黄昏泣き(乳児疝痛)の原因と対処法|親のケアと受診の目安

黄昏泣き(乳児疝痛)の原因と対処法|親のケアと受診の目安

正直に申し上げると、私も「夕方になると火がついたように泣く」という話を、最初はただの気のせいだと思っていました。

でも、黄昏泣き(乳児疝痛・コリック) には名前があり、国際的な診断の基準まであるんですね。健康で体重もきちんと増えている赤ちゃんが、はっきりした理由もなく、決まって夕方以降に何時間も泣き続ける。これは決して珍しいことではありませんし、多くは生後3〜4か月までに自然に消えていきます

この記事では、黄昏泣きの定義と診断基準、原因説の「確からしさ」、根拠のある対処法とそうでない対処法、そして何より泣き止まないときに親が自分を守る方法と受診が必要な危険サインを整理しました。

先にお伝えしておきます。ここに書いたのは一般的な情報の整理であって、診断や治療の代わりにはなりません。気になる症状があれば、必ず小児科を受診していただければと思います。

Photo: Ron Lach / Pexels

黄昏泣き(乳児疝痛)とは何か

乳児疝痛は、MSDマニュアル プロフェッショナル版で「健康な乳児でみられる、原因の特定できない、頻回かつ長時間の啼泣」と定義されています。日本では「黄昏泣き」「夕暮れ泣き」と呼ばれることが多いですね。

ここで一つ、意外に思われるかもしれない点があります。

「コリック(疝痛)」という言葉はお腹の痛みを示唆しますが、実際に痛みがどこから来ているのかは分かっていないと明記されているんですね。

つまり名前が原因を語っているわけではないのです。特徴は、日中または夜間のほぼ同じ時間帯(特に夕方以降)に泣き続けること。そして栄養状態は良好で、体重増加も通常は順調であることです。

オレンジ色の壁にかかったシンプルな掛け時計。黄昏泣きは日中または夜間のほぼ同じ時間帯(特に夕方以降)に起こりやすい
Photo: Pedro Pacheco / Pexels

Wessel「3の法則」から Rome IV へ

診断基準には二つの流れがあります。ここは混同されやすいところなので、分けて書きます。

Wessel「3の法則」(1954年・古い基準)

項目 基準
1日の泣く時間 3時間を超える
週の頻度 週3日を超える
継続期間 3週間を超える
対象 それ以外は健康な乳児

Rome IV 基準(現行の国際基準)

  1. 症状の開始と終了がいずれも生後5か月未満であること
  2. 明らかな原因なく、反復・長時間にわたる泣き・ぐずり・不機嫌があり、養育者が予防も解決もできないこと
  3. 体重増加不良・発熱・疾患の所見がないこと

Rome IV の委員会は、Wessel の「3・3・3」を恣意的で文化依存的、実務的でなく、家族への影響を反映していないとして置き換えました。

ですから、「1日2時間50分だから黄昏泣きではない」といった時計の話ではないわけです。本質は「原因不明で、なだめても収まらない泣きが繰り返される」ことと、「ほかに病気の所見がない」こと。ただし臨床研究では今も3時間ルールが使われることがあり、両方の基準が併存しているのが実情です。

Wessel「3の法則」とRome IV基準の比較表 ― 1日3時間超・週3日超・3週間超の旧基準と、生後5か月未満・原因不明の反復する泣き・体重増加不良や発熱がないという現行基準

いつ始まって、いつ終わるのか

親にとっていちばん知りたいのは、たぶんここだと思います。

項目 内容
泣きが増え始める時期 生後2〜3週ごろ
ピーク 生後6週〜2か月ごろ(1日約3時間)
消失 12週までに60%、16週までに90%
遅い場合 4〜6か月まで続くことがある

頻度は報告によって幅が大きく、海外の研究では乳児の3〜28%とされています(研究ごとの定義の違いが大きいためです)。米国小児科学会の一般向け解説では「およそ5人に1人」という表現が使われています。なお、日本国内の有病率についての統計は確認できませんでしたので、ここでは海外のデータとして扱っています。

もう一つ、親向けの説明枠組みとして PURPLE Crying という考え方があります。日本の自治体や小児科クリニックの啓発でも使われているものです。

  • P(Peak of crying)生後2週ごろから増え、生後2か月ごろピーク
  • U(Unexpected)泣く理由が予想できない
  • R(Resists soothing)なだめても泣き止まない
  • P(Pain-like face)痛くなくても痛そうな表情で泣く
  • L(Long lasting)長く続く(1日合計5時間泣くことも)
  • E(Evening)午後〜夕方に多い

「なだめても泣き止まない」ことが、異常ではなく正常な発達の一部として想定されている。この一行だけでも、少し肩の力が抜けるのではないでしょうか。

生後週数ごとの泣きの経過グラフ ― 生後2〜3週から増え始め、6週〜2か月に1日約3時間のピーク、12週までに60%・16週までに90%が消失

原因は何か — 「ガスが原因」と言い切れない理由

ここが、日本語のネット記事といちばん食い違うところかもしれません。

乳児疝痛には、単一の確定した原因がありません。

挙げられている仮説は複数あります。腸管内ガスの増加、腸の運動異常、内臓知覚過敏、腸内細菌叢の変化、授乳手技の問題、神経系・消化管の未熟さ、睡眠の乱れ、感覚刺激の過剰、食物アレルギー、牛乳たんぱく不耐、胃食道逆流、母親の食事、母親の喫煙やニコチン曝露。国内の小児科の解説でも、食物アレルギー・腸管の未熟性・腸内細菌叢の乱れなどが挙げられています。

ただ、それぞれ根拠の強さがまるで違うんですね。

仮説 位置づけ 根拠の強さ
腸内細菌叢の乱れ プロバイオティクス介入試験で母乳児に効果 → 間接的に支持
消化管・神経系の未熟さ/腸管ガス 最も一般に説明される機序。ただし痛みの由来部位は不明 弱〜中
牛乳たんぱくアレルギー・不耐 加水分解乳で一部の児の泣きが減る(該当は少数)
母親の食事(乳製品・カフェイン等) 除去して変化を見る価値はある
喫煙・受動喫煙 発症頻度上昇の報告あり
胃食道逆流 PPIによる治療はプラセボと差なし
両親のストレス・育て方 国内小児科は「原因ではない」と明言 否定される

「未熟な消化管にガスがたまるのが原因」という説明は、日本の一般向け記事でいちばん流通していると思います。ただ一次資料に当たると、関与すると考えられてはいるものの、確定していないというのが正確な書き方になります。

そして、もう一つ大事なことを。

育て方のせいではありません。

性別・人種・社会経済状況・栄養方法(母乳かミルクか)・出生順位のいずれとも関連が見られない、と報告されています。国内の小児科クリニックも「原因はご両親の育て方などではない」「やがて自然になくなる」と明記しているんですね。

対処法 — 根拠のあるもの、根拠が弱いもの

MSDマニュアルは、物理的な方法や食習慣の変更を試してよいとしつつ、反応はさまざまであり、疝痛を解消させる唯一の手立ては通常「時間」だけとしています。

こども家庭庁も「それぞれの赤ちゃんに合った方法があるので、いろいろ試してみて」という表現を使っています。つまり万能の方法はなく、試して合うものを見つけるのが現実的なところなんですね。

各機関が挙げているなだめ方

方法 具体 注記
抱っこ・スキンシップ 抱いてあやす、抱っこ紐やスリングで歩く 各機関が広く推奨。根拠は経験的
揺れ・動き 揺り椅子、ベビーカー、車での移動、肩に担いでゆっくり 必ず頭と首を支え、激しく揺すらない
おしゃぶり pacifier AAP・MSD・StatPearlsが挙げる
やわらかな背景音 掃除機や乾燥機の音、ホワイトノイズ AAP・MSD・NHSが挙げる
授乳姿勢の工夫 授乳中は赤ちゃんを立て気味に保つ NHSが明記
げっぷ 授乳のあとにげっぷをさせる NHSが明記
ぬるめの入浴 warm bath NHS・StatPearls
刺激を減らす 静かな部屋に移動、照明を落とす MSD・StatPearls・国内小児科
授乳リズム 通常どおりの授乳を続ける NHS

ホワイトノイズについては「やわらかな背景音」として挙げられているだけで、具体的な音量や距離の基準は一次資料で確認できませんでした。ネット上には数値を挙げた解説もありますが、ここでは断定を避けます。

明るい部屋で、赤ちゃんを腕に抱えてそっと支える親の手元。抱っこやスキンシップは各機関が広く挙げるなだめ方
Photo: Sarah Chai / Pexels

おなかのマッサージと、足の自転車こぎ

この二つは日本の育児情報で定番ですが、根拠の扱いには注意が要ります。

おなかのマッサージは、大腸の走行に沿って右下腹部 → おへその周りを時計回り → 左下腹部へと大きくなでる方法です。おへその周りに「の」の字を描くやり方も同じ考え方ですね。腸の動きを促すことをねらったもので、満腹時は避ける(嘔吐を誘発しないため)のが基本。入浴後や、機嫌のよい起床後などが勧められています。

エビデンスはどうかというと、乳児マッサージの系統的レビューでは泣き行動や睡眠の改善を報告した研究がある一方、質が中程度で、乳児用に検証されていない評価尺度を使った研究もあるとされ、限定的な評価にとどまっています。StatPearls もやさしい腹部マッサージを「快適化手段(comfort measure)」に分類していて、これは治療ではなく慰安という位置づけなんですね。

足の自転車こぎは、あおむけの赤ちゃんの両脚をやさしく持ち、交互に曲げ伸ばしする方法です。赤ちゃんは腹筋が弱いため、脚を動かすことが腹部への刺激になる、という説明がされています。

ただ、こちらはRCT(ランダム化比較試験)レベルの根拠が確認できませんでした。

ですから、「ガスを出してあげる方法」と言い切るのではなく、安全に試せるけれど、確実に効くという強い証拠はまだない方法として受け取っていただくのが正確です。合う赤ちゃんもいれば、そうでない赤ちゃんもいる、というくらいの距離感ですね。

おくるみ(スワドル)— 効くこともあるが、危険も報告されている

おくるみは、AAP・MSD・国内の小児科がなだめ方の一つとして挙げています。一方で StatPearls は「swaddling is controversial(股関節形成不全のリスクのため議論がある)」と明記しているんですね。

そして日本では、実際に重大な事例が報告されています。

日本小児科学会の Injury Alert(傷害速報)No.145「スワドル使用中の心肺停止」では、生後4か月からスワドル(袖の取り外し可能なタイプ)を使用していた児が、生後6か月時、両側の袖を外していない状態でベビーベッドにあおむけで寝かされ、約20分後にうつぶせで心肺停止の状態で発見されたと報告されています。

推奨と危険は、必ずセットで知っておく必要があるわけです。安全に使うための要点は次のとおりです。

  • 寝返りができるようになったら使用をやめる(うつぶせになると窒息の危険)
  • 脚を強くまっすぐ巻かない(乳児股関節脱臼のリスク。M字開脚ができる余裕を残す)
  • 首元は指2本分の余裕を持たせ、胸が自然に上下できるか確認する
  • 熱がこもりやすいので室温18〜22℃を目安に、背中や首の後ろの汗をこまめに確認する

あわせて、こども家庭庁が示す安全な睡眠環境(SIDS対策)も外せません。

  • 1歳になるまでは、寝かせるときはあおむけに
  • 無理のない範囲で母乳育児を
  • たばこをやめる(妊娠中の喫煙・受動喫煙も要因)
  • 寝具は身体が沈まない硬めで平坦な布団・マットレス
  • 1歳までは掛け布団を避け、スリーパー等を使う
  • 寝床にぬいぐるみ・タオルを置かない
  • 添い寝には危険性がある(特に薬の服用時、飲酒時、早産児の場合は注意)

SIDS(乳幼児突然死症候群)は、何の予兆や既往歴もないまま乳幼児が死に至る原因の分からない病気で、窒息などの事故とは区別されます。令和6年(2024年)には55名の乳児が亡くなり、乳児期の死亡原因の第3位でした。こども家庭庁は毎年11月をSIDS対策強化月間としています。

おくるみの安全チェック(寝返りが始まったらやめる・脚は自由に・首元は指2本分・室温18〜22℃)と、安全な睡眠環境(あおむけ寝・硬めで平坦な寝具・掛け布団やぬいぐるみを置かない)をまとめた図解

関連記事 – 赤ちゃんの安全な睡眠環境とSIDS対策

「5S」という枠組みについて

日本語圏でよく紹介される「5S」(Swaddle/Side-stomach position/Shush/Swing/Suck)は、医師による一般向けのメソッドです。

調べた範囲では、こども家庭庁・NHS・AAP・MSD・StatPearls のいずれも「5S」という名称では推奨していませんでした。ただし、おくるみ・シューという音・揺れ・おしゃぶりといった個々の要素は、それぞれの推奨リストに入っています

一点だけ強く申し添えます。「Side/stomach position(横向き・うつぶせ)」は、あくまで大人が見ている起きている時間に、あやしている間の話です。寝かせるときは必ずあおむけ。ここはSIDS対策と矛盾させてはいけないところですので。

プロバイオティクス(L. reuteri)は効くのか

サプリメントの話になると、途端に情報が割れます。ここは両方を書きます。

有効とする側(米国小児科学会誌 Pediatrics 2018、Sungらのメタ解析)

項目 結果
対象 二重盲検RCT 4試験・乳児345人
21日目の泣き・ぐずり時間 プロバイオティクス群が平均25.4分短い
21日目の治療成功 約2倍
母乳育児児のNNT 2.6
ミルク育児児 効果は有意でなく、データ不足で結論できない

エビデンスなしとする側(NHS)

英国のNHSは、「コリック用の点滴薬、ハーブサプリメント、プロバイオティクス製剤は、コリックに効くというエビデンスがない」として推奨していません。同じ菌株のRCTで有益性が示されなかった報告もあり、系統的レビューでは泣き時間についてのエビデンスの確実性が「very low」、治療成功でも「low」と評価されています。

つまり、米国小児科学会誌のメタ解析は「母乳育児児には有効」、英NHSは「エビデンスなし」。見解が真っ二つに割れているわけですね。

ですから、使うか使わないかを記事が決めることはできません。使う前に必ず小児科医に相談する、というのがここでの結論になります。

そのほかの手段については、StatPearls の評価が参考になります。

  • シメチコン(ガス抜き薬):結果が一貫せず、ほとんど無効
  • ジサイクロミン(鎮痙薬):危険(呼吸抑制・無呼吸・けいれん)。生後6か月未満は禁忌
  • PPI(胃酸分泌抑制薬):プラセボと差なし
  • 乳糖不使用ミルク・ショ糖・ハーブ療法・ホメオパシー・カイロプラクティック・鍼:有効性は未証明
  • 加水分解乳:牛乳アレルギーのある一部の児では泣きが減る(modest evidence)。ただし高価

NHSはさらに、「脊椎マニピュレーションやクラニアル・オステオパシーは、エビデンスがなく害を及ぼす可能性があるため避ける」と明記しています。

母乳育児中のお母さんが自己流で長期の除去食を始めることも勧められません。恩恵を受けるのは少数とされていますし、栄養不足のリスクがありますので、必ず医師に相談してからにしてください。

泣き止まないとき、親が壊れないために

ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。

こども家庭庁は「赤ちゃんが泣きやまない 〜泣きへの理解と対処のために〜」という約11分の動画を制作・公開しています。伝えているのは、赤ちゃんの泣きには特徴とピークがあること赤ちゃんは泣いてあたり前で、泣いても誰が悪いわけでもないこと、そして泣きやませるために激しく揺さぶったり口をふさいだりしてはいけないことです。

そのうえで、こう助言されています。

「赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、その場を離れて、自分がリラックスしましょう」

AAPも同じことを言っています。赤ちゃんをベビーベッドなど安全な場所にあおむけで寝かせ、数分間その部屋を離れてもかまわない(it’s OK)、と。

具体的には、こういう手順になります。

  1. 赤ちゃんをベビーベッドなど安全な場所に、あおむけで寝かせる
  2. 部屋を出て、ドアを閉める
  3. 深呼吸する。数分でいい
  4. 落ち着いたら戻って、赤ちゃんの様子を確認する

泣かせたまま離れることに罪悪感を覚える方もいらっしゃると思います。でも、公的機関が明確に「離れていい」と言っているんですね。抱え込んで限界を超えるより、ずっと安全なのです。

絶対に揺さぶらない — 乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)

危険なのは、頭が前後に激しく揺さぶられる状態です。適切に支えたうえでの通常のあやしは安全とされています。

赤ちゃんを激しく揺さぶると首がムチのようにしなり、頭の中で出血を起こして重大な後遺症が残る可能性があり、最悪の場合は死に至ります。

StatPearls も、乳児疝痛は母親の産後うつおよび揺さぶられっ子症候群のリスクと関連するとしたうえで、「つらくてどうしようもないときはベビーベッドに安全に寝かせる」という親への教育が損傷予防に決定的だと述べています。

対処法の一覧より、この一行のほうが大事かもしれません。泣き止ませられなくても、あなたは失敗していません。

白いベビーベッドで、あおむけのまま静かに眠る新生児。泣き止まないときは安全な場所にあおむけで寝かせ、少し離れてもよい
Photo: ramon rangel / Pexels

一人で抱えないための相談先

NHSは、「あなたが対処しきれないと感じているなら、かかりつけ医に相談を」として、親側の限界も受診理由になると明記しています。これは覚えておいていただきたい一文です。

日本で頼れる窓口を整理しておきます。

窓口 内容
#8000(小児救急電話相談) 夜間・休日に、受診すべきか迷ったとき。医師・看護師が対応
こども家庭センター(市区町村) 保健師・助産師・社会福祉士が継続して支援
産後ケア事業(市町村) 支援が必要と認められれば、市町村から利用を勧められることもある
児童相談所全国共通ダイヤル 189 こども家庭庁が案内

#8000 は、電話から「#8000」をプッシュすると都道府県の相談窓口に転送され、医師や看護師に相談できるサービスです。診断や薬のアドバイスを行うものではなく、「今すぐ受診すべきか、様子を見てよいか」を判断するためのもの。受付時間は都道府県によって異なりますので、お住まいの自治体のページで確認しておくと安心です。

日本小児科学会が監修する「こどもの救急(ONLINE-QQ)」も、症状から受診の目安を確認できます。

受診が必要な危険サイン

黄昏泣きは「病気ではない」ものですが、病気の泣きと見分ける必要があります。次のサインがあるときは、疝痛と決めつけずに受診してください。

  • 嘔吐、特に緑色(胆汁性)または血性の嘔吐、あるいは1日5回以上の嘔吐
  • 血便(血性の下痢)
  • 発熱
  • 呼吸が苦しそう
  • ぐったりして反応が鈍い(嗜眠)
  • 体重が増えない
  • 腹部の膨満・圧痛、触れる腹部のしこり、哺乳困難
  • いつもと明らかに違う泣き方(異常に弱々しい泣き、甲高い泣き)

MSDは鑑別すべきものとして、中耳炎・尿路感染症・髄膜炎などの感染症、虫垂炎・腸閉塞などの外科疾患、食物アレルギー、胃食道逆流、便秘、ヘアターニケット(毛髪が指やつま先に巻き付くもの)、そして虐待を挙げています。

また、血便・繰り返す嘔吐・下痢・体重増加不良を伴う場合は、新生児・乳児消化管アレルギー(食物たんぱく誘発胃腸症)の可能性もあります。主に粉ミルクの牛乳たんぱくが原因となるもので、診断は原因と疑う食物を除去して改善を確認する形で行われます。自己判断でミルクを変えず、必ず医師に相談してください。

特に注意したい — 腸重積症

黄昏泣きと紛らわしく、かつ緊急性が高いのが腸重積症です。

項目 内容
好発 生後3か月〜2歳、特に1歳までの乳児。男児は女児の約2倍
典型症状 間欠的な腹痛(急にぐったり→急に激しく泣くを繰り返す)②嘔吐イチゴゼリー状の粘血便。3つは同時ではなく、この順に時間差で出ることが多い
診断 腹部超音波(エコー)検査が最も確実
治療 高圧浣腸による非観血的整復術で約8割が治る。失敗すれば緊急手術
時間 発症後24時間以内なら注腸法でほとんど治る。整復後24時間以内に約1割が再発するため入院管理

見分けの目安はこうです。黄昏泣きは「泣き続ける」のが特徴。一方、泣く → ぐったりする → また泣く、を数分〜十数分おきに繰り返し、嘔吐や血便が出るときは腸重積症の可能性があります。

このときは様子見をしないでください。夜間でも小児科・小児外科を受診してください。

受診が必要な危険サイン8項目(胆汁性・血性の嘔吐、血便、発熱、呼吸が苦しそう、ぐったりして反応が鈍い、体重が増えない、おなかの異常、いつもと違う泣き方)と、腸重積症の3つの症状をまとめた図

最後に、ひとつだけ

最後に、ひとつだけ付け加えさせてください。

この記事には、たくさんの「まだ分かっていません」が出てきました。原因は確定していない。ガスの説も証明されていない。マッサージも自転車こぎも強い根拠はない。プロバイオティクスは見解が割れている。

正直、書いていて心もとない気持ちになりました。

でも、確実に分かっていることもあるんですね。12週までに60%、16週までに90%が消えること。育て方のせいではないこと。そして、つらいときは安全な場所に寝かせて離れていいこと。

対処法のリストを完璧にこなすことより、あなたが今日を無事に終えることのほうが、たぶんずっと大切です。泣き声の向こうにいる赤ちゃんは、あなたを責めてはいませんから。

判断に迷うサインがあれば、どうか自己判断せず小児科へ。夜間・休日は #8000 もありますので。


参考資料

  • こども家庭庁「【動画】赤ちゃんが泣きやまない 〜泣きへの理解と対処のために〜」/「赤ちゃんが安全に眠れるように」(SIDS対策)/「産後ケア事業について」
  • 日本小児科学会 Injury Alert(傷害速報)No.145「スワドル使用中の心肺停止」/こどもの救急(ONLINE-QQ)「小児救急電話相談 #8000」
  • 国立成育医療研究センター「食物たんぱく誘発胃腸症(消化管アレルギー)」
  • MSDマニュアル プロフェッショナル版「仙痛(コリック)」/StatPearls(NCBI Bookshelf)”Infantile Colic”
  • NHS “Colic”/AAP HealthyChildren.org “Colic”
  • Sung V, et al. “Lactobacillus reuteri to Treat Infant Colic: A Meta-analysis.” Pediatrics 2018;141(1)
  • Effects of Infant Massage: A Systematic Review(Int J Environ Res Public Health, 2022)
  • 徳洲会「小児科の病気:腸重積症」/つだ小児科クリニック「コリック(乳児疝痛、夕暮れ泣き)」

本記事はYMYL(医療)分野の一般的な情報提供であり、個別の診断・治療の代わりにはなりません。危険サインや気になる症状があれば必ず小児科を受診してください。プロバイオティクスなどのサプリメント、ミルクの変更、母親の除去食は、必ず医師に相談してから行ってください。そして、赤ちゃんを絶対に揺さぶらないでください。

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