を守る」こと。ここが崩れると、せっかくの投薬が意味をなさなくなってしまうんです。
いつまで続ける? 冬まで飲ませたほうがいい理由
投薬の基本は、蚊が飛び始めて約1か月後に始め、蚊がいなくなって約1か月後に終える、というリズムです。
ここで多くの方がつまずくのが、終わりのタイミングなんですね。
「もう蚊を見なくなったから、そろそろやめよう」。その気持ち、とてもよくわかります。
でも、それが少し早いんです。
薬は体内の幼虫を駆虫するものなので、蚊のシーズンに感染した幼虫を駆除しきるために、シーズンが終わった後の1か月分がどうしても必要になります。ここでやめてしまうと、駆除しきれなかった幼虫が体内に残ってしまうおそれがあります。
さらに、暖冬の年や室内飼育では、蚊が越冬したり室内で活動したりすることがあります。そのため、地域や病院によっては通年予防をすすめているところもあるんですね。
開始や終了の時期は地域差が大きいので、ここはかかりつけの獣医師の指示に従うのがいちばん確実です。

Photo: Goochie Poochie Grooming / Pexels
毎年かかるワクチンと、抗体価検査という選択肢
フィラリアと並んで、毎年考えることになるのがワクチンです。ここは費用の話も含めて整理しておきます。

狂犬病ワクチンは「法律で年1回」
まず外せないのが、狂犬病ワクチンです。
これは飼い主の気持ちの問題ではなく、狂犬病予防法によって年1回の接種が義務づけられています(生後91日以上の犬が対象)。
費用の相場は1回3,000〜4,000円ほど。あわせて、初回に市区町村への登録料が3,000円前後かかります。
混合ワクチンは、種類で幅があります
混合ワクチンは、守れる病気の数によって費用が変わります。
- 犬の2〜3種 … 3,000〜5,000円程度
- 犬の5種以上 … 6,000〜10,000円程度
- 猫の3種混合 … 4,000〜6,000円ほど
接種の間隔については、子犬・子猫の時期は複数回打ちますが、成犬・成猫になってからはコアワクチンは3年に1回、ノンコアワクチンは年1回が目安といわれることが多いです。
ただ、ここは正直、はっきり割り切れない部分でもあるんですね。抗体のつきやすさや生活環境で変わるため、一概には言えません。
抗体価検査で、接種を見送れることもあります
そこで近年増えているのが、抗体価検査という選択肢です。
血液を調べて十分な抗体が確認できれば、その年のコアワクチン接種を見送る、という考え方をとる病院が増えてきました。
費用の相場は5,000〜10,000円程度。ワクチンより高くつくこともありますが、「毎年なんとなく打つ」のではなく、必要かどうかを確かめてから決められるのは、ひとつの安心材料だと思います。
結局、1年でいくら? 現実的な目安
いちばん気になるのは、トータルでいくらかかるのか、ですよね。
ペット保険会社の記載では、健康な犬でも1歳以降は、フィラリアやノミ・ダニ予防も含めて、
- 小型・中型犬で、年間およそ3〜5万円
- 大型・特大犬で、年間およそ4〜6万円
ほどの医療費がかかるとされています。
薬は体重で量と価格が変わるので、大きい子ほど予防費用は高くなりがちなんですね。

猫も、フィラリア予防の対象です
「うちは室内飼いだから」と思われるかもしれません。
でも、猫もフィラリアに感染することがあります。蚊が発生する時期に予防薬を投与する形で、室内飼いの猫にも予防をすすめる病院は多いんですね。
なお、生まれた時期が秋から冬の場合は、1年目のフィラリア・ノミダニ予防が不要なこともあります。このあたりも、かかりつけに確認してみてください。

Photo: Jenna Hamra / Pexels
最後に、いちばん大切なこと
ここまで費用の話を並べてきましたが、最後にひとつだけお伝えしておきたいことがあります。
この記事の数字は、すべて相場・目安です。
地域、病院、体の大きさ、選ぶ薬によって、実際の金額は変わります。混合ワクチンを毎年打つか、抗体検査で見送るか、といった判断も、正解がひとつではありません。
だからこそ、具体的な投薬期間や接種の可否は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。持病のある子ならなおさらです。
[内部リンク: 関連記事 – 犬・猫のノミ・ダニ予防はいつから始める?]
わからないまま言われるままに払っていた最初の年から、少しずつ仕組みを知って、今は納得して続けられるようになりました。
フィラリアの薬が「駆虫」だと知ってからは、冬の手前でやめずに最後まで飲ませることの意味も、すっと腑に落ちたんです。
お金の話は、どうしても身構えてしまいます。
でも、仕組みがわかれば、それは家族の健康のための、納得できる出費に変わっていくのだと思いますから。
参考にした情報源
本記事は以下の信頼できる情報をもとに構成しました(詳細はリサーチ資料に基づく)。
- ペット&ファミリー損保 ペットニュースストレージ「犬・猫の予防接種の費用」
- 物産アニマルヘルス「犬のフィラリア症の予防(投薬)について」
- 行徳どうぶつ病院ほか 獣医師監修コラム(フィラリア予防期間・冬の必要性)
- ファニメディック動物医療グループ「猫の混合ワクチン接種」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、獣医学的な診断・助言に代わるものではありません。予防薬の投与時期・ワクチン接種・抗体価検査の可否は、持病のある子はとくに、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
