作り置きと食中毒|冷蔵庫のスープでも起きる理由と温め直しの限界
正直に申し上げます。
私は長いあいだ、カレーの鍋をコンロの上に置いたまま寝ていました。
「熱いまま冷蔵庫に入れると、庫内が温まってほかの食品が傷む」。そう聞いていたからです。
翌朝、火にかけてしっかり温め直せば大丈夫。そう信じていたんですね。
この記事の出発点は、こんな一文でした。
「冷蔵庫に入れておいたスープでも食中毒になります!加熱するとき必ず守るべき中心温度」
前半は、正しいです。
冷蔵保存した作り置きでも、食中毒は起こり得ます。
ところが、厚生労働省・農林水産省・食品安全委員会の資料をたどっていくと、後半の「中心温度さえ守れば取り戻せる」という読み方には、補正が必要でした。
そして私が毎晩やっていたことは、むしろ残り物の食中毒の典型的なパターンに近かったのです。
結論から申し上げます。
- 作り置き・残り物の食中毒で問題になりやすい菌のひとつがウエルシュ菌です。増えやすいのは冷蔵庫の中よりも、大鍋が室温でゆっくり冷めていくあいだです。
- ですから本当の対策は、浅い容器に小分けしてあら熱を素早く取り、速やかに冷蔵庫・冷凍庫へ入れることです。
- 温め直しの目安は、厚労省によれば75℃以上、味噌汁やスープ等は沸騰するまで。ただし加熱しても消えない毒素があるため、温め直しは保存の失敗を取り消す手段にはなりません。
Photo: Sarah Chai / Pexels
⚠ 本記事は家庭での食品の保存・再加熱に関する一般的な衛生情報であり、医師による診断・治療に代わるものではありません。温度や時間の目安は「めやす」であり、守れば必ず食中毒を防げることを保証するものではありません。腹痛・下痢・吐き気などの症状がある場合は、自己判断せず医療機関に相談してください。
結論:作り置きの食中毒対策は「温め直し」より「冷まし方」が本体です
まず、公的な基準をそのまま置いておきます。
厚労省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」の、残った食品についての部分です。
「残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。」
「時間が経ち過ぎたら、思い切って捨てましょう。」
「残った食品を温め直す時も十分に加熱しましょう。めやすは75℃以上です。味噌汁やスープ等は沸騰するまで加熱しましょう。」
「ちょっとでも怪しいと思ったら、食べずに捨てましょう。口に入れるのは、やめましょう。」
並び順を見てください。
最初に来るのは「早く冷えるように小分け」です。
温め直しは、そのあとです。
そしてそのまわりを、「思い切って捨てましょう」「食べずに捨てましょう」が囲んでいます。
温め直しは食べる前の最後の関門ではあっても、万能の解決策ではない。 この並びが、そう言っているように私には読めました。
もうひとつ、意外だったことがあります。
「温かいものを冷蔵庫に入れてはいけない」という文言は、この6つのポイントには出てこないんですね。
あとで詳しく書きますが、公的機関が一致して言っているのは、むしろ「早く冷まして、速やかにしまう」ほうでした。
冷蔵庫のスープでも食中毒になるのは本当です
残り物で問題になりやすいのはウエルシュ菌
カレー、シチュー、煮物、スープ、麺つゆ。
農林水産省は、こうした煮込み料理の食中毒の原因としてウエルシュ菌を挙げています。スープや麺つゆでも発生例があると明記されています。
この菌の性質を並べると、なぜ作り置きと相性が悪いのかが見えてきます。
- 増殖する温度は約12〜50℃。 最も増えやすいのは43〜45℃(食品安全委員会)、あるいは43〜47℃で、45℃では約10分ごとに分裂するとされます(国立健康危機管理研究機構=JIHS)。
- 食中毒を起こす株は、熱に強い「芽胞(がほう)」をつくります。 食品安全委員会によれば、この芽胞は100℃で1〜6時間の加熱でも生き残り得るとされています。
- ゆっくり冷ますと、55℃くらいから急速に増えます(食品安全委員会)。
食品安全委員会は、加熱調理した料理でこの菌が増えるしくみを、こう整理しています。
- 加熱でほかの菌が死に、芽胞だけが残る
- 加熱で芽胞の発芽がうながされる
- 加熱で食品の中の酸素が追い出され、この菌が好む状態になる
- 緩慢に冷やすと、55℃くらいから急速に増える
つまり、「一度しっかり火を通した大鍋の料理を、ゆっくり冷ます」という状況そのものが、この菌にとって好条件なのです。

東京都保健医療局は、実際の事例についてこう書いています。
「食べる日の前日に大量に加熱調理され、大きな器のまま室温で放冷されていた事例が多く見られます。」
そして、もうひとつ。
「『加熱済食品は安心』という考えがウエルシュ菌による食中毒の発生原因となっています。」
これを読んだとき、コンロの上の鍋を思い出しました。まさに私の考え方でした。
ただし、公平のために書いておきます。
ウエルシュ菌の食中毒は、飲食店・仕出し・旅館・給食といった大量調理の現場で多く、東京都は「家庭での発生は他に比べて少ない」としています。一方で農水省は「家庭においても発生の可能性があり」と書いています。
ですから「家庭のカレーは危ない」という話ではありません。
大鍋でまとめて作って翌日以降に持ち越すと、家庭の料理も大量調理と似た条件になり得る。 正確には、そういうことなんですね。
症状は、潜伏期間が6〜18時間(平均10時間)で、腹痛と下痢が中心です。発熱や嘔吐はほとんどなく、多くは1〜2日で回復します。ただし基礎疾患のある人、特に子どもや高齢者では、まれに重症化するとされています(食品安全委員会)。
冷蔵庫は菌を「殺す」場所ではなく「遅くする」場所です
厚労省の6つのポイントには、こうあります。
「細菌の多くは、10℃では増殖がゆっくりとなり、-15℃では増殖が停止しています。しかし、細菌が死ぬわけではありません。早めに使いきるようにしましょう。」
冷蔵庫に入れた時点で、菌がいなくなるわけではないのです。
さらに、低温でも増える菌があります。
- リステリアは、多くの食中毒菌が増殖できないような低温でも増殖します(厚労省)。冷蔵室は扉の開閉で温度が上がりやすく、より低いチルド室(0〜2℃)での保管が望ましいとされています。
- セレウス菌にも、7℃以下で増殖する株が存在します(食品安全委員会)。
- WHO(世界保健機関)も「危険な微生物の中には5℃未満でも増えるものがある」「冷蔵庫の中でも食品を長く保存しない」としています。
一方で、ここは誤解のないように書いておきます。
ウエルシュ菌が増える温度は約12〜50℃なので、10℃以下に保たれた冷蔵庫の中では、この菌の増殖温度域から外れます。
では、どこで増えるのか。
冷蔵庫に入るまでのあいだです。
次の実験が、それをよく示しています。
熱い鍋と冷蔵庫の実験が、本当に示していること
農林水産省が公開している、カレーの冷却速度の実験があります。条件ごと正確に書きます。
- 約80℃に加熱したカレーを、鍋(直径24cm・カレーの深さ約20cm)と、浅いプラスチック容器(カレーの深さ2.5cm)に分ける
- 両方とも室温23.9℃で1時間放冷してから、冷蔵庫(入れる前の庫内温度4.2℃)で2時間冷やす
結果はこうでした。
- 1時間の放冷で、浅い容器は40℃以下まで下がったのに、鍋は62℃までしか下がらなかった(冷える速さは容器が約2.6倍)
- 鍋と容器を冷蔵庫に入れると、庫内温度が11℃まで上がった
- 鍋は冷蔵庫に入れて2時間たっても38℃
- 20℃に下がるまでの時間は、容器が調理後約120分、鍋は約242分(約4時間)(鍋は直線的に下がると仮定した推計)
農水省の結論は、「鍋を1時間放冷後に冷蔵庫に入れることは不適切であると考えられる」というものでした。
なお農水省自身が、これは一例であり、必ずこの通りに温度が変化するわけではないと注記しています。

ここで、ひとつ落とし穴があります。
この実験から「だから熱いものは冷蔵庫に入れず、室温で完全に冷めるまで置いておこう」と考えるのは、逆方向の結論です。
室温でゆっくり冷ますことこそ、さきほどのウエルシュ菌が増える典型的な条件だからです。
実際、この実験の「鍋」も、室温に1時間置いたあとで62℃でした。
つまり問題は冷蔵庫に入れたことだけではなく、大きな鍋のままでは、室温でも冷蔵庫でも、なかなか冷えないことなんですね。
公的機関の指示は、どれも同じ方向を向いています。
- 農林水産省「作った煮込み料理を保存する際は、あら熱をできるだけ早く取り、速やかに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。底の浅い平たい容器や保存用の袋に小分けにすると、温度が早く下がりやすくなります。」
- 厚生労働省「残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。」
- 農林水産省 近畿農政局「やむをえず保存する場合は、小分けにして急速に冷却し、冷蔵又は冷凍しましょう。」
- 東京都「やむをえず保管するときは、小分けしてから急激に冷却すること。」
- JIHS「前日調理、室温放置は避けるべきである。」
- WHO「調理済みの食品を室温に2時間を超えて放置しない」「調理済みの食品や傷みやすい食品は速やかに冷蔵する(できれば5℃未満)」
「冷ましてから入れる」ではありません。
「小分けにして早く冷まし、すぐに入れる」です。
厚労省は、室温での放置について別の例も挙げています。「O157は室温でも15〜20分で2倍に増えます」。そして、温かく食べる料理は65℃以上、冷やして食べる料理は10℃以下がめやすだとしています。
参考までに、給食施設など向けの「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、加熱調理後に冷ます場合、30分以内に中心温度を20℃付近(又は60分以内に10℃付近)まで下げるよう工夫すること、とされています。
これは業務用の管理基準で、家庭で同じ精度を求めるものではありません。ただ、「とにかく早く、20〜50℃のあたりを短く通す」という考え方は、家庭でも同じです。

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冷蔵庫そのものの管理も、前提の一部です
小分けして冷蔵庫に入れても、庫内の温度が保たれていなければ前提が崩れます。
厚労省は、次のように書いています。
- 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に維持することがめやす。温度計を使って時々温度を計るとよい
- 冷蔵庫や冷凍庫の詰めすぎに注意。めやすは7割程度
家庭の冷蔵庫が、設定どおりの温度になっているとは限りません。
海外の調査ですが、欧州の家庭用冷蔵庫の温度を15の研究から解析した報告では、平均が南欧で約7.0℃、北欧で約6.1℃でした(Roccato 2017)。日本の家庭用冷蔵庫の実測データは、今回の調査では確認できていません。
設定を信じるより、一度測ってみる。私はそれを、この記事を書くまでやったことがありませんでした。

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残り物の再加熱「75℃」は、どの場面の数字か
冒頭の一文にあった「必ず守るべき中心温度」。
ここでよく見かけるのが、「75℃で1分以上」という数字です。
この数字自体は、実在します。ただし、どの場面の基準かが混ざりやすいのです。
| 出典 | 対象 | 原文の目安 |
|---|---|---|
| 厚労省 6つのポイント(ポイント4 調理) | 加熱調理する食品 | 中心部の温度が75℃で1分間以上 |
| 厚労省 6つのポイント(ポイント6 残った食品) | 残り物の温め直し | 75℃以上。味噌汁やスープ等は沸騰するまで |
| 大量調理施設衛生管理マニュアル(業務用) | 給食施設などの加熱調理食品 | 中心部が75℃で1分間以上(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品は85〜90℃で90秒間以上) |
| WHO Five Keys | 調理全般 | スープやシチューは沸騰させ、70℃に達したことを確かめる |
こうして並べると、分かることがあります。
「中心部75℃で1分間以上」は、調理するときの目安です。 家庭の残り物について厚労省が示しているのは、「75℃以上」「味噌汁やスープ等は沸騰するまで」という表現でした。
また、85〜90℃で90秒という数字は、業務用マニュアルの二枚貝など向けの基準で、家庭の残り物全般の基準ではありません。
そしてもうひとつ。
厚労省の残り物の項目には、家庭で中心温度を測るようにという指示は出てきません。 6つのポイントで温度計が出てくるのは、冷蔵庫の温度管理の話です。
実際の温め直し方
では、家庭では何をすればいいのか。公的な資料の言葉をそのまま並べます。
- スープ・味噌汁:沸騰するまで加熱する(厚労省)
- カレーなどとろみのある料理:「再加熱の際は、おたまで鍋底までかき混ぜ、中心までしっかりと加熱する」(農水省)
- 前日に作ったもの:「冷蔵保存したものでも使用時に十分な再加熱を行いましょう。再加熱する際は、よくかき混ぜながら全体を十分に加熱しましょう」(近畿農政局)
- 電子レンジ:電子レンジ用の容器・ふたを使い、調理時間に気を付け、熱の伝わりにくい物は時々かき混ぜる(厚労省)
とろみのある料理は、表面が煮立っていても、鍋底や中心が同じ温度とは限りません。かき混ぜるのは、そのためなんですね。

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温め直しで取り戻せないもの — 加熱に強い毒素と芽胞
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
よく見かける言い方に、「しっかり沸騰させれば、食中毒の毒素も完全に死滅する」というものがあります。
これは、成り立ちません。
まず言葉の問題があります。毒素は生き物ではないので、「死滅」はしません。 問題は、加熱で毒としての働きを失う(不活化する)かどうかです。
そして、加熱では不活化しにくい毒素が、実際にあります。
黄色ブドウ球菌の毒素
東京都保健医療局は、「菌自体は熱に弱いが、この毒素は100℃20分の加熱でも分解されません」と書いています。食品安全委員会も「通常の加熱調理では活性を失いません」としています。
原因食品として挙げられているのは、にぎりめし、寿司、肉・卵・乳などの調理加工品、菓子類などです。
症状は、食べてから0.5〜6時間(平均3時間)ほどで出る吐き気・嘔吐、下痢などです。
セレウス菌の嘔吐毒
食品安全委員会によれば、セレウス菌がつくる嘔吐毒は「126℃で90分の加熱処理でも失活しません」。
原因食品はチャーハンやピラフなどの焼飯類、焼きそばやスパゲッティなどの麺類が多いとされています。
この毒素の耐熱性を調べた研究(Rajkovic 2008)は、食品産業で使われるどの加熱処理でも不活化できなかったとし、食品の安全は予防と低温管理に頼らざるを得ないと結論づけています。
作り置きのご飯や焼きそばも、室温に置かないことが本体、ということですね。
ウエルシュ菌は「温め直しが効く部分」と「効かない部分」がある
ここは混同しやすいので、正確に書きます。
ウエルシュ菌の毒素(エンテロトキシン)は熱に弱く、60℃10分で不活化されます(食品安全委員会)。
ですから、温め直しには意味があります。食品安全委員会も、予防の有効な手段として「温め直しなどの再加熱による発芽細菌の殺菌及びエンテロトキシンの不活化」を挙げています。
ただし、芽胞は残ります。 さきほどの通り、100℃で1〜6時間の加熱でも生き残り得るものです。
さらにJIHSは、「再加熱により芽胞の発芽が促進され」、食品の中の酸素も追い出されて、この菌が育ちやすい条件になると書いています。
農水省は、原因になりやすい食品をこう表現しています。
「加熱調理した後、室温で冷まして放置し、再び加熱した食品」
温め直したから安心、ともう一度室温に置けば、また増えるということです。
温め直したら、その場で食べきる。それが、この菌についての答えでした。

見た目やにおいでは判断できません
もうひとつ、よくある判断基準にも触れておきます。「においが変わっていなければ大丈夫」というものです。
見た目やにおいで安全を判定できるとする公的な根拠は、今回たどった資料には見当たりませんでした。加熱しても残る毒素がある以上、温め直してにおいが気にならなくなっても、それは安全の証明になりません。
厚労省の基準は、とてもシンプルです。
「ちょっとでも怪しいと思ったら、食べずに捨てましょう。口に入れるのは、やめましょう。」
数字で見る、残り物と食中毒(令和7年)
最後に、統計を確認しておきます。厚生労働省の食中毒統計、令和7年(2025年)の確定値です。
| 区分 | 事件数 | 患者数 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 食中毒の総数 | 1,172件 | 24,727人 | 死者2人 |
| ウエルシュ菌 | 33件 | 1,260人 | 全事件の約2.8%、全患者の約5.1%。1件あたり平均約38人 |
| ぶどう球菌 | 15件 | 305人 | — |
| セレウス菌 | 5件 | 27人 | — |
| 原因施設が家庭 | 85件 | 132人 | 全1,172件の約7.3%(病因物質ごとの内訳は未確認) |
ウエルシュ菌は、事件数は多くないのに、1件あたりの患者数が大きいのが特徴です。大量に作った料理が原因になりやすいことと、つじつまが合います。
なお令和6年(2024年)は、ウエルシュ菌が43件・1,889人でした。
夏だけの話ではありません
この記事のテーマには「夏の食中毒予防」と入れていますが、ひとつ補足があります。
食品安全委員会は、ウエルシュ菌の食中毒は夏季(7〜9月)に多発する一方で、春季(3〜4月)にも比較的多く、冬季(12〜1月)にも発生がみられるとしています。
令和7年の統計では、ウエルシュ菌33件のうち7〜9月は7件、10〜12月は14件でした。
夏は気温が高いぶん、鍋が冷めにくく、室温も高い。注意する理由は十分にあります。
けれど、冬の作り置きなら大丈夫、ということでもないのです。
家庭の食中毒は、数字に出にくい
家庭が原因の85件は、届け出られて判明したものです。厚労省は、こう書いています。
「家庭での発生では症状が軽かったり、発症する人が1人や2人のことが多いことから風邪や寝冷えなどと思われがちで、食中毒とは気づかれず重症になったり、死亡する例もあります。」
「ちょっとお腹をこわしただけ」の中に、作り置きが原因のものが紛れているかもしれない。そう考えると、この85件は見え方が変わってきます。
今日からできる、作り置きの冷蔵保存と温め直しの手順
長くなったので、実際の行動だけ取り出します。
- 食べきれる量を作る。 「カレーや煮物などは、食べきれる量を作り、早く食べましょう」(近畿農政局)。できるだけその日のうちに食べきるのが基本です(農水省)。
- 残ったら、鍋のまま置かない。 底の浅い平たい容器や保存用の袋に小分けにして、あら熱を早く取ります。
- あら熱が取れたら、速やかに冷蔵庫・冷凍庫へ。 室温に長く置かない。WHOの目安は「室温に2時間を超えて置かない」です。
- 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下。 温度計で時々測り、詰めすぎは7割程度までに。
- 温め直しは75℃以上、スープ・味噌汁は沸騰するまで。 とろみのある料理は、おたまで鍋底からかき混ぜて中心まで。電子レンジは時々かき混ぜます。
- 温め直したら、その場で食べる。 もう一度室温に置いておかない。
- 時間が経ち過ぎたものは、思い切って捨てる。 冷蔵で何日までなら大丈夫、という日数の公的な目安は、今回の調査では日本の一次資料で確認できませんでした。ですからこの記事では日数を書きません。「長く置かない」「迷ったら捨てる」を基準にしてください。
- ちょっとでも怪しいと思ったら、食べずに捨てる。 においや見た目では判断しません。

受診の目安
食べたあとに体調を崩したときのために、3段階で整理しておきます。
【すぐに119番】
総務省消防庁の「救急車を上手に使いましょう」から、食中毒に関連し得る項目です。
おとな
- 突然の激しい腹痛、激しい腹痛が続く
- 血を吐く
- 便に血が混ざる、または真っ黒い便が出る
- 意識がない、または意識がおかしい(もうろうとしている)
- ぐったりしている
- 冷や汗を伴うような強い吐き気
- 顔色が明らかに悪い
- けいれんが止まらない
こども(15歳以下)
- 激しい下痢や嘔吐で水分が取れず、食欲がなく意識がはっきりしない
- 激しいおなかの痛みで苦しがる
- 嘔吐が止まらない
- 便に血がまじった
- 意識がない
判断に迷ったら救急安心センター(#7119)、子どもは子ども医療電話相談(#8000)に相談できます。
【当日〜数日のうちに医療機関へ】
- 腹痛・下痢・吐き気などの症状が出た(厚労省は、かかりつけの医師への相談をすすめています)
- 乳幼児・子ども、高齢者、基礎疾患のある人に症状が出た
- 妊娠中の人、65歳以上の人、免疫機能が低下している人が、冷蔵保存していた食品を食べたあとに体調を崩した(リステリアで重症化しやすいとされています。症状の判断は医師に相談してください)
- 同じ料理を食べた家族など、複数の人が同じころに症状を出した
- 下痢や嘔吐が続き、水分がとりにくくなってきた
受診するときは、いつ・何を食べたか、同じものを食べた人の様子を伝えると役に立ちます。
【経過観察】
- 症状がない → 残っている疑わしい料理は、食べずに捨てる
- 健康な大人で、軽い腹痛や下痢だけ、発熱や嘔吐がなく水分がとれている → ウエルシュ菌の食中毒は一般的に軽く1〜2日で回復するとされています(JIHS)。水分をとりながら様子を見ます
- ただし、症状が長引く・強くなる、上の「すぐに119番」の症状が一つでも出たら、ためらわず受診・119番を
- 子ども・高齢者・基礎疾患のある人・妊娠中の人は、「経過観察」に入れず医療機関へ
赤ちゃんの下痢で気をつけたい脱水と、水分のとらせ方については、赤ちゃんの下痢と脱水|水だけがダメな理由と経口補水液の飲ませ方にまとめています。
下痢止めなどの薬を自己判断で使う前にも、医師や薬剤師に相談してください。
調べ終えて、いちばん残ったのは「75℃」という数字ではありませんでした。
私は、温め直しを「リセットボタン」だと思っていたのです。
前の晩に何があっても、朝しっかり火を通せば、なかったことにできる。
けれど、加熱で消えない毒素があり、熱に耐える芽胞がありました。
そして、いちばん菌が増えやすかったのは、冷蔵庫の中ではなく、私がコンロの上に置いていた鍋の中でした。
ですから、いま私が変えたのは温め直し方ではありません。
食べ終わったあとの、夜のひと手間です。浅い容器を出して、小分けして、あら熱を取って、しまう。
温め直しは最後の関門です。けれど、本当の勝負はその前の晩に終わっているのですから。
参考資料:厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」、厚生労働省「食中毒統計資料」(令和7年・令和6年 食中毒発生状況)、厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成29年6月16日最終改正版)、厚生労働省「リステリアによる食中毒に注意してください」、農林水産省「煮込み料理を楽しむために〜ウェルシュ菌による食中毒にご注意を!!〜」、農林水産省「容器の違いによるカレーの冷却速度の違い」、農林水産省 近畿農政局「カレーの保存には注意が必要です!!」、食品安全委員会 ファクトシート「ウエルシュ菌食中毒」、食品安全委員会 ファクトシート「セレウス菌食中毒」、食品安全委員会 ファクトシート「ブドウ球菌食中毒」、東京都保健医療局「食品衛生の窓」ウエルシュ菌、東京都保健医療局「食品衛生の窓」黄色ブドウ球菌、国立健康危機管理研究機構(JIHS)「ウエルシュ菌感染症」、総務省消防庁「救急車を上手に使いましょう」、WHO「Five keys to safer food」、Rajkovic A, et al. Heat resistance of Bacillus cereus emetic toxin, cereulide. Lett Appl Microbiol. 2008、Roccato A, et al. Analysis of domestic refrigerator temperatures and home storage time distributions. Food Res Int. 2017。2026年9月時点の整理です。
※本記事は家庭での食品の保存・再加熱に関する一般的な衛生情報であり、医師による診断・治療に代わるものではありません。 本記事の情報は2026年9月時点の厚生労働省・農林水産省・食品安全委員会などの公開資料に基づきます。温度や時間の目安は「めやす」であり、これを守れば必ず食中毒を防げることを保証するものではありません。 業務用マニュアルの数値は給食施設等向けの管理基準で、家庭で同じ精度を求めるものではありません。ちょっとでも怪しいと思った食品は食べずに捨ててください。 腹痛・下痢・吐き気などの症状が出た場合は、自己判断せず医療機関に相談してください。乳幼児・子ども、高齢者、妊娠中の方、基礎疾患のある方、免疫機能が低下している方は、症状が軽く見えても早めに医師へご相談ください。本記事は特定の商品を推奨するものではありません。
