高齢者のサルコペニア|チェックリストと予防法
正直に申し上げますと、親の歩くスピードが少し遅くなったと気づいたとき、私は言葉にできない不安を覚えました。
「年だから仕方ない」。そう片づけてしまいそうになったんです。
でも、その筋力の衰えには、サルコペニアという名前がついています。そして、名前がついているということは、気づいて、対策できるということでもあるんですね。
サルコペニアとは、加齢によって筋肉量や筋力、歩く力が低下した状態のこと。筋肉は40歳以降に減り始め、とくに足の筋力が落ちやすいとされています。
うれしいのは、その入り口が、自宅で簡単にチェックできることです。
この記事では、高齢者のサルコペニアのチェックリストと、無理なく続けられる予防法をまとめました。ただ、先に一つだけ。ここに書くのは一般的な目安です。気になる結果が出たり、持病がある場合は、必ず医師に相談してください。

セルフチェック①:指輪っかテスト
まず試してほしいのが、指輪っかテストです。東京大学の飯島勝矢先生が、柏スタディという研究をもとに考案した方法で、計測器がなくてもできます。
やり方はとても簡単です
- 椅子に座り、両足を床につけます。
- 利き足でない方のふくらはぎの、いちばん太い部分を、両手の親指と人差し指で「輪っか」を作って囲みます。
- ギュッと締めつけず、軽く添える程度で測るのがポイントです。
囲めるかどうかで、目安がわかります
- 囲めない(指がつかないほど太い)… サルコペニアの新規発症リスクは低い。
- ちょうど囲める … リスクは約2.1倍。
- 隙間ができる(細くて指が余る)… リスクは約3.4倍。
数字で見ると、少しドキッとするかもしれません。
ただ、ここは冷静に受け止めてください。「隙間ができた=サルコペニア確定」ではないんです。あくまでリスクの目安であって、対策を意識するサイン。そう考えるのが、いちばん前向きだと思います。

Photo: MART PRODUCTION / Pexels
セルフチェック②:SARC-F(質問式)
もう一つ、質問に答えるだけのチェックもあります。SARC-Fと呼ばれるものです。
次の5項目を、それぞれ0〜2点で答えます。
- 握力・力の弱さ(重い物を持ち運べるか)
- 歩行(歩くのに補助が必要か)
- 椅子からの立ち上がり
- 階段を上る
- この1年の転倒
合計10点満点で、4点以上だとサルコペニアの疑いとされ、医療機関での評価がすすめられます。

こうしたセルフチェックは、あくまで入り口です。確定診断は医療機関で、筋力・身体機能・骨格筋量から行われます。参考までに、その目安の一例を挙げておきます。
- ふくらはぎの周囲長:男性34cm未満・女性33cm未満が、筋肉量低下を疑う目安の一つ。
- 握力:男性は28kg未満。
- 歩行速度:6メートルを歩いて1.0m/秒未満。
これらは専門機関で測るものですが、「自分の体は今どのあたりなのか」を知る手がかりにはなると思います。
予防の二本柱|食事と運動
チェックのあとは、いよいよ対策です。サルコペニアの予防・改善は、たんぱく質を意識した食事と、下肢を中心とした筋トレ。この二本柱で考えます。
大切なのは、どちらか片方ではなく、セットで取り組むことなんですね。

たんぱく質を、毎食こまめに
筋肉の材料は、たんぱく質です。高齢期は、意識して摂りたい栄養素なんですね。
- 厚生労働省の予防的な考え方では、少なくとも体重1kgあたり1日1.0g以上が望ましいとされています。
- サルコペニア対策としては、体重1kgあたり1日1.2〜1.5g程度が必要という見解もあります(体重60kgなら1日72〜90g)。
- コツは、1食あたり20〜25gを、3食で均等に。とくに朝食が不足しがちなので、そこを意識してみてください。
食品でいえば、肉・魚・卵・大豆製品(豆腐・納豆)・乳製品などです。
一点だけ注意を。腎臓病などでたんぱく質の制限がある方は、自己判断で増やさず、必ず主治医や管理栄養士に相談してください。

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下肢の筋トレは、ゆっくりが正解
足の筋肉は落ちやすいぶん、鍛えがいもあります。高齢者には、関節に負担をかけにくいゆっくりした動き(スロトレ)がすすめられています。
スクワットなら、3秒かけて膝を曲げ、3秒かけて伸ばす。ふらつくときは、椅子や壁に手を添えて行います。
椅子に座ったままできる運動もあります。
- つま先上げ:かかとを床につけたまま、つま先を上げて2〜3秒静止し、下ろす。
- かかと上げ:つま先を床につけたまま、かかとを上げて2〜3秒静止し、下ろす。
ウォーキングなどの軽い有酸素運動を組み合わせると、なおよいとされています。
無理をしない、が何より大切です
最後に、これだけは強くお伝えしておきたいことがあります。
無理をしないでください。
痛みや強い息切れ、めまいが出たら、すぐに中止する。回数や強度は、少しずつ増やす。「今日からたくさん」ではなく、続けられる範囲から始める。それでいいんです。
そして、転ばないように椅子や壁など支えのある場所で行うこと。心臓や関節、腎臓などに持病がある方は、始める前に必ず医師に相談してください。
[内部リンク: 関連記事 – フレイル予防のために今日からできること]
親の歩幅が狭くなったあの日、私は「年だから」と諦めかけました。
でも、指輪っかテストを一緒にやってみて、少し食事を変えて、テレビを見ながらかかと上げをする。そんな小さなことの積み重ねで、体は応えてくれるのだと知りました。
筋肉は、いくつになっても育てられるといわれています。
だからこそ、今日の一回のスクワットが、明日の一歩を支えてくれる。焦らず、無理せず、そう信じて続けていけばいいのだと思いますから。
参考にした情報源
本記事は以下の信頼できる情報をもとに構成しました(詳細はリサーチ資料に基づく)。
- 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「サルコペニアの診断・栄養・運動」
- 日本老年医学会「サルコペニアの人を対象にした運動プログラム(厚労省研究)」
- 東京大学・飯島勝矢 監修の指輪っかテスト資料(自治体フレイルチェック)
- アリナミン製薬・大正製薬などの健康情報 ほか
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断・助言に代わるものではありません。セルフチェックの結果や運動・食事の可否は、持病のある方はとくに、必ず医師にご相談ください。
