鉄欠乏性貧血(女性)|疲れの原因と鉄の正しい摂り方
鉄欠乏性貧血(女性)|「サプリを飲んでも疲れが取れない」の正体
正直に打ち明けますと、私はずっと「疲れやすいのは体質だから」と思い込んでいました。
十分寝たはずなのに朝から体が重い。駅の階段で少し息が切れる。時々、立ち上がったときに軽くめまいがする。
「年のせいかな」「働きすぎかな」。そう片づけていたのですが。
そのだるさ、もしかすると鉄欠乏性貧血、あるいはその手前の「隠れ貧血」かもしれません。この記事では、女性に鉄不足がなぜ多いのか、そして「サプリを飲んでも疲れが取れない」ときに何を見直せばいいのかを、学会や厚生労働省の基準にそって整理していきます。
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なお、この記事は一般的な情報の整理です。診断や治療の代わりにはなりませんので、気になる症状があるときは医療機関でご相談ください。
なぜ女性に鉄欠乏性貧血が多いのでしょうか
理由はシンプルで、毎月の月経で血液(鉄)を失うからです。
閉経前の女性は定期的に鉄を失うため、鉄が不足しやすい状態にあります。東京都の専門家コラムによると、20〜40代女性の約4人に1人が鉄欠乏性貧血、約2人に1人が「隠れ貧血」に該当するとされています。日本鉄バイオサイエンス学会も、閉経前女性の10〜20%が鉄欠乏性貧血を発症すると記しています。
鉄が足りないと、酸素を全身に運ぶヘモグロビンが減ります。すると体のすみずみへの酸素供給が落ちる。これが、あの「取れない疲れ」の正体なのですね。
月経以外にも、原因はいくつかあります。
- 過度なダイエットによる鉄の摂取不足
- 妊娠による必要量の増加
- 過多月経(子宮筋腫などが背景にあることも)
- 消化管出血 など
つまり、鉄不足は「食べていないから」だけでなく「失っているから」でも起こる、ということです。
「十分寝ても疲れる」— こんなサインはありませんか
鉄不足で酸素供給が悪くなると、次のような症状が出やすくなります(東京都「働く女性のウェルネス向上委員会」)。
- 疲れやすい・寝ても体が重い
- 階段や坂で息切れする
- 時々めまい・立ちくらみがある
- むくみ、冷え性
- イライラ、気分の落ち込み

ひとつ、はっきりさせておきたいことがあります。
これらはあくまで「疑うきっかけ」であって、診断ではありません。似た症状は他の病気でも起こりますから、当てはまるからといって自己判断で鉄を飲み始めるのは、少し気が早いのですね。
ヘモグロビンは正常なのに疲れる ——「隠れ貧血」とフェリチン
健康診断で「貧血なし」と言われたのに、だるさが続く。そういう方は少なくありません。
その正体が隠れ貧血です。これは「ヘモグロビン値は正常だけれど、体内の貯蔵鉄(フェリチン)が不足している」状態を指します。
ここで大事なのが、鉄が減っていく順番です。
貯蔵鉄が減る → 血清鉄が減る → 最後にヘモグロビン鉄が減って貧血になる
体内の鉄は約3〜4g。そのうち約70%が赤血球のヘモグロビン鉄で、約20〜30%が肝臓などに蓄えられた貯蔵鉄です。この貯蔵鉄(フェリチン)は、鉄欠乏のいちばん早い段階で減り始めます。
つまり「貧血」と診断される頃には、貯蔵タンクはとっくに空になっている。だからこそ、ヘモグロビンだけでなくフェリチンも一緒に測ることが、閉経前の女性にはすすめられるのです。
診断の目安となる数値
日本鉄バイオサイエンス学会の基準を、表にまとめてみます。

| 指標 | 基準 |
|---|---|
| 貧血の定義(ヘモグロビン) | 成人女性 12g/dL未満 |
| 血清フェリチン 正常域 | 約 25〜250ng/mL |
| 鉄欠乏性貧血 | 貧血あり+TIBC 360μg/dL以上+フェリチン 12ng/mL未満 |
| 潜在性鉄欠乏(隠れ貧血) | 貧血なし+フェリチン 12ng/mL未満 |
ただし、フェリチンは悪性腫瘍・肝障害・感染症・炎症があると、鉄の状態とは無関係に上昇することがあります。数値の読み方は、医師に委ねるのが安心です。
対策① 食事 ——「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」は吸収率が違います
鉄には2種類あって、体への入りやすさがまるで違います。
| 種類 | 多く含む食品 | 吸収率 |
|---|---|---|
| ヘム鉄 | 赤身肉・レバー・魚 | 15〜25% |
| 非ヘム鉄 | ほうれん草・小松菜・大豆・ひじき等 | 2〜5% |
ヘム鉄は非ヘム鉄の約5〜6倍も吸収されやすいのですね。植物性の食材だけで鉄を補おうとすると、思ったほど吸収されていない、ということが起こりえます。

食品100gあたりの鉄の量を、いくつか挙げてみます(健康長寿ネット)。
- ひじき 58.0mg(ただし1回に食べる量は少なめ)
- 豚レバー 13.0mg
- 鶏レバー 9.0mg
- あさり 3.8mg
- 小松菜 2.8mg
- ほうれんそう 2.0mg
数字だけ見るとひじきが圧倒的ですが、一度に食べる量は多くありません。「1食で現実的に食べられる量」で考えるのがコツです。
対策② 吸収を「高めるもの」と「妨げるもの」
同じ量を食べても、組み合わせ次第で吸収は変わります。
高めるもの
- ビタミンC:吸収されにくい非ヘム鉄を、体が吸収しやすい形に変えます。非ヘム鉄は胃酸とビタミンCと結びついて、小腸から吸収されやすくなります。
- 動物性たんぱく質:非ヘム鉄の吸収を後押しします。
妨げるもの
- タンニン(コーヒー・緑茶・紅茶):鉄と結びついて吸収を妨げます。
- カルシウム:鉄と吸収経路が競合します。乳製品やカルシウムサプリと鉄を同時に大量に、は避けたいところです。

対策③ 鉄剤・サプリの飲み方 ——「飲んでも疲れる」を防ぐために
「サプリはちゃんと飲んでいるのに、疲れが取れない」。
その背景には、いくつかの理由が考えられます。

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まず、飲むタイミングです。コーヒーやお茶と一緒に飲むと、タンニンが吸収を邪魔します。サプリや鉄剤の前後1時間ほどはタンニンを含む飲み物を避け、水か白湯で飲むのが望ましいとされています。ビタミンCと一緒に、という工夫も有効です。
次に、効果が出るまでの時間です。鉄剤の効果はすぐには表れません。貯蔵鉄まで戻すために、治療では半年程度続けることもあります。数週間で症状が軽くなる方もいますが、自己判断で中断しないことが大切です。
そして、ここが一番お伝えしたいところなのですが——自己流で鉄を増やし続けるのは危険です。
鉄は体に蓄積しやすい栄養素です。必要以上に摂ると胃腸の不調や鉄中毒のリスクが高まり、長期の過剰摂取では鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)から肝障害・糖尿病などにつながる恐れもあります。国民生活センターは2024年12月、海外製の鉄サプリの長期使用による鉄過剰症の事例を発表しています。
厚生労働省の「食事摂取基準(2025年版)」でも、耐容上限量の設定は見合わされたものの、「推奨量を大きく超える鉄の摂取は、貧血の治療などを目的とする場合を除き控えるべき」とされています。
鉄剤の主な副作用は、吐き気・便秘・下痢・便の黒色化などの消化器症状です。つらいときは我慢せず、医師や薬剤師に相談してください。
1日の鉄の推奨量(女性・厚労省2025年版)
| 対象 | 推奨量(mg/日) |
|---|---|
| 女性 30〜49歳(月経あり) | 10.5 |
| 女性 15〜17歳(月経あり) | 11.0 |
| 女性 18〜29歳(月経なし) | 6.0 |
「疑い」から「確定」へ ——受診の目安
最後に、道筋をひとつだけ整理させてください。
- 疲れ・息切れ・めまいなどが続く → 鉄不足を「疑う」
- 食事やサプリを工夫しても改善しない、症状が重い → 血液検査(ヘモグロビン+フェリチン)
- 経血が多い・塊が出る・貧血を伴う → 子宮筋腫などが背景のことがあり、婦人科へ
- 黒色便など消化管出血が疑われる → 内科・消化器へ
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「サプリを飲んでも常に疲れている」と感じるなら、量や期間が足りていないのか、飲み方が吸収を妨げているのか、あるいは鉄不足以外に原因があるのか——そのどれかを、一度の血液検査がはっきりさせてくれます。
だるさを体質のせいにして何年も過ごすより、まずは自分の「今の鉄」を知ることから。疲れの理由が分かるだけで、少し肩の力が抜けますから。
参考: 日本鉄バイオサイエンス学会/厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」/東京都「働く女性のウェルネス向上委員会」/健康長寿ネット(長寿科学振興財団)/国民生活センター(2024年12月)。本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療の代替ではありません。
