犬・猫の膵炎|症状と食事管理のポイント
犬・猫の膵炎|症状と食事管理のやさしい解説
正直に打ち明けますと、私は以前、愛犬が少し吐いたくらいでは「胃が弱っているだけだろう」と様子を見てしまうことがありました。
でも、犬や猫の膵炎(すいえん)について調べていくうちに、その「様子見」が危ないこともあると知ったんですね。
犬の膵炎は胃腸炎と症状が似ているため、「軽い吐き気」と見過ごしてしまう飼い主が多く、発見が遅れやすいと言われています。
この記事では、犬・猫の膵炎の症状と原因、そして食事管理による再発予防を、動物病院や獣医療情報をもとに、できるだけやさしく整理してみます。

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⚠ 本記事は一般的な情報であり、診断・治療の代わりにはなりません。愛犬・愛猫に異変を感じたら、必ず動物病院・獣医師に相談してください。急性膵炎は短時間で重症化し、命に関わることがあります。
膵炎とは何か — 膵臓が自分自身を消化してしまう病気
まず、膵炎がどういう病気なのかを押さえておきたいんですね。
膵臓は、消化酵素の分泌と、インスリンの分泌(血糖の調整)を担う臓器です。
膵炎とは、その膵臓が分泌する消化酵素が、なんらかの原因で膵臓の中で活性化してしまい、膵臓や周囲の臓器を自分自身で消化(自己消化)してしまう炎症性の病気です。
炎症が進むと膵臓だけでなく周囲の臓器にも広がり、重症化するとショックや多臓器不全(DICなど)に進み、命に関わることがあります。
膵炎には、突然発症して強い炎症を起こす「急性」と、軽い炎症を持続的に繰り返す「慢性」があります。繰り返すうちに膵臓の機能が低下し、糖尿病を併発するリスクもあるとされています。
犬と猫では、膵炎の顔つきが違う
膵炎で難しいのは、犬と猫でずいぶん性格が違うことなんですね。
犬は原因が比較的はっきりしていて、嘔吐や腹痛など典型的な症状が出やすいです。
一方の猫は、約95%が特発性(原因不明)で、症状が乏しく「沈黙のうちに進行」しやすいと言われています。
主な違いを表にまとめてみます。
| 項目 | 犬 | 猫 |
|---|---|---|
| 原因 | 比較的明確(肥満・高脂肪食・内分泌疾患など) | 約95%が特発性(原因不明) |
| 病型 | 急性が問題になりやすい | 約90%が慢性膵炎、急性はまれ |
| 症状 | 典型的(元気消失・嘔吐・強い腹痛など) | 非典型で微妙(あまり動かない・丸くなる・食欲不振・体重減少) |
| 診断 | やや診断しやすい(cPL+症状) | さらに困難(健康な猫でもfPLが高値のことがある) |
| 併発 | — | 三臓器炎(膵炎+胆管炎+IBD)になりやすい |
猫の「三臓器炎(トライアディティス)」
猫は解剖学的に、膵管と胆管がつながっています。
そのため膵炎が胆管に波及しやすく、炎症性腸疾患(IBD)や胆管炎(胆管肝炎)を併発した状態になりやすいんですね。これを三臓器炎(トライアディティス)と呼びます。
膵炎の半数が三臓器炎を併発していたという報告もあるそうです。
猫は症状が乏しいぶん、食欲・活動性・体重といった微妙な変化に気づけるかどうかが、早期発見の鍵になります。
どんな症状が出るのか — 「祈りのポーズ」に注意
では、具体的にどんなサインが出るのでしょうか。
犬でよく見られる症状は、複数の情報源で共通しています。
- 繰り返す嘔吐、食欲不振、元気がない(元気消失)
- 下痢、血便、腹痛、発熱、体重減少
- 重症化すると、ショックや多臓器不全へ進行することもある
なかでも特徴的なのが「祈りのポーズ(お祈りのポーズ)」です。
腹痛のために前足を伸ばして胸から前半身を床につけ、お尻を高く持ち上げる姿勢のことなんですね。急性膵炎で見られることが多い、特徴的なサインとされています。

猫の場合は、もっと分かりにくいです。
- 無気力・食欲不振・体重減少・嘔吐・黄疸・脱水・多飲多尿
- 丸くなってじっとする、触られるのを嫌がる
こうした微妙な変化が中心で、なかにはまったく症状が出ない猫もいるそうです。
だからこそ、「少しおかしいな」と感じたら早めに受診する。それが猫では特に大事になります。
原因とリスク要因 — 人間の脂っこい食べ物が引き金に
膵炎の話で、飼い主として一番心に留めておきたいのがここだと思うんですね。
引き金の代表が、人間の脂っこい食べ物です。
高脂肪の食事は膵臓に過剰な負担をかけ、消化酵素が過剰に分泌されて膵炎を招きやすくなります。豚バラなどの脂身、揚げ物、加工肉のおすそわけや拾い食いがきっかけになることが多いんですね。
臨床では、ごく少量の人間の食べ物が再発の引き金になった例も多く報告されているそうです。「ほんの一口くらい」が、思わぬ結果につながることがあるわけです。
そのほかのリスク要因としては、次のようなものが挙げられています。
- 肥満、高齢(中〜高齢)、腹部の外傷
- 高脂血症(脂質代謝の異常)
- 高カルシウム血症・尿毒症・感染症・免疫介在性疾患・薬物投与
犬では、中高齢の肥満した雌犬に多いとされています。
ミニチュア・シュナウザーは要注意の犬種
犬種によって、なりやすさに差があるという点も知っておきたいところです。
ミニチュア・シュナウザーは、遺伝的に脂質代謝に関わる遺伝子の異常を持つことが多く、高脂血症から胆石症・膵炎・糖尿病を発症しやすい好発犬種とされています。
ヨークシャー・テリアなど小型犬の記載もありますが、根拠が最も強いのはシュナウザーだという整理になります。
診断 — 血液検査と超音波を組み合わせる
膵炎の診断は、ひとつの検査だけで確定しにくいのが実情です。
中心になるのは、膵臓に特有のリパーゼを調べる血液検査です。
- 犬は「Spec cPL(犬膵特異的リパーゼ)」。院内の迅速キット「スナップ・cPL」(IDEXX)は、Spec cPLと同じ抗体・抗原技術を使い、短時間で高精度の結果が得られます。
- 猫は「Spec fPL / fPLI(猫膵特異的リパーゼ免疫活性)」。膵炎診断で最も感度・特異度が高い検査とされます。
ただし、猫のfPLには注意点があります。
最も感度・特異度が高いとされる一方で、健康な猫でも高値になることがあるんですね。ですから、単独では確定できず、画像検査や症状と合わせた総合判断が必要になります。
画像検査としては、腹部超音波(エコー)で膵臓の腫大・壊死・膵管の拡張・腫瘍などを確認します。レントゲンも併用されます。
つまり、症状・血液検査・画像検査を組み合わせて総合的に判断する。これが膵炎の診断の基本です。
緊急対応と入院治療 — 治療の柱は「輸液」
急性膵炎は、わずかな時間で重症化しうる病気です。
治療の中心になるのは、輸液(点滴)です。血圧の低下や循環不全による悪化を防ぎ、脱水と電解質を補正するために行われます。
食欲がなく、嘔吐や下痢がある場合は、入院して24時間の輸液を行うこともあります。
対症療法として、鎮痛薬(痛み止め)や制吐剤(吐き気止め)が使われ、必要に応じて抗菌剤やタンパク質分解酵素阻害薬も投与されます。重症のときは、低分子ヘパリンや輸血が検討されることもあります。
食事については、近年で考え方が少し変わってきているんですね。
かつては膵臓を休めるために絶食が一般的でしたが、最近の資料では早期に食事を再開するメリットが挙げられています。低脂肪食を用い、必要に応じて経腸栄養チューブを設置することもあるそうです。
もっとも、絶食か早期給餌かは、重症度・嘔吐の有無・獣医師の判断で変わります。ですから「必ず絶食」とも「必ず早期給餌」とも決めつけず、獣医師の指示に従うのが正解だと思います。
なお、慢性膵炎の猫には、ステロイドやシクロスポリンなどの免疫抑制薬が使われることがあります。
回復後の食事管理 — 低脂肪の療法食が基本
ここが、この記事でいちばんお伝えしたかった「食事管理」の話です。
回復後の基本は、低脂肪で消化しやすい食事です。
脂肪は膵臓の消化酵素の分泌に関わるため、高脂肪食は膵臓に負担をかけます。そこで、市販の療法食は脂肪含有量8%以下を目安に選ぶとされています。
ただし、この8%という数値は、緩和ケア系の情報源が示す目安値です。製品や個体によって適した基準は異なるので、獣医師と相談のうえで選んでください。
与え方にもコツがあります。
- 1日3〜4回に分けて、少量ずつ与える
- 1回量を抑えて、膵臓への負担を軽くする
手作り食の定番食材としては、低脂肪で消化性のよい鶏ささみや、イモ類が挙げられています。
急性膵炎が完全に治癒すれば通常食に戻せる場合もありますが、低脂肪の療法食を続けることが推奨されるケースも多いです。

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与えてはいけない、高脂肪の人間の食べ物リスト
再発予防のために、特に避けたい高脂肪の人間の食べ物をまとめます。
- 脂身の多い肉(豚バラなど。皮付きの鶏肉、脂の多い赤身肉。豚バラなどは「厳禁」とされます)
- 加工肉(ベーコン・ソーセージ・ハムなど。塩分・脂肪が高い)
- 揚げ物・炒め物(フライドポテト、天ぷらなど)
- 高脂肪の乳製品・油脂類(バター、生クリーム、チーズ、オイル類)
- 脂ののった魚(まぐろのトロ、トロサーモン)
- スナック菓子・焼き菓子、ピザ・ハンバーガーなど
- ナッツ類

なお、これらは「高脂肪だから膵炎リスクを高める」食品です。
これとは別に、玉ねぎ・ネギ類、チョコレート、ブドウ・レーズン、キシリトールなどは、犬・猫にとって中毒性があるため、量に関わらず与えてはいけません。膵炎とは別の話ですが、あわせて気をつけたい点です。
再発を防ぐために、飼い主ができること
最後に、再発予防の柱を整理しておきます。
再発のリスク要因は、高脂肪食、急な食事変更、人間の食べ物のおすそわけ、肥満、そして高脂血症です。
裏を返せば、日々の体重管理と、高脂血症などの関連疾患を早めに見つけることが、予防の柱になるわけですね。
- 低脂肪の食事を守る
- 人間の食べ物を安易に分け与えない
- 食事を変えるときは急がず、少しずつ
- 体重を管理し、定期的に健康チェックを受ける
こうした地道な積み重ねが、愛犬・愛猫を守ることにつながります。
膵炎について調べていて、私がいちばん強く感じたのは、「ほんの一口」の重みでした。
食卓の脂っこい一切れを分けてあげることが、愛情のつもりでも、膵臓には大きな負担になりうる。そのことを知っているかどうかで、できることは変わってくると思うんですね。
そして、犬の「祈りのポーズ」も、猫の「なんとなく元気がない」も、体からの静かなサインです。
最後にひとつだけ付け加えるなら、迷ったら様子見せず、動物病院に相談する。急性膵炎は短時間で重くなることがありますから、早めの一歩が、いちばんの備えになりますから。
参考にした主な情報源
- ARKRAY「イヌやネコにおける、急性膵炎の基礎知識」(2024)
- アニコム損保 みんなのどうぶつ病気大百科「膵炎<犬>/<猫>」
- 吉田動物病院「犬・猫の膵炎とは?」
- IDEXX Japan「スナップ・cPL/スナップ・fPL」検査キット解説
- つだ動物病院「犬の急性膵炎について」
- 鳥取大学 動物医療センター「犬種特異的な脂質代謝異常について」
- 渓谷動物病院「ミニチュアシュナウザーの高脂血症について」「犬と猫の膵炎とは?」
- よつばアニマルクリニック「犬と猫の膵炎について」
- 犬と猫の緩和ケア「犬の膵炎の食事療法・栄養管理|低脂肪食」
- PS保険「猫の膵炎の症状と原因、治療法」ほか
