目薬でもゴロゴロするドライアイ|マイボーム腺は押し出さず温める

目薬でもゴロゴロするドライアイ|マイボーム腺は押し出さず温める

正直に言うと、私は一日に何度も目薬をさしていました。

パソコンに向かって数時間たつと、目がゴロゴロしてくる。
目薬をさすと、そのときは少し楽になる。
でも30分もすると、また同じ乾きが戻ってくるんです。

「目薬が足りないのかな」と思って、さす回数をどんどん増やしていきました。

そんなとき、ネットでこんな説明を目にしました。
「目薬で治らないドライアイは、まぶたの脂の腺が詰まっているから。脂を押し出せば目がうるおう」。

気になって、日本眼科学会のマイボーム腺機能不全診療ガイドライン(2023)やドライアイ診療ガイドライン(2019)まで読んでみたのですが、結論から言うと、この説明は半分だけ正しく、半分は危ういものでした。

まぶたの縁にある「マイボーム腺」の不調が、目薬で良くならないドライアイの主要な原因の一つであることは確かです。
ただし、原因はそれだけではありません。
そして「脂を押し出す」のは、本来眼科で点眼麻酔をして行う処置で、家庭でまねするものではないんです。

この記事では、ドライアイとマイボーム腺の関係、ガイドラインで「強く推奨」されている温罨法(おんあんぽう=まぶたを温めるケア)の具体的なやり方、そして目薬のさしすぎの落とし穴と受診の目安までを、根拠つきで整理します。

「目薬をさしても乾く・ゴロゴロする」の背景を6枚のカードに並べた図解。マイボーム腺機能不全、涙の量が減るタイプ、画面作業・低湿度、コンタクトレンズ、目薬(防腐剤など)、アレルギー性結膜炎をすべて同じ大きさで示している

目薬をさしても乾くのはなぜ?ドライアイの原因は1つではない

まず、ドライアイという病気の定義から確認しておきます。

ドライアイ研究会(2016)の定義はこうです。
「ドライアイは、様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある」。

ポイントは「涙の量」ではなく「涙の膜の安定性」なんですね。
診断基準は、BUT(フルオレセインという色素で測る、涙の膜が崩れるまでの時間)が5秒以下で、かつ自覚症状があることとされています。

そして大事なのは、定義の最初にある「様々な要因により」という部分です。
日本眼科学会は、ドライアイの危険因子として次のようなものを挙げています。

  • 加齢、女性であること
  • 長時間画面を見る作業
  • 低湿度・エアコンの効いた部屋・送風
  • コンタクトレンズの装用
  • 喫煙
  • 涙の分泌を減らす飲み薬
  • 目薬(防腐剤など)
  • マイボーム腺の病気
  • 結膜弛緩(加齢でできる白目のしわ)
  • シェーグレン症候群や関節リウマチなどの膠原病

マイボーム腺は、このリストの一項目です。
「ドライアイの正体はマイボーム腺」と言い切れないのは、このためです。

明るい窓辺のデスクで、観葉植物とノートパソコンに囲まれて書き物をする女性。長時間の画面作業はドライアイの危険因子の一つに挙げられている

Photo: Mikhail Nilov / Pexels

「いくらさしても」が、かえって負担になることも

ここは、私自身がいちばんドキッとしたところでした。

日本眼科医会は、薬局で買える人工涙液について、水分補給として有効だとしたうえで、こう注意しています。
「防腐剤が含まれているものもあり、たくさん使うことでかえって障害を起こす場合もあります」。

ドライアイ診療ガイドライン(2019)も、塩化ベンザルコニウム(BAK)という防腐剤を含まない点眼を治療の選択肢として提案しています(弱い推奨、エビデンスの強さC)。
ドライアイの人は点眼回数が多くなりやすく、涙が少ないと防腐剤が洗い流されにくい——というのが理由です。

誤解のないように言っておくと、「目薬が悪い」という話ではありません。
同じガイドラインでは、人工涙液の点眼は自覚症状を改善する治療の選択肢として提案されています。

問題になるのは「防腐剤入りの目薬を、回数を増やし続けること」のほうです。

  • 市販の目薬は添付文書の用法・用量を守る
  • 回数がどんどん増えているなら、防腐剤無添加のものを検討するか、回数を増やし続けずに眼科へ

開封した目薬の保管や使用期限については、薬の開封後の使用期限をまとめた記事でも詳しく整理しています。

マイボーム腺機能不全(MGD)とは — まぶたの「油の出口」の不調

では、話題のマイボーム腺とは何なのか。

マイボーム腺は、まぶたの縁にある脂の腺です。
ここから出る脂(meibum=マイバム)が、涙の表面に薄い油の膜をつくっています。

この腺の働きが落ちた状態が、マイボーム腺機能不全(MGD)です。
ドライアイ診療ガイドラインでは、涙が蒸発しやすくなるタイプ(蒸発亢進型)のドライアイの原因として、MGD が挙げられています。

詰まっているのは「老廃物」ではなく角化物と固まった脂

よく「老廃物で詰まる」と説明されるのですが、ガイドラインの説明はもう少し具体的です。

MGD 診療ガイドラインによると、主な病態は導管の上皮が厚く硬くなる「過角化」と、腺の萎縮。
出口に角化物がたまって、脂が出てこなくなるのが「開口部閉塞」です。
一般向けの資料(LIME研究会)では「固まってしまった古い脂や角化物(垢のようなもの)」と表現されています。

もう一つ知っておきたいのは、MGD には腺そのものがやせてしまう萎縮性のタイプもあるということ。
「全部が詰まり」ではないんです。

脂の性質についても触れておきます。
マイボーム腺の脂は、いろいろな脂質の混ざりものなので、融点が28〜32℃と幅があるとされています。
MGD では脂の組成が変わって、粘り気が増していきます。

温めるケアが勧められるのは、この「粘り気の増した脂をゆるめる」ためです。

まぶたの縁の断面を正常・閉塞・萎縮の3パネルで比べた模式図。正常は脂が出て涙の表面に油層ができ、閉塞は出口に角化物がたまって油層がとぎれ、萎縮は腺そのものが短く細くなっている。脂の融点は28〜32℃と幅があると注記

「ドライアイ=MGD」ではない — 日本の住民研究から

ここが、冒頭の説明で私がいちばん引っかかった部分でした。

長崎県平戸市の度島(たくしま)で、6〜96歳の住民356人を調べた研究(Arita 2019)があります。
結果は、MGD が32.9%、ドライアイが33.4%、両方ある人が12.9%

研究者の結論は「症状は似ているが、病態は別」というものでした。
MGD があってもドライアイの基準に当てはまらない人もいれば、その逆もいるということです。

一方で、MGD がドライアイの大きな背景になっているのも事実です。
欧米の眼科クリニック10施設の研究(Lemp 2012)では、ドライアイ患者224人のうち、タイプを分類できた159人の86%に MGD の徴候がありました。

ただ、この「86%」は分類できた159人が分母で、残りの65人は含まれていません。
しかも欧米のクリニック受診者のデータで、日本の一般の人にそのまま当てはまる数字ではないんです。

涙の量そのものが減るタイプもあります。
ガイドラインでは、加齢やシェーグレン症候群、抗コリン作用のある飲み薬などによる涙液分泌の低下が挙げられています。

だからこそ、正確にはこう言うのがいいと思います。

MGD は、目薬で良くならないドライアイの「主要な原因の一つ」。ただし、それだけではない。

年代別に見る MGD の多さ

同じ度島の住民研究では、年代別の MGD の割合も報告されています(MGD 診療ガイドラインに掲載)。

年代 MGD の割合
19歳以下 0%
20代 11.8%
30代 5.6%
40代 21.6%
50代 32.8%
60代 41.9%
70代 48.4%
80代 63.9%

※長崎県平戸市度島の住民(6〜96歳)を対象とした1つの研究の結果です。

年齢とともに増える傾向ははっきりしています。
ただし、ガイドライン本文では国内全体の推定を「50歳以上で10〜30%程度、正確な値は未だ不明」としていて、調査や診断基準によって数字には幅があります。

症状は人それぞれ。症状のない MGD も多い

「脂が固まると涙が蒸発して、ひどいゴロゴロとしみる感じが同時に来る」——そんな説明もよく見かけます。

でも実際の症状は、もっとばらばらです。
MGD 診療ガイドラインが挙げる症状は、次のとおり。

  • 目の不快感、異物感(ゴロゴロ)、乾燥感
  • 圧迫感、痛み、焼けるような感じ(灼熱感)
  • 涙が出る、目が疲れる、かすむ
  • かゆみ、目やに、まぶしさ

しかも、MGD とほかの目の病気を見分けられる特徴的な症状は特定されていないとされています。

意外だったのは、症状のない MGD のほうが多いという報告でした。
国内の研究では、自覚症状のある MGD は11〜18%、自覚症状のない MGD は30〜63%(調査対象や基準によって幅あり)。

「蒸発」についても、少し補足が必要です。
油の膜が涙の蒸発を防ぐ、というのはよく知られた説明なのですが、ヒトの涙の層を模した実験モデルでは、油の層による蒸発の抑制は6〜8%だったとされています。
ガイドラインは、油の膜の主な働きが蒸発を防ぐことかどうかは「未だ議論の余地がある」としています。
一方で、ヒトの目で直接測った研究では、MGD の人のほうが蒸発量が多いという報告が多いのも確かです。

なので私は、「涙の膜が崩れやすくなる」と理解しておくのが正確だと考えています。

LIME研究会の一般向けリーフレットには、こんなチェック項目があります。

  • 朝、目が開けにくい
  • 朝、症状がひどく出やすい
  • まぶたが重い
  • 目ヤニがたまりやすい

同資料では、1つでも当てはまれば眼科に相談するよう案内されています。

温罨法はガイドラインで「強く推奨」されているケア

では、家庭で何ができるのか。

中心になるのが温罨法、つまりまぶたを温めるケアです。

日本の MGD 診療ガイドライン(2023)は、温罨法について「マイボーム腺機能不全の自覚症状、meibum の質を改善する」とし、治療として行うことを強く推奨しています。
エビデンスの強さは A(強)、推奨の投票は委員12人中12人が「強く推奨」でした。

ガイドラインがまとめた研究の中身を見ると、こうなっています。

  • 自覚症状を評価した33研究中32研究で改善
  • 脂の質(meibum grade)を評価した20研究中19研究で改善
  • 涙の膜の安定性(BUT)を評価した33研究中25研究で改善
  • 有害事象に触れた10研究中1研究で有害事象あり(一時的で回復するもの)

ただし、ガイドライン自身が「30例前後の比較的小規模の研究が多い」と限界も書いています。
ここは正直に添えておきたいところです。

日本の研究例もあります。
使い捨ての温罨法具を1日1回5分、2週間使った研究(Mori 2003)では、MGD 患者17人34眼で、マイボーム腺の閉塞が76.5%(26眼)から41.2%(14眼)に減りました。

一つ付け加えると、温罨法で改善が示されているのは、主に自覚症状・脂の質・涙の膜の安定性です。
「涙の量が増える」ことが示されたわけではありません。

蒸しタオルとアイマスク型、どちらがいい?

ここは資料によって意見が分かれるところでした。

MGD 診療ガイドラインは「タオルを用いた温罨法については、上述のデバイスと比較して効果が低いと報告されており、より高い治療効果を求めるには、タオルよりも温罨法デバイスを奨めるべきと思われる」としています。

LIME研究会(監修 有田玲子医師)も「『まぶたが濡れない温め方』が最も効果的です」としたうえで、こう書いています。
「蒸しタオルは非常に熱くなり、かつ、すぐに冷たくなってしまうので逆効果になることがあります」。

実際、米国の研究(Blackie 2008)では、温湿布を2分ごとに温め直すと4分以上でまぶたの裏側が40℃以上に達した一方、温め直さなかったグループでは、まぶた裏側の温度は最高でも38.8℃(4分後)にとどまりました。

ただ、反対の結果もあります。
米国の小規模な研究(Murakami 2015、対象5人)では、8種類の温め方のうち、手間がいちばんかかる「濡れタオルを束ねる方法」だけが、まぶたの3か所すべてを40℃以上にできたそうです。

私なりにまとめると、こうです。

蒸しタオルでも温まるが、冷めやすいので温め直しが必要。温度を保ちやすいアイマスク型の温罨法具が勧められている。

特定の商品がいい、という話ではありません。
「一定の温かさを保てるかどうか」が分かれ目なんですね。

蒸しタオルとアイマスク型の温罨法具を温まり方・注意点・ガイドラインの記述で比べた表。共通の目安は熱すぎない心地よい温かさで5〜10分程度、時間・温度は標準化されていないと示している

自宅でのやり方 — 温める・やさしくマッサージ・清潔に

家庭でできることは、この3つまでです。

  1. まぶたを温める
  2. 指のはらで、やさしくマッサージする
  3. まつげの根元(まぶたの縁)を清潔にする

LIME研究会は、この順番で行うよう案内しています。
温めて脂をゆるめてから、やさしく流れを促すイメージです。

温度・時間・回数の目安

ここは「これが正解」という数字が決まっていません。
国際的な MGD ワークショップの報告でも、温罨法は「よく勧められるが、標準化されていない治療」とされています。

資料ごとの目安を並べると、こうなります。

項目 目安 出典
温度 脂をゆるめるには36℃以上、まぶたを38℃前後でじっくり LIME研究会
温度(別の資料) 40℃程度の蒸しタオル 茨城県メディカルセンター
時間 5分 LIME研究会・津田眼科医院
時間(別の資料) 1回10分 茨城県メディカルセンター
回数 1日5分、朝晩の2回 LIME研究会
順番 温める→指のはらでマッサージ→清拭 LIME研究会

まとめると、熱すぎない心地よい温かさ(目安38〜40℃前後)で、5〜10分程度
「10分でなければ意味がない」わけでも、「熱いほど効く」わけでもありません。

効果の出方も、研究によって評価の時期が1日後から4週間後までとさまざまです。
MGD は慢性で、良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多い、とも言われています。
一度で決着をつけるものではなく、歯磨きのように毎日続けるケアだと考えたほうがいいと思います。

マッサージは「指のはらで、やさしく」

温めたあとは、LIME研究会の案内どおり、指のはらでまつげの根元のまわりをやさしくマッサージします。

ここで強調しておきたいのは、「やさしく」という部分です。
まぶたを強く押さえつけると、角膜(黒目)が一時的にゆがんで見えにくくなることがある、と国際的なワークショップの報告にも書かれています。
まぶたをこすった直後に角膜の形が変わり、5分ほどで戻ったという研究もあります。

押す・つまむ・絞り出す、はしません。
流れを促す程度の、軽いタッチで十分です。

家でできるまぶたケアの3ステップ図解。温める(強く推奨・エビデンスA)、指のはらでやさしく、まぶたの縁を清潔に(弱く推奨・エビデンスC)の順に並べ、力を入れない・つままない・絞り出す処置は眼科に任せる・しみたら中止という注意を添えている

まつげの根元の清拭 — 専用の洗浄剤でなくてもいい

もう一つのケアが、眼瞼清拭(がんけんせいしき)、まぶたの縁の汚れを落とすことです。

ただ、温罨法ほど根拠は強くありません。
MGD 診療ガイドラインでは「行うことを弱く推奨」、エビデンスの強さは C(弱)
「眼瞼清拭自体の有効性を検証した研究は少ない」とされています。

方法としては、水で湿らせた綿球でも、市販のクレンジング剤でも、改善する「可能性」があるとされています。
つまり、「専用の洗浄剤でなければいけない」という根拠はないんです。

清潔にたたまれた白いタオルが2枚重ねられたクローズアップ。まぶたの縁を清潔に保つイメージ

Photo: Thomas Cotton / Pexels

逆に、クレンジング剤には注意点もあります。
1件のランダム化比較試験では、眼刺激感が、ティーツリーオイルを含むクレンジング剤で40例中21例(52.5%)、従来のクレンジング剤で40例中12例(30%)に出ていました。
重いものではなかったとされていますが、しみる・赤くなるときは中止して眼科に相談してください。

綿棒についても一言。
綿棒を使った清拭の安全性を直接調べた資料は、今回見つけられませんでした。
もし使うなら、目の表面(黒目・白目)には触れず、まつげの生え際の皮膚側をなでる程度にとどめるのが無難だと思います。
LIME研究会の案内も、綿棒ではなく指のはらでのマッサージです。

なお、マイボーム腺がすでに萎縮している人では、清拭で改善が見られなかったという臨床研究もあります(萎縮なしの22例では改善、萎縮ありの6例では改善せず)。

やけどと事故を防ぐために

温めるケアで気をつけたいのが、やけどです。

  • 電子レンジで温めたタオルは、熱くなりすぎることがあります(茨城県メディカルセンター)。まぶたに乗せる前に、熱すぎないか必ず確かめてください
  • カイロをまぶたに当てるのは避けましょう(同)
  • 市販の温罨法具は、取扱説明書の加熱方法・時間を守る。消費者庁の事故情報データバンクには、ホットアイマスクを電子レンジで加熱して焦げた事例が登録されています
  • 温めている間も、まぶたを強く押さえつけない

「熱いほうが効きそう」という感覚は、ここでは当てになりません。
心地よいと感じる温かさで十分です。

こんなときは温めない

温めることで、かえって悪化する場合もあります。

  • 目にかゆみ・充血・腫れ・痛みがあるとき(津田眼科医院)
  • 花粉症などのアレルギー性結膜炎があり、温めると赤み・かゆみが出るとき(LIME研究会)
  • まぶたにしこりや赤い腫れがあるとき(ものもらい=麦粒腫・霰粒腫の可能性)
  • コンタクトレンズ装用中に、目の痛み・充血・目やにがあるとき(角膜の感染症の可能性)
  • 目の手術を受けて間もない人、治療中の目の病気がある人(主治医の指示を優先してください)

ものもらいについては、日本眼科学会が「高齢者では霰粒腫と思われた病変の中に脂腺癌などの悪性腫瘍が含まれていることもあります」と注意しています。
しこりを自分で温めて押し出そうとせず、なかなか治らないときは眼科へ行ってください。

また、この記事のケアは大人を想定したものです。
お子さんの目の症状は、自己判断せず小児科や眼科に相談してください。

「脂を押し出す」のは眼科で行う処置です

冒頭の「脂を押し出せば目がうるおう」という説明に戻ります。

マイボーム腺から固まった脂を押し出す処置(meibum の圧出)は、実際にあります。
ただしそれは、医療機関で、点眼麻酔をしてから、専用の鑷子(ピンセット状の器具)などを使って行う処置です。

MGD 診療ガイドラインでの評価は、「行うことを弱く推奨」、エビデンスの強さは C(弱)
自覚症状は改善するものの、目の所見そのものの改善は示されておらず、圧出の痛みもあるとされています。
LIME研究会も「古い脂が固ければ固いほど痛みがある」と書いています。

つまり、眼科で慎重に行っても、効果は限定的で痛みも伴う処置なんです。

それを家庭で、綿棒やピンセット、爪で行うのは話が違います。
眼科専門医は、無理に取ろうとして強く圧迫したり、つまんだりすると、炎症を起こしたり、周囲のマイボーム腺やまつげの毛根を傷めたりするリスクがあると指摘しています。

家庭では「温めて、やさしくマッサージ」まで。押し出すのは眼科に任せる。

これが、私がいちばん伝えたかったことです。

眼科ではどんなことをしてもらえるのか

受診すると、まず細隙灯顕微鏡でまぶたの縁や脂の状態を観察し、涙の膜の安定性(BUT)や、マイボーム腺の形を写す検査(マイボグラフィ)などで状態を調べます。
MGD かどうかは、こうした眼科の検査でなければ確かめられません。

そのうえで、状態に応じて次のような治療が検討されます。

  • ドライアイの点眼(ジクアホソル、レバミピド、ヒアルロン酸など)
  • 炎症や細菌への対応(抗菌薬の点眼・内服、ステロイド点眼など)
  • 涙点プラグ(涙の出口に栓をして涙をためる)
  • 医療機関での脂の圧出

IPL(光を当てる治療)や、まぶたを温めながら圧をかける機器(thermal pulsation)といった治療もありますが、いずれも保険適用外の自費治療として、一部の医療機関で行われているものです。
ガイドラインでの推奨は「弱い推奨」。
Cochrane のレビュー(2024)では、こうした機器と基本的な温湿布を比べた試験で、症状の結果は一致せず、脂の出方や涙の膜の安定性にも差は見られませんでした(エビデンスの確実性は低い〜非常に低い)。

「最新の機器なら一発で解決」というわけではない、ということですね。

白衣を着た眼科の術者が、度数の目盛りがついた検眼枠(トライアルフレーム)を両手で持っている手元のクローズアップ

Photo: Ksenia Chernaya / Pexels

ドライアイ・マイボーム腺ケアで眼科を受診する目安

最後に、どんなときに受診すべきかを3段階で整理します。

すぐに受診(救急要請も検討)

  • 急に見えにくくなった+目の強い痛み+頭痛・吐き気・嘔吐 — 急性緑内障発作の可能性があります。日本眼科学会は「眼圧が正常値の倍以上に急に上昇し,眼痛,視力低下,嘔気,嘔吐などが生じます.適切な加療をしても著しい視機能障害を来す場合があります」としています。温めて様子を見る対象ではありません。症状が強く移動が難しければ 119
  • 温めたあと・ケアのあとに急に見えにくくなって戻らない、強い痛みが続く
  • 洗浄剤などが目に入って、強い痛みや充血が引かない(大量の水で洗い流してから受診)
  • まぶたや目のまわりのやけど(水ぶくれ・強い痛み)

緑内障については、緑内障と白内障の違いをまとめた記事もあわせて読んでみてください。

当日〜数日内に眼科へ

  • コンタクトレンズ装用中の目の痛み・充血・目やに、レンズを外してメガネにしても見えにくい — 日本眼科医会は「こうした症状が急に起こったら危険信号です」としています。レンズを外して当日〜翌日に受診を
  • 強い目の痛み、大量の目やに、白目の強い充血(細菌性角膜炎などの可能性)
  • まぶしさが強い、かすみが続く
  • 片目だけの強い症状、まぶたの赤い腫れ・痛み
  • 目の乾き+口の渇き(唾液が出にくい)、関節痛などを伴う
  • 温罨法や清拭で、しみる・赤くなる・かゆくなる
  • まぶたのしこりが治らない(特に高齢の方)
  • 目薬の回数がどんどん増えている、市販薬で良くならない

目と口の両方が乾く場合は、シェーグレン症候群(指定難病53)の可能性もあります。
難病情報センターによると、患者数は約7万人(未診断を含めると10万〜30万人と推計)、男女比は1対17で女性に多く、50歳前後がピークとされています。
この場合は、ホームケアより先に受診してください。

ホームケアを続けながら様子を見る

  • 軽い乾き・ゴロゴロ感・疲れ目で、痛み・充血・視力の低下がない
  • 朝に目が開けにくい、まぶたが重い、目やにが少したまる程度

この段階なら、温罨法とやさしいマッサージ・清拭に加えて、画面作業の合間の休憩、加湿、コンタクトレンズの装用時間の見直しなどを続けてみてください。
ただし、上のチェック項目に1つでも当てはまるなら、一度眼科で相談しておくのが安心です。
続けても良くならないときは、自己判断でケアを続けず眼科へ行きましょう。

ドライアイ・まぶたのケアで受診する目安を3段階に分けた図解。すぐ受診(救急要請も検討)、当日〜数日内に眼科、ホームケアを続けながら様子を見る、の順に具体的な症状を並べている

まとめ — 目薬を増やす前に、まぶたを温めてみる

今回調べてみて、私の中で整理できたことは次のとおりです。

  • 目薬で良くならないドライアイの背景には、マイボーム腺機能不全(MGD)が隠れていることが多い。ただし原因はそれだけではない
  • 防腐剤入りの目薬は、回数を増やし続けるとかえって負担になることがある
  • 家庭でできるのは、温める(熱すぎない温かさで5〜10分程度)→ 指のはらでやさしくマッサージ → まぶたの縁を清潔にまで
  • 蒸しタオルは冷めやすいので温め直すか、温度を保ちやすい温罨法具を使う
  • 脂を押し出すのは眼科の処置。自分で押したり、つまんだりしない
  • 痛み・充血・見えにくさ・目と口の乾きがあれば、ケアより先に受診

白いレンガの壁の窓辺で、マグカップを両手で持って外を見ている女性

Photo: Vitaly Gariev / Pexels

私自身、目薬の回数を増やすことばかり考えていたのですが、まぶたを温める時間をつくってからは、「足りないものを足す」より「出口を整える」という発想に切り替わりました。
もちろん、これで全部が解決するとは限りません。
MGD かどうかは、眼科で調べてもらわないと分からないですから。

同じように「目薬をさしてもゴロゴロする」と感じている方は、よければこの記事を保存して、次に眼科へ行くときの確認リストとして使ってみてください。

マイボーム腺のケアは、一度で終わるものではありません。
毎日の数分を、まぶたにそっと返していく。
焦らず続けることが、いちばんの近道なのだと思います。


本記事について
本記事はドライアイ・マイボーム腺機能不全のセルフケアに関する一般的な健康情報であり、医師による診断・治療に代わるものではありません。目の乾きやゴロゴロ感の原因は、マイボーム腺機能不全のほかに、涙の量が減るタイプのドライアイ、シェーグレン症候群、アレルギー性結膜炎、角膜の感染症、薬の影響などさまざまです。症状が続く・強い場合は自己判断でケアを続けず、眼科を受診してください。本記事は2026年9月時点で公開されている学会ガイドライン等に基づいています。

参考資料

  • マイボーム腺機能不全診療ガイドライン作成委員会「マイボーム腺機能不全診療ガイドライン」日本眼科学会雑誌 127巻2号(2023) — nichigan.or.jp
  • ドライアイ研究会診療ガイドライン作成委員会「ドライアイ診療ガイドライン」日本眼科学会雑誌 123巻5号(2019) — dryeye.ne.jp
  • ドライアイ研究会「ドライアイの定義と診断基準(2016)」 — dryeye.ne.jp
  • 日本眼科学会「ドライアイ」「角膜感染症」「緑内障」「霰粒腫」 — nichigan.or.jp
  • 日本眼科医会「ドライアイに悩む方へ―生活の注意と治療の目安―」 — gankaikai.or.jp
  • 日本眼科医会「コンタクトレンズと感染症」 — gankaikai.or.jp
  • LIME研究会(監修 有田玲子)「マイボーム腺についてご存知ですか?」 — minamiaoyama.or.jp
  • 難病情報センター「シェーグレン症候群(指定難病53)」 — nanbyou.or.jp
  • 消費者庁 事故情報データバンク「ホットアイマスク」 — jikojoho.caa.go.jp
  • Arita R, et al. MGD and Dry Eye Are Similar but Different Based on a Population-Based Study: The Hirado-Takushima Study in Japan. Am J Ophthalmol. 2019(PMID 30851269)
  • Lemp MA, et al. Distribution of aqueous-deficient and evaporative dry eye in a clinic-based patient cohort. Cornea. 2012(PMID 22378109)
  • Mori A, et al. Disposable eyelid-warming device for the treatment of MGD. Jpn J Ophthalmol. 2003(PMID 14636848)
  • Blackie CA, et al. Inner eyelid surface temperature as a function of warm compress methodology. Optom Vis Sci. 2008(PMID 18677234)/Murakami DK, et al. Optom Vis Sci. 2015(PMID 26164316)
  • Geerling G, et al. The international workshop on MGD: report of the subcommittee on management and treatment of MGD. IOVS. 2011(PMID 21450919)
  • Pucker AD, et al. LipiFlow for the treatment of dry eye disease. Cochrane Database Syst Rev. 2024(PMID 38314898)
  • 津田眼科医院「目を温める治療について(ホットパック)」2022年/茨城県メディカルセンター(2017年、やけどへの注意)

類似投稿