子宮腺筋症の症状とは|強い月経痛・過多月経と治療法

子宮腺筋症の症状とは|強い月経痛・過多月経と治療法

正直に申し上げると、私も長いあいだ「生理痛は我慢するもの」だと思い込んでいました。

でも、毎月の痛みが年々ひどくなる。鎮痛薬が効きにくくなる。経血の量が増えて、立ちくらみまでする。もしそんな変化があるなら、それは「体質」ではなく、子宮腺筋症のような病気のサインかもしれないのです。

子宮腺筋症は、決して珍しい病気ではありません。それでも名前を初めて聞く方は多いのではないでしょうか。この記事では、子宮腺筋症とはどんな病気なのか、強い月経痛や過多月経といった症状、そして治療の選択肢までを、婦人科の情報にもとづいて静かに整理していきます。

読み終えるころには、「これは受診したほうがいいのかもしれない」という判断の手がかりが、少しは持てるはずです。

通常の子宮の壁と、内膜に似た組織が筋層に入り込んで壁が厚くなった子宮腺筋症の状態を並べたイメージ図

子宮腺筋症とは?子宮の壁が厚くなる病気

子宮腺筋症とは、本来は子宮の内側(内腔)にあるはずの「子宮内膜に似た組織」が、子宮の筋肉の層(筋層)の中に入り込んで増殖し、子宮の壁が厚く・大きくなる病気です。エストロゲンという女性ホルモンに依存する、良性の疾患だと説明されています。

似た名前に「子宮筋腫」がありますが、少し違います。子宮筋腫がはっきりした「こぶ」の塊をつくるのに対し、子宮腺筋症は病変と筋肉の境界が不明確で、壁全体がぼんやりと厚くなることが多いのです。

もうひとつ、混同しやすいのが「子宮内膜症」です。こちらは子宮の外側、つまりお腹の中に内膜組織ができる病気です。場所は違うのですが、同じくエストロゲンに反応して悪化しやすく、子宮腺筋症と合併することも少なくありません。

何歳ごろに多いのか

数字で見ると、患者さんの姿が少し見えてきます。

  • 診断されたときの平均年齢は約38.2歳
  • 患者さんの約80%が40〜50代で、40歳未満は約20%

一般には30代後半から症状が目立ってくる傾向があるとされます。ただし近年は、20代で診断される例も増えているという指摘もあります。

ここで少し補足しておきますと、「40〜50代が中心」という数字は診断された患者さんの構成を表したもの、「30代後半から症状が顕著」という説明は発症・症状が表に出てくる時期を述べたものです。矛盾しているように見えて、実は語っている角度が違うのですね。

主な症状 — 「ただの生理痛」では片づけられないもの

子宮腺筋症の症状は、個人差がとても大きい病気です。無症状に近い方もいれば、日常生活に支障が出るほどつらい方もいます。

代表的な症状を挙げます。

  • 強い月経痛(月経困難症):子宮内膜症と同じように強く、年齢とともに悪化しやすい
  • 過多月経:経血量が非常に多く、レバー状の塊が出ることもある
  • 鉄欠乏性貧血:長く続く過多月経の結果として。重症例ではヘモグロビン値が4〜6g/dLまで下がった報告もある
  • 慢性的な下腹部痛・腰痛:月経のとき以外にも続くことがある
  • 不正出血
  • 子宮が大きくなることによる圧迫症状(頻尿・便秘・下腹部の張り)

とくに気になるのが、過多月経からくる貧血です。動悸や息切れ、立ちくらみを「疲れのせい」と片づけているうちに、実は体がかなり無理をしていた、というケースもあります。重症例では血栓症の報告もあるとされ、軽く見てよい症状ではないのですね。

月経のつらさで体調がすぐれず、ソファで体を丸めて休む女性
Photo: Sora Shimazaki / Pexels

どうやって診断するのか

「気になるけれど、病院では何を調べるのだろう」——そう不安に思う方もいるかもしれません。診断の流れをざっと知っておくと、受診のハードルは少し下がります。

診断は、おおむね次のような検査を組み合わせて行われます。

  1. 問診・内診(必要に応じて直腸診):子宮の大きさや可動性、圧痛、周囲との癒着を確認する
  2. 経腟超音波検査(エコー):子宮筋層の厚みを観察する。子宮筋腫との見分けどころは、病変の辺縁がぼんやりしていること
  3. MRI:超音波より感度・特異度が高い。病変の位置や広がりを評価し、子宮筋腫との鑑別、そして悪性(子宮肉腫など)の除外にも使われる

MRIまで進むと聞くと身構えてしまうかもしれませんが、これは「悪いものではないと確かめる」ための大切な過程でもあります。場合によっては、子宮内膜の細胞診による悪性のスクリーニングがすすめられることもあります。

治療の選択肢 — 「閉経まで、どうコントロールするか」

治療の話に入る前に、ひとつ知っておきたい前提があります。

子宮腺筋症はエストロゲン依存性の病気なので、閉経を迎えるとホルモンの影響が減り、病変が縮小して症状もほぼ消えていくことが多いのです。つまり治療は「閉経までの期間を、どう快適に過ごすか」という発想が軸になります。症状が強くてもホルモン療法で閉経まで持ち込めれば、その後は治療が不要になりうる、という考え方もあります。

治療方針は、症状の強さ・年齢・妊娠を希望するかどうか・貧血の程度によって、一人ひとり変わります。無症状〜軽症なら、経過観察(治療せずに定期的に様子を見る)で十分なこともあります。

薬による治療(子宮を残す方法)

生殖年齢の女性では、薬でコントロールする方法が中心になります。

  • 低用量ピル(LEP/OC):月経痛や過多月経をやわらげる
  • ミレーナ(黄体ホルモンを放出する子宮内システム/LNG-IUS):過多月経・月経痛に有効。妊娠を希望する方の管理の選択肢にもなる
  • ジエノゲスト(内服の黄体ホルモン製剤):過多月経・月経痛・慢性的な痛みに有効。ただしタイプによっては不正出血を起こしやすい「易出血性」の場合もある
  • GnRHアナログ(注射・点鼻):一時的に閉経に近い状態をつくって病変を縮小させ、貧血を改善する。長期使用は骨量の低下などの副作用があり、期間に制限がある
  • 鉄剤・止血剤:貧血や出血への対症療法

GnRHアナログで子宮を縮小・貧血を改善してからジエノゲストへ切り替える「Sequential療法」という方法もあり、比較的良好な報告があるとされています。

手術という選択肢

薬では十分でないとき、あるいは症状が強いときには、手術が検討されます。

  • 子宮を温存する方法:子宮動脈塞栓術(UAE)、マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)、腺筋症病巣核出術など
  • 根治的な手術子宮全摘術(開腹・腹腔鏡下・腟式)。妊娠を希望せず、症状が強く、薬物療法で不十分な場合の選択肢

どの方法が合うかは、本当に人によって違います。だからこそ、次に触れる「妊娠の希望」が、方針を大きく左右するのですね。

妊娠・不妊への影響が気になる方へ

「将来、子どもを持ちたい」と考えている方にとって、この病気と妊娠の関係は切実な問題だと思います。

子宮腺筋症があるからといって、必ず不妊になるわけではありません。ただし、早産や流産などのリスクが増える可能性があり、慎重な管理と観察が必要だとされています。

妊娠を希望する場合は、ジエノゲストやミレーナで症状・病変をコントロールしながら妊娠の時期を計るなど、専門医と相談して方針を立てていくことになります。体外受精などの生殖医療と組み合わせる例もあり、専門の施設で相談することがすすめられています。

正直、簡単な話ではありません。それでも、選択肢がいくつも用意されている病気でもあるのです。

こんなときは、婦人科を受診してください

最後に、受診の目安を整理しておきます。以下にひとつでも当てはまるなら、放置しないでいただきたいと思います。

  • 鎮痛薬が効かないほど月経痛が強い、または年々悪化している
  • 経血量が非常に多い、レバー状の塊が続く、貧血症状(動悸・息切れ・立ちくらみ)がある
  • 月経のとき以外にも下腹部痛や腰痛が続く

これらは、子宮腺筋症に限らず、いくつかの婦人科の病気に共通するサインです。自己判断はせず、婦人科(産婦人科)の専門医を受診してください。 診断や治療方針は、検査をふまえて医師が決めるものです。この記事は一般的な医学情報であり、診察の代わりにはなりません。


「生理痛は、みんな我慢しているものだから」。

そう自分に言い聞かせてきた時間が、私にも、そしてこの記事を読んでくださっている方にも、きっとあると思います。でも、痛みが年々強くなっているのなら、それは体が静かに送っているサインなのかもしれません。

つらさを数値や言葉にして、専門医に伝えてみる。たったそれだけで、道が開けることがあります。あなたの体のことをいちばん正確に知る手がかりは、我慢の先ではなく、診察室の側にあるのですから。

[内部リンク: 関連記事 – 過多月経と貧血、鉄不足のセルフケア]

参考にした情報源

  • 日本産婦人科医会「Adenomyosis:子宮腺筋症」「子宮腺筋症への対応」
  • 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ(厚生労働省研究班監修)「子宮腺筋症」
  • 日本内分泌学会「子宮腺筋症|一般の皆様へ」
  • 東京大学医学部附属病院「子宮腺筋症外来」/徳洲会グループ「産婦人科の病気」

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