子宮頸がんワクチン(HPV)とは|対象・公費・9価・男性接種
正直に言えば、私自身も「ワクチンで防げるがん」という言葉を、最初はうまく飲み込めませんでした。
がんは、ある日突然やってくるもの。そんな漠然としたイメージがあったからです。
でも、子宮頸がんは少し事情が違うんです。
子宮頸がんは、ワクチンで予防できる数少ないがん です。その原因のほぼ全ては、HPV(ヒトパピローマウイルス)というありふれたウイルスの感染にあります。だからこそ、その感染を防ぐことが、予防の鍵になります。
この記事では、HPVワクチンの接種対象、公費(無料)で受けられる条件、9価ワクチンへの移行、そして男性の接種まで、日本の基準にそって落ち着いて整理していきます。

そもそも、なぜワクチンで防げるのでしょうか
子宮頸がんの原因のほぼ全ては、HPV(ヒトパピローマウイルス) の感染です。
HPVは主に性的接触で感染する、ごくありふれたウイルスです。感染しても多くは自然に体から排除されるのですが、その一部が持続的に感染すると、前がん病変を経て子宮頸がんへ進行することがあります。
このHPVには多くの型がありますが、注意が必要なのが 高リスク型 です。
特に 16型・18型 で、子宮頸がんの原因の 約60〜70% を占めるとされています。一方、6型・11型は、良性の尖圭コンジローマの主な原因(低リスク型)です。
「感染を防げば、その先のがんも防ぎやすくなる」。
これが、HPVワクチンの基本的な考え方なんです。
日本では、どのくらいの人がかかっているのでしょうか
数字も、正直に見ておきたいと思います。
日本では 1年間に約10,879人(約1.1万人) の女性が子宮頸がんを発症し、毎年約3,000人が亡くなっています。
しかも罹患・死亡はともに近年、漸増の傾向にあります。とりわけ問題視されているのが、50歳未満の若い世代での罹患の増加 です。
決して、遠い世代の話ではないんです。
ワクチンの種類 — 2価・4価・9価の違い
日本で使われてきたHPVワクチンには、大きく3種類あります。
| 種類 | 製品名 | 対象となるHPV型 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2価 | サーバリックス | 16, 18 | カバーする型は少なめ。局所の痛み・腫れは比較的少ないとされる |
| 4価 | ガーダシル | 16, 18, 6, 11 | 6・11型で尖圭コンジローマも予防。男性への適応あり |
| 9価 | シルガード9 | 16, 18, 6, 11, 31, 33, 45, 52, 58 | 高リスク型を幅広くカバー。子宮頸がん原因の約90%に対応 |
いま中心となっているのが 9価(シルガード9) です。
16・18型に加えて、31・33・45・52・58型という高リスク型を5種類追加でカバーし、これらに対して 90%以上の予防効果 があるとされています。結果として、子宮頸がんの原因ウイルスの 約90% をカバーします。
そして制度面でも、大きな変化があります。
2023年(令和5年)4月1日から、9価ワクチンが定期接種に追加 されました。さらに 令和8年度(2026年度)以降、公費で受けられるのは9価(シルガード9)のみ となる予定です。

公費(無料)で受けられるのは、誰でしょうか
ここが、いちばん実務的で大切なところです。
定期接種の対象
日本の定期接種の対象は、小学6年生〜高校1年生相当の女子 です(標準的には中学1年相当で接種します)。この年代であれば、公費助成で無料 で接種できます。
接種は原則として、性交渉が始まる前(HPVに感染する前)に完了するのが最も効果的 とされています。
キャッチアップ接種(救済措置)と、経過措置
積極的勧奨が差し控えられていた時期に、接種の機会を逃してしまった世代のための救済措置が「キャッチアップ接種」です。
- 対象: 1997年(平成9年)4月2日〜2009年(平成21年)4月1日生まれの女性
- 本来の期間: 2022年4月1日〜2025年3月31日
- 経過措置: この期間中(2025年3月31日まで)に 1回以上接種した人は、2026年3月31日まで公費(無料)で残りの回数を完了 できます
ただし注意が必要なのは、2025年3月31日までに1回も接種していない人は、無料接種の期間はすでに終了している という点です。
期限や条件は自治体の案内や厚生労働省の最新情報で変わりうるため、必ずお住まいの自治体の窓口で確認 してください。
接種のスケジュール — 何回、どのくらいの間隔で
接種の回数は、接種時の年齢とワクチンの種類によって 2回または3回 に分かれます。標準的なスケジュールでは、約6か月で接種が完了 します。
9価(シルガード9)の場合を目安として挙げると、次のとおりです。
- 15歳になるまでに1回目を接種した場合: 全2回(初回接種から6か月後に2回目)
- 15歳以上で開始した場合: 全3回
- 15歳未満で開始する2回接種では、1回目と2回目の間隔は5か月以上が目安
ただ、具体的な回数・間隔は年齢や製剤で異なります。必ず医療機関で確認 してください。
男性の接種にも、意味があるのでしょうか
「HPVワクチンは女性のもの」。そう思っていた方も多いかもしれません。私もその一人でした。
けれど、状況は変わってきています。
2020年12月25日、4価ワクチン(ガーダシル)の適応が追加 され、男性における尖圭コンジローマの適応、そして性別を問わず肛門がん(およびその前駆病変)の適応が加わりました。
臨床試験での予防効果も報告されています。16〜26歳の男性で、尖圭コンジローマの予防効果は 約90%、肛門がんの前段階である高度異形成の予防効果は 約75% とされています。
男性が接種する意義は、二つあります。
一つは、男性自身の肛門がん・尖圭コンジローマ・中咽頭がんなどの原因となるHPV感染を防ぐこと。
もう一つは、性交渉を通じたHPV感染から女性を守り、女性の子宮頸がん予防にもつながる ことです。いわば集団免疫的な効果ですね。
ただし正直にお伝えすると、男性への接種は多くの自治体で 任意接種(自費) が中心です。一部の自治体では独自の公費助成を行う動きもありますが、地域差が大きいのが実情です。こちらもお住まいの自治体での確認が必要になります。

副反応と、安全性を支える仕組み
不安の声が多いのは、やはり副反応の点だと思います。ここも均衡を保ってお伝えします。
よくある副反応 は、接種した部位の痛み・腫れ・赤み、発熱や倦怠感などです。
まれに起こる重い症状 としては、重いアレルギー症状(アナフィラキシー)、失神(血管迷走神経反射。接種後に立ち上がるときは注意が必要です)、まれに神経系の症状などが挙げられます。
そのうえで押さえておきたいのは、HPVワクチンは 安全性と有効性が認められ、日本を含む多くの国で子宮頸がんの1次予防として予防接種プログラムに導入されている、という事実です。
さらに日本では、接種後に痛みなどの多様な症状がみられた人が地域で相談・診療を受けられるよう、地域ブロック拠点病院を中心とした医療連携体制・相談体制・報告・救済制度 が設けられています。
効果が高い一方で副反応の心配もある——このバランスは、一人で抱え込まず、医師と相談 して判断していくものだと思います。
忘れてはいけない、もう一つの柱 — 検診
最後に、大切な補足を一つ。
ワクチンは、子宮頸がんの原因ウイルスの多くをカバーしますが、すべての型を防ぐわけではありません。
だからこそ、ワクチンと定期的な子宮頸がん検診を併用する ことが、予防の両輪になります。接種したから検診は不要、ということにはならないんです。
「ワクチンで防げるがんがある」。
この言葉の重みを、私はこの記事を書きながら改めて感じました。毎年約1.1万人が発症し、約3,000人が亡くなっている。その多くが、原因のはっきりしている、防ぎうるがんなのですから。
とはいえ、接種するかどうか、どの種類を、どのスケジュールで——それは数字だけで決められるものではありません。副反応への不安も、当然のものです。
本稿はあくまで一般的な健康情報であり、接種の判断や診療の代わりにはなりません。だからこそ、公費の対象や期限を含めて、自己判断せず、必ず医師・医療機関、そしてお住まいの自治体の窓口に相談 してください。
正しく知ったうえで選ぶこと。それが、自分と、大切な誰かを守る最初の一歩になるのですから。
参考資料(research.mdで確認した情報源より)
– 厚生労働省 HPVワクチン関連資料
– 政府広報オンライン「子宮頸がんの予防に有効なHPVワクチンとは?」
– 国立がん研究センター「HPV関連がんの予防」「ファクトシート2023」
– 日本産科婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」
– 東京都保健医療局「HPVワクチンの男性への接種について」、佐賀大学産科婦人科 解説資料ほか
[内部リンク: 関連記事 – 子宮頸がん検診の受け方と間隔]
